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3 講義
大学へ着いた時にはもう授業が始まっていた。こういったことにあまりうるさくない教授なので、こっそり入って最後列の端に腰掛ける。あいつがいないことに気付いたのは、授業終わりに山石が声をかけてくれてからだった。
「おはよう。あのさ、真北見た?」
「おはよ」
「今日は来るって行ってたのにまたサボりかなぁ」
「真北ぽいのは見たけど」
「え、どこで」
「来る途中。でも一瞬だったし、ちゃんと見てない」
「そっか。サンキュー」
次も授業入ってんだ、といいながら去ってゆく山石の背中を見ていたら、一瞬高校の同級生の影がちらついた。今朝見た真北らしき奴もその類いで、本人じゃなかったのかもしれない。
結局この日、真北は大学に現れなかった。