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アイコン三国志  作者: 小金沢
第七章 軍神・関羽
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72/126

〇七一   劉備の逆襲

~~~益州(えきしゅう) 成都(せいと)~~~



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「魏軍の主力は合肥(がっぴ)に向かい、鄴(ぎょう)都では反乱が相次ぎ、

曹操はおいそれと身動きが取れぬ。

今こそ防備の手薄な漢中(かんちゅう)を攻め落とす好機だ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「待ってました! ここんとこ内政ばかりで腕がなまってたのよ。

諸葛亮! アタイに先陣を任せなさい!」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「いや! 先陣を切るのは馬超だ!

劉備に仕えてからまだ馬超は武勲を立てていない!

劉備軍での初陣を飾らせてくれ!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「だったら表に出なさい馬超! 一騎打ちで先陣を決めましょ!」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「望むところだ!」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「やめろやめろ。争うことはない。先陣はお前ら二人に任せるぜよ」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「チッ」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「馬超、舌打ちはやめなさい」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「張飛には魏延と雷銅、馬超には馬岱と呉蘭を副将につけてやろう」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「任せろ。ギヱンの新武装をお披露目してやる」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「はいな」



挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

『おう!!』



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「中軍を率いるのは趙雲と黄忠だ。

同じく副将として趙雲には陳到、張翼。

黄忠には厳顔、陳式をつけるぜよ」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ウス!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「儂に任せろ!」



挿絵(By みてみん) 張翼(ちょうよく)

「趙雲将軍、陳到殿、よろしくお願いいたす」



挿絵(By みてみん) 陳到(ちんとう)

「拙者こそ以後お見知り置きを」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「黄忠将軍の副将とは光栄じゃ。

老骨同士、仲良くいたそうではないか」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「………………よろしく」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「そして本陣はもちろん総大将の劉備様が率いるぜよ。

軍師はワシが務め、副将には呉懿、黄権、馬良らを配するき」



挿絵(By みてみん) 呉懿(ごい)

「はいはい、いいですよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「みんなに任せときゃ安心じゃな!」



挿絵(By みてみん) 黄権(こうけん)

「殿は昼寝でもしててくれタイ!」



挿絵(By みてみん) 馬良(ばりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「殿軍は余が自ら率いてやる。

せいぜい余の手をわずらわせないよう努力するがいい」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「努力するです貴様ら」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「……諸葛亮殿、霍峻(かくしゅん)が守る葭萌関(かぼうかん)にも

兵を向けるべきと考えます。葭萌関は魏との国境に近く――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「貴様に言われるまでもない。

劉封と孟達、鄧賢を葭萌関に入れ、

逆にこちらから魏の拠点である上庸(じょうよう)を攻撃させる手筈だ」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「はッ! 必ずや上庸を攻略いたします!」



挿絵(By みてみん) 孟達(もうたつ)

「昨日あたりから葭萌関のほうから不思議な音がしましてね。

なんだろな~と思って耳を澄ませてみたら、誰かが呼んでるんだ。

助けてくれ……助けてくれ……って、

魏軍が攻めてくるよ……って、助けを呼んでる。

よくよく考えてみたら、その声は霍峻の声なんだな~。

それであたしは救援に行くと、そういうお話です……」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「張飛、少しの間お別れね。あちしがいなくてもがんばんのよ!」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「成都の守りのほうは、

糜竺殿を中心に劉巴殿や李恢に頼んだぜよ。

あと兵站は李厳に一任するき。しっかりやってくれ」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「お気をつけていってらっしゃいませ」



挿絵(By みてみん) 劉巴(りゅうは)

「ああ」



挿絵(By みてみん) 李厳(りげん)

「フン」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「殿、出陣にあたって何か一言お願いするぜよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「お、おう。そうじゃな……。

今度の戦は、元からわしとともに戦ってくれたみんなと、

益州のみんなが一緒に戦う初めての戦じゃ。

全員の力をあわせて、漢中を攻め落とそう!!」



挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「「「「おお!!!!!」」」」」



~~~漢中(かんちゅう) 南鄭(なんてい)城~~~



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「ついに劉備が動いたか。面白い。迎え撃つぞ!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「待たれよ。すでに前衛には曹洪殿、張郃らが陣取っている。

夏侯淵将軍はうかつに動かず、

後方から状況を見据えていただこう」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「漢中に残された我らの戦力だけでは

いささか心もとないからな。

魏王の援軍が到着するまで、守勢に努めるのが賢明だろう」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「だが南鄭城に引きこもったままでは

いざという時に素早く動けんぞ。

同じ様子見なら前線の定軍山(ていぐんざん)に布陣するべきだ!

郭淮もそう思うだろ?」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「はッ。定軍山は曹洪将軍らの前衛と

ここ南鄭城のちょうど中間に位置します。

本官もその考えに同意いたします!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

(気の短い将軍に籠城を強いるのも無理な話か……)



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「何をぼやぼやしている杜襲! 敵は目の前に迫っているのだぞ!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「……承知した。では南鄭の守りは朱霊、路招に任せる。

郭淮は私たちについてきてくれ」



挿絵(By みてみん) 路招(ろしょう)

「はい」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「了解であります!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「行くぞお前ら!!」



~~~下弁(かべん) 馬超軍~~~



挿絵(By みてみん) 呉蘭(ごらん)

「くそっ! 敵の数が多い。退け! 退けーい!」



挿絵(By みてみん) 曹洪(そうこう)

「逃げるな! 首を置いていけ!

敵将の首を取れば恩賞も思いのままに――」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「ここは馬超が引き受けた! 呉蘭は今のうちに退却しろ!」



挿絵(By みてみん) 張既(ちょうき)

「将軍、馬超が出て来ました! 兵も動揺しています。

不用意に戦うべきではありません!」



挿絵(By みてみん) 曹洪(そうこう)

「馬超か……。

討ち取れれば莫大な褒美がもらえるだろうが、

返り討ちにあったら元も子もない。

遭遇戦は避けたい相手だな。退くぞ」



挿絵(By みてみん) 辛毗(しんぴ)

「撤退だ! 追撃を警戒しつつ引き上げよ!」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「おのれ逃げるか!? 待てい曹洪!!」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「止めなさい馬岱!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「はいな! どうどう。どうどう、殿」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「なぜ止めるんだ董白!?」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「曹洪があっさり引き上げたのが怪しいわ。

伏兵がいるのかもしれない。

それに追撃より、撃退された呉蘭の兵を収容するのが先決よ」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「そうか。わかったよ董白!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「お、おう……。今日は嫌に素直やな、殿」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「曹洪程度の相手をしなくても、

成都に帰ればいつでも張飛や趙雲と手合わせできるから、

あんまりうっぷんが溜まってないのよ。

馬超は獣みたいなもんだから」



挿絵(By みてみん) 馬超(ばちょう)

「彼らとの戦いは心が躍るんだ!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「……魏軍相手にも躍らせて欲しいもんやな」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「とにかく今回は兵を引くわ。

張飛将軍の部隊とも連携して、焦らずじっくりと攻めかけましょ」



~~~漢中 張飛軍~~~



挿絵(By みてみん) 鞏志(きょうし)

「張飛将軍! 近隣の民が我々の進攻を恐れ混乱しています」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「それはよろしくないわね。

アタイたちは魏軍と戦ってるだけで、

略奪する意志は無いって、よく伝えてもらえるかしら。

――ううん、アタイが直接話すわ。民の代表を集めてくれる?」



挿絵(By みてみん) 鞏志(きょうし)

「了解した!」



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

(張郃殿、あれが劉備軍の先鋒を率いている張飛だ)



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

(長坂の戦いでは相まみえることがなかったが、

つとに勇名は聞いている。刃を合わせるのを楽しみにしていた)



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

(我々の伏兵にはまだ気づいていない。

弓の一斉射で不意を突くぞ!)



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

(……いや、俺は気が進まない)



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

(なんだと?)



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

(ずっとあの張飛という女を観察しているが、

彼女は清らかな心の持ち主だ。彼女とは正々堂々と戦いたい)



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

(女!? い、いやそれより奇襲を掛けないだと!?)



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

(俺には愛刀の剣狼を通じ、張飛の心の中が見える。

彼女は間違いなく女だ。

そして民に非道を働かず、悪を憎み正義を愛する人だ。

……そんな彼女に不意打ちなど、俺にはできない)



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

(ぬぬぬ……)



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「待てい張飛!」



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

「!?」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「たとえ敵味方に分かれるとも、正義の心に違いはない。

人、それを『性善』と言う」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「いきなり出てきて何よアンタ!?」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「俺の名は張郃! お前に正々堂々と勝負を挑む!!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「あ、さてはアンタが噂のヒーロー馬鹿ね!

いいわよ、やってやろうじゃないの!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「行くぞ! スパイラルキィィィィック!!」



挿絵(By みてみん) 楊阜(ようふ)

「張郃の馬鹿め! ええい、我々も続け!」



挿絵(By みてみん) 雷銅(らいどう)

「他にも伏兵が潜んでいたぞ!

張飛将軍の一騎打ちの邪魔をさせるな!」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「行けギヱン。

ムラマサ・E・ソードの切れ味を見せつけてやるのだ」



挿絵(By みてみん) 魏延(ぎゑん)

「ウォォォォォォォン!!」



~~~漢中 定軍山~~~



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「曹洪殿は馬超軍と対峙し、一進一退の攻防を繰り広げている。

だが張郃は張飛軍に敗れ、戦線を後退させた」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「そして張郃殿を追撃する張飛軍の後に続き、

黄忠軍も漢中の深くまで攻め入ったと聞いております!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「ならば張飛か黄忠、どちらかを叩かなくてはならんな。

そしてそれは俺の役目だ!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「……異論はない。だが定軍山の守りが手薄になるのはまずい。

関中(かんちゅう)に援軍を要請し、守備に回そう」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「そうと決まれば俺が出陣しても問題ないな。

行くぞ! 劉備軍の進撃を止める!」



~~~漢中 黄忠軍~~~



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「かっかっかっ! さすがは張飛殿。

関羽殿の義弟にふさわしい活躍だな!」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「張飛殿の強さ、そして度量の広さには儂も感服しておる。

負けてはいられないな、黄忠殿」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「そのとおり!

儂らの外見だけを取り上げて、

やれ老いぼれだのジジイだのと甘く見る連中を見返すためにも、

ここはひとつ大きな手柄を立てねばいかんぞ、厳顔殿」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「ああっ……。あれをご覧ください。敵軍が待ち構えています……」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「あれは……。おお! 敵の総大将・夏侯淵ではないか!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「夏侯淵を討ち取ったとあれば、戦功第一は疑いない!

よし、奴の首を獲るぞ!!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「来たな黄忠! 劉備軍一の弓使いと聞いている。

お前との対戦を楽しみにしていたぞ。

これはあいさつ代わりだ!!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「ちょこざいな!」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「おおっ! 夏侯淵将軍の矢を、自分の矢で撃ち落とした!!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「やるな! だがまだまだァッ!!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「そんなひょろひょろ矢で黄忠を射抜けると思うてか!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「な、なんという腕だ……。夏侯淵将軍の矢を全て撃ち落としている。

弓の腕では将軍を上回るのではないか?」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「なんだと? ――おい黄忠!

今度はお前が射かけてみろ。同じように全部撃ち落としてやる!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「ほほう、儂と張り合おうというのか。

面白い! 喰らえッ!!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「よーく見とけよ杜襲! おらおらおらおらアッ!!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「おお……将軍の腕も全くひけを取っていない。

一度に五矢を放ち黄忠の矢を射落とすとは!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

(こ、これは…………)



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「どうだ杜襲に黄忠!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「フン、儂の猿真似をして見せただけではないか。

別に驚いてなんかいないんだからな!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「弓の腕は見せてやった。

黄忠よ、今度は剣の腕を見せてやろうか」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「望むところだ! 手を出すなよ厳顔殿! うおおおおおっ!!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「――かかったな! 今だ夏侯尚!」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「……………………踊ろう、妻よ」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「ああっ……。背後から敵の増援が……。

……申し訳ありません。捕らえられました……」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「くっ! 陰気な陳式がもっと陰気な男に

あっさり捕らえられたぞ!」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「あは…………。私は陽気な男ですよ…………。

ほら、妻よ。一緒に踊ろう…………」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「な、なんじゃあの男は?

でかい人形を振り回して兵をなぎ倒しておる。

音に聞く人形遣いか?」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「いや……あれは人形ではない。

死体だ! 女の死体を武器にしとるんだ!」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「紹介しましょう……。私の妻です……。


みなさんこんにちは!(夏侯尚裏声)」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「な、なんと薄気味悪い!!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「いかん、兵も動揺しておる。

無念だがここは撤退だ! 退け!!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「――追撃は必要ない。敵将を捕らえたのだ。戦果は十分だろう」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「あ、あの夏侯尚という方は何者なのでありますか?」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「俺の従弟だ。側室を亡くして以来、

ちょっと常人離れしてしまったがな。

だが側室を墓から掘り起こし、

加工して武器にするようになってからは、

人形遣いとして無事に立ち直ってくれた」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「……あれを無事と表現するのならな」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「夏侯尚はアレを生きている妻だと信じ込んでいる。

くれぐれも不用意な発言はしないように頼むぞ」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「は、はあ……」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「…………夏侯淵殿、杜襲殿。お久しぶりです……。

初めましての方はよろしくどうぞ……。

ほら、お前もあいさつしなさい……。


主人がお世話になっています!(夏侯尚裏声)」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「………………」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「杜襲殿の命で援軍として駆けつけました……。

首尾よく行ったようでよかったと思います……。


――ああっ! あなた危ない!!(夏侯尚裏声)」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「なに!?」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「チッ! 不意打ちしてやったのに、

とっさに死体で儂の矢を防いだか!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「黄忠! おのれ、撤退したのは見せかけか!」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「かっかっかっ。老黄忠がただで逃げると思うてか。

そら、陳式は奪回させてもらったぞ。さらばだ!」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「妻よ! 私をかばって被弾するなんて……。 

しっかりするんだ。傷は浅いぞ!!


あ、あなたが無事ならわたしの身体なんて……(夏侯尚裏声)」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「……………………。はっ。

あ、呆れている場合ではなかった。

追えーーっ! 黄忠を逮捕しろーーっ!」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「俺たちも続くぞ杜襲!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「待たれよ将軍! 黄忠の逃げっぷりが良すぎる。

これは我々を誘う罠かも知れん。追撃するのは郭淮に任せよう。

一撃は喰らわせてやったのだ。緒戦はこれで満足としましょう」



挿絵(By みてみん) 夏侯淵(かこうえん)

「フン。俺はまだ喰い足らんがな……」



~~~漢中 黄忠軍~~~



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「法正殿の策が当たったな! 

だが追ってきた郭淮とやらは伏兵で叩いてやったが、

夏侯淵は誘いに乗らなかったぞ」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「短気な夏侯淵なら引っ掛かると思ったが、

冷静な参謀がついているようぜよ」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「夏侯淵は定軍山に籠城しておる。

ちょっと攻めてみたが防備が堅くて簡単には落とせそうにないぞ」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「ならば後続の趙雲殿らの軍と合流してから攻めかかるか?」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「いや……。曹操が自ら率いる援軍が、

もう長安に入ったという情報を得とる。

趙雲らを待っていたら、曹操の援軍が間に合ってしまうぜよ」



挿絵(By みてみん) 厳顔(げんがん)

「やはりその前に我々だけで定軍山を落としたいところだな。

だがどうやって落とす?」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「兵を二つに分けるぜよ」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「ふ、二つに?

ただでさえ少ない兵力をさらに分けるのですか……?」



挿絵(By みてみん) 法正(ほうせい)

「ああ。ちょっとした賭けになるが、

おまんら、ワシの賭けに乗ってくれるか?

その代わり、うまく行けば夏侯淵の首が獲れるぜよ」



挿絵(By みてみん) 黄忠(こうちゅう)

「面白い! 夏侯淵を討ち取れるなら、

この皺首を法正殿に預けてやるんだからな!」



~~~~~~~~~



かくして漢中の争奪戦は始まった。

一進一退の攻防が続く中、劉備軍の新たな軍師・法正が動く。

はたして法正の策は戦の趨勢を変えるに足るのか?


次回 〇七二   定軍山の戦い

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