夢なのか現実なのか
私が初めて見たのは小学4年生の夏休みのことだった
あの夢のことは今でも鮮明に覚えている。
それは家族4人で遊園地に出かける途中に起こる悲惨な夢だった。
道路からは赤い派手な家が見え、全身真っ白なあばあさんが横断歩道を渡っている
「ねぇ、お母さん見て、あのおばあさん真っ白だよ!」
「まあ本当ね。」
お母さんとお姉ちゃんの楽しそうな話声が聞こえる
「お、もう少しで遊園地に着くぞ~、みんな準備はいいか?」
お父さんも遊園地を楽しみにしているのだろうか、声が少し弾んでいるように感じた
私たちが乗っている車が左折した直後だった。横から猛スピードでトラックが突っ込んできたのは
そのトラックは電話をしながら運転していたらしかった。
私が目を覚ましたのは事故が起きてから2日後のことだった。
警察の人が教えてくれたどれほど悲惨な事故だったのかを。
車は大破していたそうだ。
運転していたお父さん、助手席に座っていたお母さんは意識不明の重体、運転席側の後ろに座っていたお姉ちゃんは頭の打ちどころが悪かったらしく即死していたそうだ。
私は左腕の骨折だけで済んだのだ。
今、意識が戻っているのは私だけ、私だけ助かってしまった。
私だけ真実を伝えられ、お姉ちゃんの死を受け入れなければならなかった。病室で私は狂い叫び、ずっとずっと泣き続ける……という夢だった。
起きた時、あれは現実なのか夢なのか判断がつかないほどのリアルさだったので夢だと認識するまで5分ほどかかった。
なんだか嫌な予感がした私はお母さんに私が見た夢を話した。
「へえ~そんなすごい夢を見たの、昨日の夜ホラー映画見たせいよ。気にしないことね。そんなことより早く着替えなさい。出かけるわよ」
と相手にもされなかった。
「ねぇねぇお母さんお父さん、今からどこに行くの?」
お姉ちゃんはさっきから同じ質問ばかり聞いていた。私はあの夢を見たせいか正直、どこに行くのか気になっていた。どうせ買い物だろうと思っていたが、返事は違った。
「ふふ、今日はなんと久々に遊園地に行きたいと思いま~す!」
「えっ?」
私の心臓が大きく飛び跳ねた
「えっ!本当に?やったー!何に乗ろう?あ、絶対に観覧車には乗ろうね!絶対だよ?」
「絶叫系はやめてくれよ、お父さん怖くて乗れないからな」
何も聞こえてこなかった。遊園地へ行く途中に起こる事故…
もし、もし私が見た夢の通りに事故が起きてしまったら…お姉ちゃんが死ぬ。
ダメ、それだけは絶対にダメだ。
「ねぇ、お母さん見て、あのおばあさん真っ白だよ!」
「まあ本当ね」
聞き覚えのあるセリフ、見覚えのあるあの赤い派手な家、そして全身真っ白なおばあさん…
全部、全部夢で見たことのある光景。
本当に事故が起きてしまう、この先を左折しては絶対にダメだ。
「ダメ!」
私は思わず叫んでしまった。
「どうしたんだ?急に、何がダメなんだ?」
ハッと私は気付いた、お姉ちゃんが死んでしまうとさっきお母さんに話したが相手にされなかったことを。だから今お父さんに言っても無駄なのではないのか。
「あ、えっとー、トイレ!トイレに行きたい!もう我慢の限界!」
「それはやばいな、あっあそこにコンビニがあるそこまで我慢できるか?」
「う、うん、大丈夫」
コンビニなんてどこにあるのだろうと思いまわりを見まわすと、あった、左に曲がってすぐのところに。
あぁ、なんてバカなことをしたのだろう。まるで自分からあの夢のシナリオ道理に動いているようではないか。
もう、何を言っても何をしても無駄なのだと私は悟った。
「もう少しだから我慢するんだぞ、わかったか呉羽」
その直後だった。
「危ない!」
お母さんの叫ぶ声が聞こえた
ごめんね、お母さんお父さんお姉ちゃん、守ってあげられなかった。私こうなるってわかっていたのに…ごめんなさい。
心の中で謝罪し、それからの記憶は消えた