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アイコン三国志  作者: 小金沢
第八章 夷陵の戦い
PR
86/126

〇八五   馬鞍山に死す

~~~馬鞍山(ばあんさん) 蜀軍~~~



挿絵(By みてみん) 丁奉(ていほう)

「お前は完全に包囲されている! 観念しろ劉備よ!」



挿絵(By みてみん) 鮮于丹(せんうたん)

「降伏するヤツは許してやる! 劉備なんて偽皇帝、さっさと見捨てちまえよ!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「くっ……! 呉軍め、我々がこの山に逃げ込むのを予測していたようだな。

敗残兵を糾合する前に包囲されてしまった。

軍師ならぬ俺程度の考えることなど、お見通しというわけか……」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「い、一刻も早くここを脱出しましょう!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「し、しかしどこから逃げるつもりじゃ?

四方は見渡す限り呉軍に囲まれとるぞ」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「何か包囲を破るためのきっかけが欲しいな……」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「そ、そういえば水軍を撤退させた呉班殿が、態勢を立て直したら、

き、救援の兵を出すと言っていました。そ、それに期待しましょう!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「陸に上がった水軍など、どこまであてにできるものか。

それに呉班の率いていた兵の数もたかが知れている」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「しかし、他にあてが無いのも確かじゃ。

ここは一つ、呉班さんの救援が来ることを信じて、

水路を目指してみるのも手ではないかのう?」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「……それが陛下の御命令とあらば、俺が血路を切り開いて見せます」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「む……。で、でもわしの策は当たった試しがないからのう。

今回も、長く細く陣を敷いたところを狙われてしもうたし……」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「そんなことは関係ありませぬ。

我らは陛下のために命を賭して戦うまで。なんなりと御命令くだされ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「程畿さん……。わしは良い家臣に恵まれとるのう。

なのに、今回はわしの失策で、いやそもそもわしのワガママで始めた戦で、

多くの家臣を失ってもうた。わしは、わしはなんと愚かなんじゃ……」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「へ、陛下…………」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「!? へ、陛下! 呉軍の様子が妙です!

背後から何者かに襲われているようです!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「どけどけえっ! この張苞の道を阻むヤツは突き殺す!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「…………ッッ!!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「関羽と張飛の子らの力、とくと見よ!

……と関興とあたいは思ってるわ!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「あれは――張苞らの先鋒部隊だ! 戻ってきてくれたか!」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「い、今です! か、彼らと合流して包囲を突破しましょう!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「よ、よし! 全軍突撃じゃ!! 一気に山を下れーーッ!!」



~~~呉 陸遜軍~~~



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「関羽と張飛の小倅どもだと?

ぐわははははは! やってくれたなこわっぱが!」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「彼らの奇襲にあわせ、山上の劉備軍も突撃を開始しました!

我々が逆に挟撃されています!」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「孫桓はどうしている?」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「は? そ、孫桓殿ならば、夷陵城の周辺で敵の残党を掃討しておられるかと……」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「孫桓の部隊を白帝城(はくていじょう)への道に展開させろ。

劉備は必ずその退路をとる。そこを迎え撃ち殲滅させる!」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「わ、わかりました!

…………と、ところで陸遜将軍。下山する劉備本隊への対処はいかがなさいますか?」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「そんなものはどうでもいい! 俺様が自ら叩き潰してやる!

何をうだうだしてやがる! さっさと俺様の馬を出せ雑兵ども!!」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「う、馬だーーっ! 馬を出せーー!」



~~~蜀 劉備軍~~~



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「陛下! ご無事でしたか!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「張苞さん! おうおう、なんと勇ましい姿じゃ……。

若い頃の張さんを思い出すぞ……」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「張苞は養子だから別に張飛ママには似ていない、

なんて冷やかすようなこと言いたそうにするんじゃないわよ関興!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「痴話喧嘩してる暇があるか! さっさと包囲の輪を突破するぞ!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「誰が痴話喧嘩よ!?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「よし、張苞さんらが加われば百人力じゃ! 行くぞみんな!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「はッ!!」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「……と、ところでどこへ行けば良いのでしょうか?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「あ…………。張苞さんらと合流することだけ考えてて、その先は考えとらんかったぞ。

ど、どうしようかのう」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「この兵力と勢いならば、転進して白帝城を目指せます。

白帝城からも迎えの兵を出させて、城まで逃げ込みましょう。

俺が先行して援軍を求めて参ります」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「頼んだぞ程畿さん!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「陳式、張苞ら、陛下は任せたぞ!

いやあああッ!!」



挿絵(By みてみん) 鮮于丹(せんうたん)

「丁奉殿! 敵は西へと向かっているようだ!」



挿絵(By みてみん) 丁奉(ていほう)

「また陸遜の読み通りだな。敵の目的地は白帝城だ!

待ち構える孫桓殿と挟み撃ちにすればいい。あわてずに後を追え!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「関興の思ってるとおり、敵はまるであたいたちの進路がわかってるみたいね。

このまま進んで大丈夫なのかしら……」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「細かいことは考えるな!

敵が何を企んでいようが、俺たちは身をていして陛下を守るだけだ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

(…………この戦いで多くの将がわしを守って死んでしもうた。

わしはこの上、張さんや関さんの子まで犠牲にして、生き残ろうと言うのか?

そんなことをするくらいならば、いっそのこと……)



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「来たぞ! 劉備軍だ! 矢の雨を浴びせろ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「あわわわわ! て、敵の伏兵じゃ!

や、やっぱりわしは死にとうないぞ!

誰の仇もとれないまま死んでたまるか! 助けとくれ!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「言われるまでもない! 蹴散らすぞ関興!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「最終的には孫桓と挟み撃ちするが、叩ける時には叩いておくのが当然だ。行くぞ!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「あんちゃん! 左からも伏兵よ!」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「わ、私が防ぎます!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「おーっと。韓当サンだけじゃねーし。オレもいるっての」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「伏兵はどんどん増えています! このままでは白帝城までもちません!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ぬう……。かくなる上はわしが――」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「陛下! 助けに来ましたよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「馬謖さん!? と、ということは、ま、ま、まさか……。

り、亮さんがわしを助けに……」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「あ、諸葛亮はいないです」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「へ?」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「だって諸葛亮は隠居したじゃないですか。

俺は諸葛亮から独り立ちして、兵を集めて陛下を助けに来たんです。

さあ、後は俺に任せてください! この頭脳で呉軍を蹴散らして見せますよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……………………」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「へ、陛下の顔色が白を通り越して土気色に……」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「そこか劉備! 追い詰めたぞ!」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「来たな! そうはさせない! 今だ! 伏兵よ射て!!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「…………は?」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「…………あ、あれ? 伏兵? 伏兵は……?」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「ぐわははははは。伏兵とやらはこのゴミクズのことか?

こんな物は俺様が片付けてやったわ!

おかげで孫権に借りたボロっちい刀は折れちまったがな!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「…………そ、孫堅艦長の古錠刀が」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「あ、あわわわわわわわわ」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「う、うわあ……全く使えませんよこの男!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わしらは……もう駄目なのか?」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「覚悟しろ!!」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「させるかあああっ!!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「何ィッ!?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「な――!? り、劉封さん!?」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「陛下、ここは俺に任せて早く白帝城へ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「き、来てくれたのか劉封……」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「誰かと思えば劉備のガキか。邪魔だ。消えな」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「命に代えてもここは通さん!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「陛下ーーッ! 吾粲の伏兵は退けた! 今のうちに進撃を!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「り、劉封兄さん!」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「よくやってくれたな張苞、関興、星彩。

後は俺に任せろ。陛下を頼む」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「張さん、関さんの息子だけじゃなく、わしの息子も、わしのために……」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「陛下、こんな俺のことをまだ息子と呼んでくれて光栄です。

それだけで俺は戦える。どうかご無事で」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「い、いやじゃ! わしは劉封を、息子のお前を犠牲にしてまで――」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「張苞! 早く陛下を連れて行け!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「お、おう!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「殊勝な覚悟だな。しかし俺の邪魔はさせん!」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「勝てないことはわかっている。

だが時間稼ぎくらいはさせてもらう。行くぞ!!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「劉封ーーーッ!!」



~~~白帝城への道~~~



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「くっ……。なんということだ……」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「白帝城へ向かうつもりだったか? だがそれは無理だ。

すでにオレの部隊が封鎖しているぜ」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「火火ッ。お前らの進退はきわまった。

おとなしくここで死んでもらおう火(か)ッ!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「白帝城に入るのは不可能だ。い、急ぎ陛下に伝えなければ――」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「おーっと! 劉備のもとには帰らせないアル!

奥義! 陳武獅子王脚!!」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「ぐわああああああっ!!」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「……ん? しぶとい奴アル。まだ息があるアルか」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「へ、陛下……。た、退却を……」



挿絵(By みてみん) 李異(りい)

「さっさととどめを刺せよ。それとも俺がやってやろうか?」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「ワタシの獲物を横取りするなアル。いま楽にして――」



挿絵(By みてみん) 馬良(ばりょう)

「敵は程畿に気を取られてしかもこの場に私が現れるとは夢にも思っていない西風に乗せて火と矢を放て敵軍まで延焼させる必要はない火をかけ煙を上げれば十分だそうすれば劉備の本隊は前方の異常を察知するだろうし白帝城からの救援軍も煙に気づいてくれるだろう」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「劉備軍の伏兵だと!? 俺の目の前で火計を用いるとは身の程知らずが!」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「待て! 伏兵のヤロー、気になることを言っていたぞ。

白帝城からの救援がなんとか――」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「今の煙はなんなんスか? 白帝城から救援に来たッスよ!」



挿絵(By みてみん) 李異(りい)

「劉備の援軍だ! 煙を見て急行してきやがったぞ!」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「それも趙雲アル!!」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「チッ! やってくれたなこの野郎! 死ねッ!!」



挿絵(By みてみん) 馬良(ばりょう)

「……………………!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ああっ! 馬良先輩!」



挿絵(By みてみん) 馬良(ばりょう)

「……………………ッ!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「大丈夫ッスか? 矢が当たったのにだいぶ経ってから苦しんでるッスけど。

――ってこれ心臓に刺さってるッスよ!? 痛がるのも面倒なんスか!?」



挿絵(By みてみん) 馬良(ばりょう)

「……………………死ぬのも('A`)マンドクセ」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「馬良先輩ーーッ!!」



挿絵(By みてみん) 李異(りい)

「おっと、悲しむ必要はねえぜ。今すぐお前も同じ所に送って――。

ぐっ!? ……こ、これは……」



挿絵(By みてみん) 程畿(ていき)

「……油断した、な。李異。ざまあ、見やがれ……」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「て、程畿!? まだ動けたアルか!?」



挿絵(By みてみん) 李異(りい)

「程畿か……クソが……。だから、さっさと、殺せって言った、だろう、が……」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「こ、この! この! この! よ、よくも李異を……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「アンタ! やめるッスよ! 虫の息の程畿先輩に何してるッスか!」



挿絵(By みてみん) 謝旌(しゃせい)

「ぎゃあああああ!!」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「謝旌! ――よくも李異と謝旌をやりやがったな!!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「そっちこそよくも程畿先輩と馬良先輩を……。

自分とやるつもりッスか! 受けて立つッスよ!」



挿絵(By みてみん) ??

「アンタ! また頭に血が上ってるやないか!

ウチらの任務は劉備陛下の救出やで! そんな連中、放っときなはれ」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「趙雲殿! この場は私に任せ、早く陛下のもとへ!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「む……。そうだったッス。劉備先輩のところへ急ぐッスよ!」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「さ、さらに援軍が来やがったぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「オレは趙雲を追う! 朱然は援軍を食い止めろ!」



~~~蜀 張苞軍~~~



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「どけよガキども!!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「諦めろ鈴のオッサン!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「ッッ!!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「こいつ……なんて強さなの!

あたいたち三人がかりでも互角以上よ!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「チッ……。鈴の甘寧が泣いて呆れるっつーの。

若い頃はこんなガキども10秒で片付けられたってのによー。

ったく。年はとりたくねーなー」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「甘寧! ガキは俺に任せろ! お前は劉備を追え!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「韓当サン――って。アンタ、片腕やられてマセン?

劉封にやられたんじゃね?」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「大した若武者だった。片腕で済んで幸運だ」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「てめえ……よくも劉封の兄貴を!!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「落ち着いてあんちゃん! 劉封兄さんはあたいたちに陛下の無事を頼んだのよ!

仇討ちより陛下を守ることを考えて!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「……わかってる。わかってんよ……」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「!!」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「関興! ……わかった。

自分が足止めするから今のうちに陛下のもとへ行けって、そういうのね!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「劉備のガキの次は関羽のガキが捨て石になるのか!

劉備よ! 子らの骸を踏んで貴様はどこへ進もうというのだ!?」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「うるせえ! 俺たちは民のために戦う陛下が、

それを守る関羽将軍や張飛母ちゃんが好きなんだ!

それをどうのこうの言われる筋合いはねえ!!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「よく言ったッス! よくここまで戦ったッスよ!!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「!?」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「ち、趙雲さん!!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「趙雲だと!?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「自分が来たからにはもう誰も死なせないッスよ! 劉備先輩はどこッスか!?」



挿絵(By みてみん) ??

「アンタ、そう言ってさっき目の前で二人死なれたやんか。

あと劉備はんの本隊はうしろや。通り過ぎとるで。落ち着きなはれ」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「あ、ちょっと勢いつきすぎたッスね。

じゃあこの二人を片付けてさっさと戻るッスよ」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「言うに事欠いて、俺たちをさっさと片付けるだと!?」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「聞き捨てならねーし!!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「あ、今のお二人じゃ自分に勝つのは無理ッスよ」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「ぐあっ!!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「ぐううっ!!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「か、韓当と甘寧を一撃で馬から叩き落とした……!?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「韓当は片腕だし、甘寧は疲れ果ててるッスからね。このくらい当然ッス」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「……………………」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「た、たしかに何もかも馬鹿らしくなるくらい強いわ……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ほらほら、今のうちに劉備先輩を助けに行くッスよ!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「ま、待て趙雲! うぐっ!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「ぐっ……。チキショー……」



~~~呉 孫桓軍~~~



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「趙雲の援軍はどこへ行きやがった? 追ってきたら劉備の本隊とぶつかっちまったぞ」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「孫桓殿、なぜここに!? あなたは白帝城への道を封鎖していたはずでは?」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「白帝城から趙雲の援軍が駆けつけやがったんだ。

劉備の本隊と合流しようとしてたから追ってきたんだが……」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「趙雲ですと?

そういえばさっき、我々の横を通り過ぎていった部隊がいたような――」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「陛下ーーッ! 劉備センパーーイ! どこにいるんスかーー?」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「戻ってきやがったか! 待て趙雲!!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ん? またアンタッスか。ちょっと忙しいんでどいてるッス」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「ぐわあっ!?」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「そ、孫桓殿!!」



挿絵(By みてみん) 孫桓(そんかん)

「や、ヤロー……。オレを一撃で……クソが……」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「しっかりなされ、傷は浅いですぞ!

孫桓殿を死なせるわけにはいかん。退却だ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「うん……? 心なしか敵の数が減ったような……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「劉備先輩! やっと見つけたッスよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「龍さん!? ど、どうしてここに……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「法正先輩がこんなこともあろうかと、自分に援軍に行くよう命じたッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そうか法さんが……。ほんなら法さんも来とるんか?

法さんが来てくれれば千人力じゃぞ!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「…………法正先輩は亡くなられたッス。

先輩は遺言で、自分に命令を下したッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほ、法さんも死んだ…………?

そうか……。死んでもなおわしを救けてくれるとは流石じゃ。

法さんがいれば、こんなみじめな敗北もしなかったろうなあ……」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「ぐわははははははは! 劉備はそ~こ~かあ~~!?」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「へ、陛下! 陸遜(?)です! 陸遜(?)が現れました!!」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「陸遜だと! り、陸遜を討てば出世栄達は望みのままだ! 私がやってやる!」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「待ちな! 趙雲さんの援軍が加わっても、俺たちの兵力は呉軍より圧倒的に少ない。

ここは無理をせず撤退するべきだ」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 星彩(せいさい)

「ホント、張苞あんちゃんの口からそんな言葉が出てくるなんてビックリよね」



挿絵(By みてみん) 張苞(ちょうほう)

「うるせえ。――いろんな人に言われて、俺だって考えたんだ」



挿絵(By みてみん) ??

「とにかく張苞の言う通りや。今なら白帝城への道の封鎖も解けとる。

一気に包囲を突破するで!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ウス! 自分が先陣を切るッス。みんな後からついてくるッスよ!」



~~~白帝城への道~~~



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「むう……。いつの間にか火に囲まれている……」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「火火ッ。俺がただ逃げ回っているだけと思ったか?

逃げながら、お前を包囲するように火を放っていたのさ!」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「くっ……。なんという熱さだ……。まるで燃えるようだ……。これでは……」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「火ッ火ッ火ッ! そのまま消し炭になるがいい!」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「これでは……。これでは私の本気が出せてしまうではないか!」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「…………火火?」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「うおおおおおっ! 西の果て! シルクロードの果ての果て!

土耳古が国技・油相撲の妙技を見るがいい!!」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「火ィィッ!? 奴の身体から泉のように脂汗が湧き出ている……。

あ、油で地面を滑り突撃してくるだとォォ!?」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「捕らえたあッ!! ハァァァァッッ!!」



挿絵(By みてみん) 朱然(しゅぜん)

「す、滑った勢いで俺をぶん投げただとおおぉぉぉぉお…………!?」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「アララト山まで……飛んで行くがいい」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「ば、馬忠! い、今かっ飛んでいったのは敵将か?」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「む? 誰かと思えば廖化ではないか。

呉軍に捕らわれたと聞いていたが脱獄してきたのか」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「あ、ああ。いろいろあって、気がついたらこの近くで寝かされていたんだ」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「は?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「馬忠先輩! 劉備陛下をつれてきたッスよ!」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「おお、趙雲殿。ちょうど今、敵将を片付けたところだ。

廖化も来てくれた。急ぎ、白帝城まで逃げ込もう!」



~~~夷陵城 呉軍~~~



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「り、劉備軍は白帝城まで逃げ込みました。

いったんは馬鞍山に追い詰めたものの、張苞らの救援によって脱出され、

さらに白帝城への道を封鎖していた孫桓殿の軍も、

白帝城から駆けつけた趙雲に撃破され、劉備の退路を確保されました」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「……………………」



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「い、一連の戦いで劉備軍の数万の兵を斬り、

さらに張飛、程畿、張南、馮習、王甫、傅彤、沙摩柯、馬良、劉封を討ち取りました。

また劉備に協力していた武陵蛮は我々と和睦し、

さらに水軍を率いていた黄権は孤立し、魏へと降伏したようです」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「……………………」



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「し、しかし我が軍も譚雄、周平、李異、謝旌、馬忠、范彊、張達、傅士仁らが討たれ、

孫桓、韓当、甘寧は負傷。朱然、崔禹は行方不明となっています」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「……………………」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「わ、我々も多くの将を失いましたが、戦自体は大勝利を収めたと言ってよいでしょう!

この勢いをかって白帝城を落とし、益州へと攻め込みましょうぞ!」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「………………それは反対だなあ」



挿絵(By みてみん) 鮮于丹(せんうたん)

「ヒッ…………」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「あれえ? みんな何をビクビクしてるの?

あ、そうか。こないだちょっと興奮しちゃったからか。

ボクはたくさんの火を見ると、我を失っちゃうことがあるんだよね。

でももう落ち着いたから大丈夫だよ」



挿絵(By みてみん) 丁奉(ていほう)

「は、はあ…………」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「それで、せっかくだから益州へ攻め込んじゃおうって?

ダメダメ、そんなのボクは反対だよ」



挿絵(By みてみん) 徐盛(じょせい)

「なぜじゃ? 劉備軍は主力を失い、亀のように城に閉じこもっておる。

この隙を狙わずして、いつ戦うつもりじゃ!?」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「ボクらの敵は劉備さんだけじゃないよ」



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「! ――と言われますともしや……」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「勝つには勝ったけど、一年以上続いた戦で、ボクらも弱ってる。

その隙を、あの曹丕さんが見逃すかなあ」



挿絵(By みてみん) 鮮于丹(せんうたん)

「だ、だが我々は形式上は曹丕に服従している身です。

それを反故にして、曹丕が我々を討つと言うのですか?」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「曹丕さんもきっと、ボクらがイケイケで益州へ攻め込むと思ってるはずさ。

そうして空っぽになった呉を攻めるつもりだよ。あの人、性格悪いからさ~」



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

「し、しかしここで兵を引けば、劉備は息を吹き返しますぞ!

それでもし、曹丕が攻めて来なければ、

我々はみすみす劉備を討つ好機を逸することに……」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「そもそも益州を攻めるのはそんなに簡単なことじゃないよ。

遠征軍はボッコボコにしてあげたけど、留守番の兵だって相当残ってるからね。

それに益州の道ってすんごい険しいんだよ~。

兵のみんなも一年も戦った後に、そんな所を攻める元気なんてあるかなあ」



挿絵(By みてみん) 丁奉(ていほう)

「むう…………」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「ってことで、ボクらは撤退することに決定しま~す。

白帝城を見張ってる潘璋さんにも伝えといてね。

――で、悪いんだけど徐盛さん。徐盛さんの部隊はあんまり戦ってないから元気でしょ?

一足先に魏との国境の……そうだなあ。

洞口あたりへ戻って、曹丕さんに備えてくれないかな」



挿絵(By みてみん) 徐盛(じょせい)

「フン、承知した!」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「それから吾粲さんは潘璋さんと合流して荊州へ、

駱統さんは孫権艦長の所へ行って、防備を固めといてね。

ボクと丁奉さん、鮮于丹さんは夷陵周辺の守りを再編成してくから。みんなお願いね」



挿絵(By みてみん) 駱統(らくとう)

「はッ!」



挿絵(By みてみん) 吾粲(ごさん)

(曹丕が攻めてくるだと……?

にわかには信じがたいが、ここまで陸遜の読みはことごとく当たっている。

もし真実ならば国家存亡の危機。しかし陸遜の読み違いならば我々は……)



~~~諸葛亮の草廬~~~



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「劉備が敗れた? それがどうした」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「世間話です。御主人様はどう思うですか?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「どうも思わん。世俗のことに興味など無い。

まあ白帝城の近く、魚腹補(ぎょふくほ)にちょっとした仕掛けをしておいたが、

余がおらず、それを使えなかったのは少々残念ではあるかな」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「………………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「なんだその顔は。

馬謖がいなくなって寂しいのか」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「いくら御主人様でも言っていいことと悪いことがあるです。

あの身の程知らずがいなくなってせいせいしてるです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ならばなんだ。余に言いたいことがあるのか。労働状況の改善ならば断る」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「……御主人様もわかってるはずです。

劉備のことが心配にならないですか」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ならん。これで満足か?」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「………………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「余が拾ってやった頃の貴様は、人形のように感情が無かったものだがな。

劉備に惚れたのか? 余には理解できぬがあの者には謎の求心力がある」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「……もういいです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ならば下がれ。余は忙しい」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「………………」



~~~~~~~~~



かくして劉備は命からがら白帝城へと逃げ込んだ。

しかし陸遜は追撃をやめ、魏の侵攻を危ぶみ兵を返した。

陸遜の読みは的中するのか? 呉にはさらなる脅威が近づきつつあった。


次回 〇八六   三路侵攻作戦

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