〇二五 下邳城の戦い
~~~許昌の新都~~~
「反乱した張繍は宛城に立てこもっています。
なお、南からは劉表が進軍して
様子をうかがっているとのこと」
「あはは。さすが劉表、抜け目がありませんね。
我々と張繍が争っている隙に
漁夫の利を得ようと企んでいるのでしょう」
「東も騒がしいぞ。呂布が徐州を乗っ取り、
袁紹は孔融を追い出して北海を占拠したそうじゃ」
「さらに江東では袁術君がニセ皇帝を名乗ったと。
ふむ、一気に忙しくなったね。まずはどこから手をつけようか」
「無論、曹昂と典韋の仇討ちだ!
張繍の首を取るぞ!」
「待て待て。張繍を相手にすれば、
そのまま隣接する劉表との連戦になだれ込みかねんぞ。
それに背後に呂布や袁術を残しておくのは危険じゃ」
「判断に迷うところだね。郭嘉君はどう思う?」
「張飛」
「張飛? 呂布に追い出された前の徐州刺史ですか。
たしか我々に庇護を求めてきていたと思いますが」
「なるほど、張飛君は陛下に任命された正当な徐州刺史だ。
張飛君を旗印に立て、彼に徐州を返還するよう
呂布に命じろと言うんだね。面白いな」
(あいかわらずよく郭嘉の言葉が通じるもんだ……)
「張繍には我々に攻撃を仕掛けるほどの戦力はありません。
北の袁紹はまだ公孫瓚と争っていますし、
江東の袁術も遠く離れています。
呂布と戦うのが妥当でしょうね」
「よし、そうと決まったら張飛君をつれてきてくれたまえ」
~~~徐州~~~
「DGKLL;;AKASDIKSDAJdfjsdk」
「陛下がミスター張飛に徐州を返還しろと言っているのですね。
私もそう思っていました。喜んで応じましょう」
「快諾いただきありがたく存じます。
陛下の代理人である曹操も喜びましょう。
それでは失礼いたします」
「……将軍。今のは陛下ではなくて曹操からの命令ですが」
「fdhakl;soip」
「それは私も理解しています。
しかしそれは私の意思に沿うものです。
私も徐州を返還したいと思っているのです」
「はいはい、そう言うと思ったよ。
まーた放浪生活に逆戻りかよ」
「口を慎め張遼。我々は呂布将軍に従うだけだ」
「わーってるよ。でもグチくらい言わせろや」
「…………」
~~~徐州 西部 泰山~~~
「意外と早く徐州に戻れることになってよかったなあ、張さん」
「フン、どうだかね。
おおかた呂布の伏兵が途中で襲いかかってくるんじゃないかしら」
「あいかわらず張さんは呂布嫌いなんじゃのう。
それより、戻ったら本当にわしが刺史になっていいのか?」
「言ったでしょ。アタイは二番手がお似合いだって。
心配しなくてもアンタに仕事は頼まないわよ。
面倒なことはアタイや関羽がやるから、
アンタは黙ってお飾りになってればいいのよ」
「はっはっはっ。そりゃあ気楽で助かるのう」
「…………ッ!」
「どうしたの関羽? 山頂の方なんて指さして――」
「ゴルァ! 呂布将軍の徐州を明け渡すわけにはいかぬ。
この泰山を生きて通れると思うな。者どもかかれッ!」
「あれは……呂布と同盟を結んでいる泰山の山賊か!」
「言わんこっちゃない! やっぱり呂布の罠よ!」
「呂布め、約束を反故にするとはな!
急ぎ本隊を呼んでくる。お前たちも早く逃げよ!」
「やれやれ、また逃げるのか……」
~~~徐州~~~
「sfhsa;98kssdfo!!」
「いったい誰ですか。勝手に泰山の兵を動かしたのは。
こんなことは私は許しません。望んでいないのです」
「しかし曹操軍は我々を逆賊と断じ、
すでにこちらに進軍してきている。迎え撃つしかあるまい」
「……やむをえんな。張遼、薛蘭、出撃するぞ。
呂布将軍、陳宮、侯成、成廉は城を守ってくれ」
「おうよ。要は勝てばいいんだよ勝てば」
「い、急ぎ準備を整えます!」
「……侯成、やってくれたな」
「なんのことですかな?」
「お前は臧覇と同郷で親しくしている。
奴を動かすことができたと言っているのだ」
「俺が臧覇に張飛を襲わせたと? 証拠でもあるんですか」
「無い。だがこれ以上、勝手な真似をしたら許さんぞ」
「…………」
「では、行って参る」
「お気をつけて」
~~~許昌の新都~~~
「呂布軍は高順が外に布陣し、城は呂布が守り、
我々の背後の泰山には臧覇が控えているそうじゃ」
「厄介な陣立てですな。我々も兵を分けるしかありますまい」
「あはは。ただでさえ馬鹿強い呂布を相手に
兵力を分散させないといけないとは、先が思いやられますね」
「でも呂布君が籠城しているのは幸いだ。
彼とは野戦ではやり合いたくないからね。
兵の割り振りだけど、城攻めは軍師団に任せて、
夏侯惇君ら武闘派には高順君たちの相手をお願いしよう」
「おう、任せろ」
「音に聞こえた高順! 張遼! 腕が鳴るぜ!」
「泰山の臧覇君もただの山賊とはあなどれない
豪傑だと聞いている。彼の相手は――」
「劉備」
「そうだね。劉備君にも手伝ってもらおう。彼の少ない兵力でも、
臧覇君を釘付けにすることくらいはできるだろう。
大事なのは、三手に分かれた呂布軍を連携させないことだ。
彼らを孤立させ、各個撃破しよう」
~~~徐州 下邳城~~~
「曹操軍は部隊を分け、高順殿、臧覇殿の軍、
そして我々のこもる下邳城へと当てました」
「チッ。三分割してもこれだけの兵数で包囲できんのかよ。
青州黄巾軍30万を加えた兵力は伊達じゃねえな」
「jsdfk;osap989」
「このまま包囲を続けられたら、兵糧が尽きてしまいます。
その前に包囲を破り、通路を確保します。
さらに援軍を呼びましょう。ミスター袁術に頼むのです。
私が出撃します。そして敵を倒します。
その隙にミスター成廉は脱出して下さい」
「そして袁術殿に援軍を求めるのですね。わかりました」
(お人好しの呂布ならいざ知らず、袁術が兵を出すものか……)
~~~揚州 寿春~~~
「――というわけです。袁術様にぜひともお力添えをいた」
「陛下」
「は?」
「陛下ザンス。ミーは皇帝陛下ザンス。陛下と呼ぶザンス」
「失礼いたしました、袁術皇帝陛下」
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ!
――で、成廉とやら。
呂布を助けてミーに何の得があるザンスか?」
「曹操は陛下――献帝陛下を傀儡とし、
勝手に遷都を進めるなど横暴を極めています。
彼奴に対抗するため、呂布や袁術陛下が
手を取り合うのが最善だと考えます」
「フーン。周瑜はどう思うザンス?」
「悪い話ではありません。これ以上曹操の台頭を許せば、
いずれは袁術陛下の覇道の妨げとなります」
「じゃあ孫策に命じて呂布を助けさせるザンス」
「! それはおやめください。
孫策は考えなしに急激に版図を拡大したせいで、
各地で反乱を招き、その鎮圧に手一杯です。
いま孫策を江東から離せば、収拾がつかなくなる恐れがあります」
「そうザンスか。周瑜の言うことに間違いはないザンス。
孫策を呼ぶのはやめるザンス。
それに、ミーにもっと良い案が浮かんだザンス」
「良い案とはなんですか陛下」
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ。
それは……呂布から徐州を奪い取ることザンス!」
「!」
「ミーと曹操に挟み撃ちされたら、呂布もひとたまりもないザンス。
ミーはねんがんの徐州をてにいれるザンス!」
「その役目は俺に任せてくれ陛下!
浪人の俺を拾ってくれた恩返しをするぜ」
「よく言ったザンス!
楊奉は楽就、陳蘭、雷薄とともに出撃するザンス!
成廉とやらは見逃してやるザンスから、
呂布にミーの宣戦布告を伝えてくるザンス」
「……しかとお伝えしましょう」
(袁術の野心は膨らむ一方だ。
そろそろ私でも制御できなくなってきたか……)
~~~徐州 下邳城~~~
「袁術が攻めて来るだと?
成廉、てめえ失言でもして怒らせたんじゃねえのか」
「……私の力が足りなかったのだろう」
「gjsakl;9a0ssk」
「仲間割れをしている場合ではありません。
それよりもミスター曹操とミスター袁術の二人を、
同時に相手にする方法を考えましょう」
「同時に相手にする必要はない」
「誰かと思えばジジイか。
俺たちにあっさり降った老いぼれが何の用だ」
「この年齢になると外出もおっくうでな。
張飛殿に従って落ち延びる気力はなかった。
だが、この徐州と自分の身を守るためにはなんでもするぞ」
「策があるのですか」
「曹操軍は、袁術軍との衝突を避けていったん城の包囲を解いた。
あとは袁術軍を素早く一撃で片付けるだけでいい。
すでに手は打った。呂布将軍は出撃の準備をされよ」
~~~徐州 南部 袁術軍~~~
「だから先陣は俺に譲れと言っている。
お前は後ろに引っ込んでいろ」
「誇り高き官軍の先陣を務めるのは私だ。
降将ふぜいが大口を叩くな。先陣も司令官も私なのだぞ!」
「楊奉、ここは楽就将軍の顔を立てろ」
「まったく軍隊ってのは面倒くせえな。
これなら山賊やってたほうが気楽だったぜ!」
~~~袁術軍 楊奉軍 陣営~~~
「あいつら本当の陛下に仕えたこともある俺をなめやがって……」
「楊奉殿」
「なんだお前は」
「呂布将軍のもとから参った。
徐州の名士・陳珪の子で陳登という者だ。折り入って話がある」
「呂布だと? 敵の間者がぬけぬけと何の用だ」
「見れば随分と窮屈な思いをしている様子。
気楽な山賊稼業をしていた楊奉殿にとっては、
さぞ居心地が悪かろう。そのうえ袁術は皇帝を名乗り、
部下は官軍としてますます規律を求められることだろうな」
「……何が言いたいのだ?」
「呂布に寝返れ。
呂布は袁術や楽就とは比べ物にならぬほど、懐の広い男だ。
泰山の山賊である臧覇や、
張飛に仕えていた私のような者でも受け入れている」
「むむむ」
「呂布はそのうえ気前のいい男だ。
ほれ、こうして手土産も持参した。少ないが取っておけ」
「き、金塊をこんなにくれるのか……」
「今すぐ選べ。袁術のもとで冷や飯を食うか。
それとも呂布に寝返り厚遇されるか」
~~~徐州 南部 袁術軍~~~
「陳蘭! いったい何がどうなっているのだ!」
「楊奉が呂布に寝返り、楽就を殺した。それだけだ」
「それだけってお前、そりゃ一大事じゃねえか。
お、おいどこに行くんだ?」
「呂布軍が攻めかかってきてるんだ。
逃げるに決まってるだろう。
……俺はもううんざりだ。袁術に未来はない。
楊奉の言葉じゃないが、山賊にでもなるさ」
「そういうことなら俺も一枚噛ませろ。
このまま戦っても呂布に殺されるし、
逃げ帰ったら袁術に殺される」
「お前……意外と目端の利く奴だったんだな。
いいだろう、組もうぜ雷薄」
~~~徐州 下邳城~~~
「hsgkl98salsd0」
「ミスター袁術は退けました。しかし戦いはこれからです。
ミスター袁術よりもずっと手強い
ミスター曹操と戦わねばならないのです」
「高順殿も臧覇殿も善戦しているとの連絡が入りました。
呂布将軍さえいれば恐れるものはありません!」
(今回はうまく行ったが、次の相手は曹操だ。
そう何度もまぐれは続かねえよ。
この単純バカどもと運命をともにするのは危険だ……)
~~~~~~~~~
かくして呂布は袁術を退けた。
しかし真に恐るべき敵は曹操であり、危難は去っていなかった。
はたして呂布に逆転の次なる一手はあるのか?
次回 〇二六 呂布、最後の戦い




