〇一六 流浪の呂布
~~~常山~~~
「く、くそっ! 黒山賊がこんなに強いとは……。
後ろだ! 後ろに向かって全速力で走れ!!」
「見えます。見えます。
袁譚までの位置、右30度。距離200」
「張牛角様! 今です!」
「うおおおおおお!!! 行っけえええええ!!!!」
「何!? 部下をぶん投げただと!?」
「袁譚様! 危ねえ!!」
「シャオッ! シャオッ!!」
「ぎゃああああああっ!!」
~~~常山南部 袁紹軍~~~
「むうう……。
名族の血を引く袁譚をたやすく破り、
麴義を討ち取るとは、黒山賊はなんという強さだ。
公孫瓚め、厄介な奴を味方につけたものだ」
「10万の兵力に加え、怪力無双の張牛角、
千里眼の李大目、両手鎌の張燕か。
まるで万国びっくりショーだな」
「閣下、都を追われた呂布が訪ねてきました。
なんでも家臣に加えて欲しいとのことです」
「り、呂布だと? じ、冗談ではないわ!
董卓に続いて名族の首も奪おうと言うのだろう。
すぐに追い返せ!」
「待て待て閣下。これはいい機会だ。
呂布に黒山賊を攻撃させよう。
呂布が勝てばよし、負けても我々は痛くもかゆくもない」
「ふむ。お前もたまにはマシな策を立てるのだな。
呂布には家臣になりたければ黒山賊を倒せと命じてこよう。
それでいいですな、閣下?」
「う、うむ。名族もそう思っていたところである」
~~~常山南部 呂布軍~~~
「大将、これは袁紹のヤローにていよく利用されちまったぜ。
黒山賊なんて放っぽっちまってよ、別の誰かを頼ろうや」
「kkishkjps@」
「ミスター張遼が怒るのもわかります。
ミスター袁紹はずるい人ですからね。
でも、私は黒山賊と戦おうと思うのです。
なぜなら彼らは人々を困らせています。
困った人々を助けるために戦いましょう」
「はっ。あいかわらず人のいいこっちゃ……」
「それでこそ呂布将軍だ。
――すぐに出陣の準備を整えよ!」
「はい。私は一隊を率いて敵の背後に回ります」
「ならば俺は騎兵で前に出て敵を引きつけよう」
~~~常山~~~
「性懲りもなくまた現れたか。今度は俺様が相手だ!
毒の刀を喰らえッ!!」
「jkladskfl;98lkzl;;;」
「昔の人は言いました。
『当たらなければどうということはない』と。
とてもいい言葉です」
「げええっ!? お前は呂布!? ぐわあッ!!」
「袁紹め、呂布を助っ人に呼びおったか!
だがしかし、我々のコンビネーションは破れん!
行くぞ張燕! うおおおおおお!!」
「させるかっつーの!! おらあっ!!」
「なんだと!? 俺をキャッチした!?」
「張遼、そいつを寄越せ! この鉄球にくくりつけて投げ返す!
ふんッッ!!!」
「わああああああ!! 避けてください牛角様!!」
「ぐおおおおおおッ!?」
「な、なぜ避けなかったのですか牛角様!」
「フン。かわいい部下を見捨てられるものか……。
張燕、後は頼んだぞ……。ぐふっ」
「今だ! 黒山賊を突き崩せ!」
「牛角様の築いた黒山賊を全滅させるわけにはいかん。
ここは退くぞ! 李大目、お前も逃げろ!」
「呂布軍接近中。注意。注意。
呂布軍までの距離、100。90。80。7……。
………………致命傷。致命傷。活動……停止……」
「背後に回った私までは見えなかったようですね。
さあ、後は張燕だけです。追撃しましょう」
~~~常山南部 袁紹軍~~~
「な、なんとすさまじい連中だ。
たったあれだけの兵で、黒山賊を壊滅させてしまったぞ」
「呂布と黒山賊が共倒れになればいいと思っていたが……
まさかこれほどまでとはな。
閣下、かくなる上は呂布も殺してしまおう。
奴らはいずれ害となる存在だ」
「う、うむ。名族は許可する。よきにはからえ」
「戦勝祝いの酒宴を開くと言って、呂布を招こう。
その席で顔良、文醜らに斬らせるのだ」
~~~常山南部 袁紹軍 宴会場~~~
「123kll;dlllasioopk」
「みなさん、ミスター袁紹が素敵なパーティーを開いてくれました。
今日はどうぞ旅と戦いの疲れを癒してください」
(……魏越)
(ああ、におうな。少し周囲を調べてみよう)
(わかった)
「襲撃の準備はできたか? 油断はするなよ。
相手はあの呂布だ。二重三重に包囲するんだ」
「フンガー! フンガー!」
「やはり、な。俺が奴らの注意をそらす。
お前はその間に呂布将軍らを逃がしてくれ」
「了解だ。……死ぬなよ魏越」
「待て!! 貴様らの陰謀は見破った!
俺がこの場で血祭りにあげてやる!!」
「チッ、勘のいい奴だ。だが死ぬのはお前と呂布の方だ!!」
「フンガーーーー!!」
~~~常山 南西部~~~
「…………kghjdkll」
「私は間違っていたのでしょうか。
ミスター袁紹に攻撃され、ミスター魏越を失いました。
私の向かう所では争いが起きるのです。私が原因なのでしょうか」
「そんなことはありません!
呂布将軍、あなたは常に正しいことをしています」
「おうよ。アンタはただ、人が良すぎるだけだ。
頭にバカが付くくらいにな」
「我々はあなたに従う。あなたは自分の信じる道を進めばいい」
「私もそうです。いつだってあなたの力になりますよ。
もっとも、私には通訳するしか能はありませんが」
「………………アリガト。
アリガト、ミンナ……」
~~~徐州西部~~~
「ま、待ってくれ! 何をするんだ!
ぼ、僕は曹操の父だぞ!」
「はーはっはっはっ!! そんなことは知ったことか!
俺様の名は張闓! 徐州刺史・陶謙の命によりお前を殺す!
はーはっはっはっ!!」
「うわあああああああああっ!!!」
~~~徐州~~~
「ほっほっほっ。
張闓が護衛させていた曹操の父を殺した?
そんな馬鹿なことがありますか。誤報ですよきっと」
「あっはっは。その通りです。
あの品行方正な男がそんなマネをするはずがありません」
「……でも、もし本当だとしたら?」
「……………………」
「……………………」
「……………………それは、一大事じゃのう」
「張闓は袁術のもとへ逃げたと聞いた。
おそらく袁術の差し金だったのだろう」
「曹操に恩を売ろうとしたのが最悪の結果になってしまいましたね。
父親を殺された曹操は仇討ちに乗り出すことでしょう。
陶謙様、すぐに迎撃の準備をお願いします」
「説得……に耳を貸すはずもないか。
やむをえん、孫乾。各地の諸侯に援軍を頼んでくれ」
「かしこまりました」
~~~青州~~~
「……なるほど。徐州を旅行中だった父上が陶謙君に殺されたか」
「曹操、親父さんの仇を討ちたい
気持ちはわかるが、よく考えるんだ。
この話、裏に何かありそうだ」
「父上のことは置いておいて、たしかに腑に落ちないね。
袁術君か誰かが絡んでいそうだ。
でも袁術君に、こんな回りくどい策を立てられるのかな」
「そうか、袁術の仕業なのか。
ならば陶謙の次に袁術の首を挙げるぞ!」
「お主はあいかわらずせっかちじゃな。
まだ陶謙を討つとも決めておらんのだぞ」
「いや、青州黄巾軍を手に入れた
僕らの力を見せるまたとない機会だ。陶謙君は討とう」
「た、たしかに父上の仇討ちという大義名分は立ちますが……」
「殲滅」
「そう、やるなら殲滅だ。僕に歯向かうもの全てを叩き潰す。
僕に逆らったらどうなるのか思い知らせるような、
そんな戦をするべきだね」
「や、やるのか殿!」
「やろう。曹操の名を天下に知らしめるんだ。
董卓君に負けた頃の僕とは違うんだということをね……」
~~~揚州~~~
「はーはっはっはっ!! やったぞ袁術様!
曹操の父を殺し、陶謙に濡れ衣を着せてやったぜ!」
「長年の間、ミーのために陶謙に仕えてご苦労だったザンス!
さあ、褒美をくれてやるザンス」
「………………」
「………………」
「………………」
「はーはっはっはっ!! はーはっ……。
ええと、袁術様、俺の周りに集まったみなさんは……?」
「ユーに死という名の褒美をくれてやる使者ザンス」
「うぎゃああああああ!!」
「……これでよかったザンスか?」
「フッ。上出来ですよ。
これで曹操は徐州を攻めてくれます。
その隙をつき、徐州を奪う策を立てましょう。
そうそう、張闓の首を曹操のもとに届けるのをお忘れなく。
お父上の仇が我々に庇護を求めてきたから、殺しましたと言ってね」
「ふーん。細かいことはよくわからないザンスが、
周瑜の言うとおりにすればいつも得するザンス。
今も褒美を払わなくて済んだザンス!」
~~~~~~~~~
かくして呂布は放浪を続け、曹操は仇討ちの兵を上げた。
周瑜の操りを曹操は自らの力を示す好機に変えられるのか?
そして狙われた徐州の運命はいかに?
次回 〇一七 曹操危機一髪




