バイ マイ サイド
僕は、20才、
色々、試行錯誤しながら生きてきた。
あるところで、無一文、行くあてもなく、橋のしたで寝泊まりをしていた。
帰る家が無くなって、三日目だった。
昨日から、若い男性が近くで釣りをするようになった。
目は、野性的な青緑色で、背が高い。
こんな淀んだ川には、魚がいるとは思えなかった。
彼に、釣れるか聞いたがたいした答えはかえって来なかった。
しばらく、沈黙が続いた。
うちに来るかと言われた。
悪い人間ではなさそうなので、ついていくことにした。
そこは不思議な空間だった。
川の横の空き地に巨大な二階建てが作ってあった。
家の前には、柵があり、三頭の山羊と、二羽の鶏がいた。
空に巨大な白雲がゆっくりと流れて、
そこの空間だけが、平和で外界から遮断されており、
異様な雰囲気だった。
建物の屋根のオブジェに気がついた。
白い十字架だが、明らかに左腕が長く、アンバランスだった。
だが、その手作りの巨大な家には、妙にマッチしていた。雨がぽつりと降ってきた。
僕は、濡れまいと走り出した。
さっきまでの快晴がなくなり、空には、どす黒い雨雲が流れてきた。
玄関に着くと、ザーザーと勢いよく降りだし、僕はため息を着いた。
冷たい雨に心が重くなった。
なかに入って、
彼はコーヒーを入れてくれた。
彼は幼児期の話をし始めた。
小さな時は、ふつうに明るくふつうによく泣き、よく笑う赤ちゃんだった。
母親は、優しく、本当に優しく、体つきが細くて病気がちだった。
父親は、俗に言うアルコール中毒で仕事をしなかった。
母親は、彼を守り、愛してくれた。だが、暴力から、母親を守ることは出来なかった。
母親は自殺した。
気づいた。
彼は僕だった。