〇一八 強襲!人中の呂布
~~~濮陽~~~
「鉄球ごときで俺に勝てると思ったか!
俺に勝ちたきゃ呂布をつれてきな!」
「くっ! これが夏侯惇か。なんという強さだ!」
「どけ高順! オレがやってやらあ!」
「張遼待つですの。
まともに打ち合ったら夏侯惇ちゃんには勝てないですの。
そんな時は彼ですの。狙撃の名人、曹性ちゃーーん!」
「任せろ萌タン! 喰らえ夏侯惇!」
「ぐわあッ! ひ、左目を射抜かれたか……」
「一騎討ちに水を差してすまぬな。
だがこれも戦いだ。――捕らえよ!」
「ちきしょう……」
~~~譙~~~
「夏侯惇が捕らえられたじゃと?」
「あはは。さすがは呂布軍、強い強い」
「ずいぶんと余裕だな。何か策でもあるのか?」
「いいえ、とんでもない。相手はあの呂布ですよ。
留守番の少ない兵力じゃ太刀打ちできません」
「……せめてここから逃げ切れる策だけでも
出して欲しいものだな」
「ああ、そのくらいならお安い御用です。典韋!」
「呼んだが? ジュンイグ?」
「いいか典韋。
この線から先に、敵を通すな。一人もだぞ」
「わがっだ!」
「じゃあ後は典韋に任せて我々は逃げましょう。
殿も徐州から戻っていると連絡が入りました。
まずは殿と合流です」
「あ、あ奴は大丈夫なのか?」
「いたぞ! 逃がすな!」
「そら典韋! 線を踏んだぞ!」
「ごのおぉぉぉぉぉ!!」
「こ、これは……短刀? 短刀を連射しているのか?」
「と、とても近づけないですの!」
「落ち着け。短刀など無限に持っているわけではない。
投げ切った所に攻め込めば……」
「ぞらぞらぞらぞらぞらぞら!!」
「……今度は石ころを投げ始めたぜ。
しかも短刀と変わんねー威力だ」
「い、石が無くなったら我が軍の兵を投げています」
「gfkkl;f778zcx!」
「彼に関わるのはやめなさい! 彼を迂回して進むのです!」
「あれ? えーど。
線のずっど向ごう側を通られぢゃっだら、どうずんだろ?
……ジュンイグに聞いでごよう」
~~~譙 呂布軍~~~
「今日は大活躍だったな曹性!
あの夏侯惇を捕らえちまうなんてよ!」
「ひゃっひゃっひゃっ。夏侯惇なんて大したことなかったぜ。
俺が左目を射抜いてやったら、ヒイヒイ泣いてやがった!
そう考えると夏侯惇に苦戦してた高順も、
実は大したことないんじゃねえかって――」
「ゲェェッ!?」
「んん? なんだよ、変な声を出して後ろを指差して。
後ろに何がいるってん――」
「左目を返せ」
「ば、バカな!? どうやって牢屋を抜け出したんだ!」
「抜け出すのなんかどうってことはねえ。
お前を探すほうが骨が折れたぜ。
――で、誰がヒイヒイ泣いてたって?」
「た、助けてくれええっ!!」
「お、おい、俺を置いて逃げるなよ。や、やめろ夏侯惇。
ヒイイイイイイイイ!!」
「左目を引っこ抜いただけで泣き叫んでんじゃねえよ。
……ったく。死にやがったぜこいつ。
目ん玉一つがそんなに痛いかねえ」
~~~譙 曹操軍~~~
「僕が戻るまでよく持ちこたえてくれたね。礼を言うよ。
なあに、奪われた城は取り戻せばいい。被害が最小限でよかったよ」
「…………」
「なんだい夏侯惇君。
男前になったからって、それを見せつけないでくれたまえ」
「俺はもとから男前だ!」
「冗談だよ、そう怒るな。
自分で脱出して、ついでに左目の仇も討ってくるなんて
さすが夏侯惇君だ」
「フン。そんなことより呂布軍はどうする。
俺を捕らえるような強者ぞろいだぜ」
「張邈」
「そう、厄介なのは呂布軍の強さだけじゃない。
呂布軍が張邈君の大軍を擁していることだ」
「それならば、張邈と呂布を切り離しましょう。
もともと張邈は殿と同盟を結んでいましたし、臆病な性格です。
今回もきっと、呂布に無理強いされて兵を挙げたのでしょう」
「離間の計か。ワシの得意とするところじゃな。
任せてくれれば、百の計略で
張邈と呂布を疑心暗鬼に陥れて見せよう」
「いや、それには及ばない。
ここに来る途中に、北の空を見てきた。
僕らが動かずとも、天が張邈君の裏切りを許さないようだ」
「どういうことだ?」
「つまり、これから忙しくなるのは
君や曹仁君、夏侯淵君じゃない。韓浩君、君だよ」
「俺が? ……そうか、読めたぞ。イナゴだな」
「そう、イナゴの大群が北からやってきているんだ。
イナゴは張邈君の兵糧を食い尽くすだろう。
だが僕らは屯田策で大量の米を蓄えておいたし、
もともと民兵の青州黄巾軍は、イナゴの害をさほど受けはしない。
僕らが手を下すまでもなく、これで呂布君の快進撃はおしまいさ」
~~~譙 呂布軍~~~
「…………jhfhsfal;990」
「私の故郷にはこのような虫はいませんでした。
彼らはまるで悪魔です。
それともこれは、天が私に怒っているのでしょうか。
ミスター張邈を無理やり動かし、戦いへと向かわせた私にです」
「おいおい大将、しっかりしてくれよ。
これは天意なんかじゃねーよ。
単なる虫だ。虫がお天道様の使いのわきゃねーだろ」
「ああ、虫がたまたま通りかかっただけだ。
そこに誰かの意思は介在していない」
「もともと小勢の俺らは、
多少の兵糧を失っても影響は無いけどよ……」
「……………………」
「……………………」
「立ったまんま失神してんなこりゃ」
「無理もない。張邈殿らの軍は壊滅的状態だ。
仲間同士で兵糧の奪い合いも始まっているらしい」
「もう張邈ちゃんたちの兵は借りられないですの。
ぼくらだけで曹操ちゃんと戦うことになるですの」
「黒山賊だって、俺たちだけで倒したんだ。同じことだろ」
「fghjsdkals;;999」
「いいえ。それは違います。
ミスター曹操とブラックマウ……黒山賊は比べ物になりません。
ミスター曹操はずっと強いのです。
我々だけでは勝てないでしょう」
「どこかに落ち延びるしかあるまい」
「つくづく根無し草だなオレらは。
で、今度はどこに行くよ?」
「ldghalsda98810」
「徐州の領主はとても心の広い方だと聞きました。
彼を頼りましょう」
「なるほど。我々が曹操の背後を攻めたおかげで、
徐州が救われた面もあります。受け入れてくれるかも知れませんね」
「mvklzxiaso81cvjk」
「ミスター張邈、ミスター張超、とてもお世話になりました。
あなた方ご兄弟の親切は忘れません。どうかご無事で」
「……………………」
「……………………」
~~~徐州~~~
「だからこの予算はこっちに回して、ここを削ればいいのよ。
まったく帳面も満足に書けないのかしらここの連中は」
「徐州に来て以来、張さんはイキイキしとるのう」
「姐御肌の世話好きな性格だからな。
徐州はだらしない連中ばかりでうれしいんだろ」
「曹操軍が引き上げてからも、
なんやかやと手伝ってるんじゃから驚くわ」
「劉備殿! 張飛殿! 陶謙様がお呼びです」
「おう、陶さんは寝込んでたけど大丈夫か?」
「実はそのことで……とにかくお越しくだされ」
~~~徐州 陶謙の寝室~~~
「ほっほっごほげほ。年は取りたくないものだな、劉備殿。
単なる風邪をこじらせて、このザマじゃ」
「おいおい、起き上がらんで寝とくんじゃ。
それで、わしらに何の用じゃ」
「他でもない、私が死んだ後のことだ。私はもう長くあるまい。
だが曹操は引き上げただけで脅威は去っておらんし、
何より私には跡継ぎがない。そこで、だ」
「そ、そこで?」
「誰にこの徐州を任せればいいかを、私はつぶさに観察してきた。
皆をまとめる統率力、豊富な知識、曹操の大軍にも引かない武勇、
その全てを兼ね備えたのは一人しかいない」
「いやあ、そこまで褒められたら照れるのう」
「私の亡き後、どうか徐州の刺史になってくれ……張飛殿」
「 」
「………………え? アタイ?」
「まあ、そりゃそうだろうな」
「はっはっはっ。張飛殿ならば我々に異存はありませんよ」
「徐州は張飛殿に救われたようなものですからな」
「陶謙様、ご安心下さい。我々が張飛殿を支えます」
「………………」
「なんだいなんだいアタイをそんなに持ち上げちゃってさ。
アタイはそんな大した人間じゃありゃしないよ。
でも、そこまで言うんだったらアタイも女さね。
腹をくくって、この徐州を守ってやろうじゃないの!」
「………………」
「めでたい」
「おっ。関羽、やっとまともなこと言ったじゃないの!」
「………………わしが張さんの家臣に……」
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かくして張飛は新たなる徐州刺史となった。
一方、献帝は董卓に続き李傕らによって傀儡の座についていた。
だが幼き皇帝は、胸にある決意を秘めていた。
次回 〇一九 献帝脱出




