4 違和感
翌日、大学へ向かう道中で真北に声を掛けられた。
「おはよー」
「おはよ。昨日どうした?」
「ん…ちょっとね」
少し困ったようにはにかむと、もうこの話は終わりだという風に課題の話を持ち出してきた。こいつは都合が悪くなった時も、単にそれ以上話せることがないだけの時も、同じ顔で笑うからよく分からない。
真北と初めて知り合ったのは高校2年の春のことだ。そこから共に受験期を乗りきり、同じ大学へ進学してもう1年と2ヶ月が経とうとしている。
「お前最近疲れてるよな」
「ん?どこが?」
「顔つきというか、雰囲気が」
「痩せたからじゃないかな」
ぺたりと片頬に手をやってへらへらしてはいたものの、それでもこの『やつれた』という印象はどうも痩せたからというだけではない気がした。
「そっか、ならいいんだけど」
「お前は一人暮らしでも全然変わらないね」
「きちんと自炊できてるからな」
こういうとき、俺がもっと突っ込んで訊くことのできる人間ならば少しは頼りにされたのかもしれない。けれど現実の俺は逸らされた話を戻してやるほど優しくはなかったし、強くもなかった。だからこそこうして仲良くしていられるのだろう。そうでも思わないと、以前よりクマの目立つその顔を見てなどいられなかった。