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6年制高校の超能力者  作者: ZIP
前半
19/20

PK指数測定Ⅷ

早朝、滞在先のホテルから月面まで移動し、睡魔に襲われそうに

なりながら、測定を終えた第一班に続いて俺たち第二班が

コクーンという宇宙船へ乗り込んだ。

「これよりPSI第二班9名の能力指数測定を開始する。担当の磯部だ。

なお、測定は席順に行う。既に離陸を開始しているが質問があったら

なるべく早めに言ってくれ」

「はいはーい、質問でーす。これから行くのはどこですかー?」

「よく元気に起きてられるわね心愛」

「全くだよ」

香織とマイクも、というか心愛以外は短い睡眠時間のせいで

あまりよろしい気分ではない。

「これから向かうのは測定場所、都市から見て裏側に

位置するエリアだ。で、測定方法も聞かれそうだから先にいっておく。

突飛なことと思うかもしれんが測定機器開発のための試験だ、

簡単に言うとだな、そろそろ見えてくる直径10メートル程度の

小惑星やらを破壊してもらう。その破壊の程度で指数、

平たく言えば超能力のレベルを測定する」

もう驚かない、何があっても驚かないぞ……

「測定機器が開発されれば、小惑星をかき集めなくても済むし、

ここまで壮大なことをやらずに地上、月面でなく地球上のことだが、

凄まじくコンパクトに測定ができるようになる。今回の測定で、

測定機器の最終調整のためのデータを得るのだ。そうだ、

この測定でかかった1人あたりのコストだが……」

操縦士は小惑星を望む分厚いガラス窓に指で数字を書いて見せた。

単位がマネーだとすれば、日本円だと、高級車を一台買えるほどの

大きな金額だった。国家予算ってすごい、国家じゃなくて自治政府だけど。

「帰りの燃料が無くなる前にさくさく進めるぞ。まず1人目、

天日安奈。方法はなんでもいい、一番手前の小惑星を破壊せよ」

「は、はい!」

形から入るタイプらしく、両手を広げて小惑星の方へかざした。

「行きますっ!」

そう宣言して開いた手に力を入れると、小惑星から光が発せられた。

その光はやがて小惑星全体をベールのように包み込み、収束し、

小惑星だったものはその体積を格段に減少させられ、

月面に自由落下を開始した。自由落下を見届けた

その後も順に測定は進み、最後の俺の番が回ってきた。

「ラストは真崎界斗、もう説明しなくても分かるよな。 

時間が押してるから一気にやってくれ」

一気にねえ……俺以外のメンバーは方法こそ違えど、

小惑星はある程度の質量というか体積を残していた。

つまり、小惑星の破壊の程度で指数が決まるということは、

完全に破壊してしまえばとてつもない値が出るんじゃないか?

「どうした? 一気にドーンとやれ」

「了解っす」

さて手をかざしたはいいけどどうするか、周りから徐々に

崩していくかあるいは……

「ん? なんだこれは。小惑星が縮んでいる……?」

「うっわー、なにこれー」

「界斗、さっさと終わらしてくれない? 月の裏側に来たから

時差ボケで私たち眠くてしょうがないのよ。心愛を除いて」

宇宙空間に時差も何もないと思うが、超能力を一気に

使ったからなのだろう、心愛以外はあくびをしながら

ぐったりしている。外の現象を見ているのも、驚いてるのも

測定担当の人だけのようだ。

「えっと、担当の磯部さんでしたっけ。そろそろ危なくなるのでここを

少し離れたほうが良いと思います」

「何を言っている。観測するのが俺の仕事だ。続けろ」

なら遠慮なくやらせてもらおう。危険な状態になったら

おそらく月面基地から連絡が入るだろうし。

小惑星の地表に質量が非常に高い物質の生成を続ける、

そろそろ小惑星が耐えられなくなってくるはずだ。

『測定第二班へ、こちら月面観測基地遠隔観測モニター』

「どうした」

『貴船の近くより膨大なエネルギー反応が確認されました。

このままではそのエネルギーが発する重力に巻き込まれる

可能性があります。至急、その宙域から退避してください』

「こちら第二班、現在PK指数測定中のため異常なし」

担当の磯部さんは何をいまさら言っているんだという表情で

通信機に答える。

『こちら観測モニター、先ほどの測定で観測されたエネルギーとは

桁が違います。警戒を推奨します』

「こちら第二班、了解」

桁が違う? いったい何を言っているんだ。危険だと思ったのは

破片が四方八方に飛び散るからであって、それは観測が可能なはず。

ほかの要因は想定外だ。しかし測定中に行使をやめるわけにも

いかない、続けよう。

「うーむ、どこまで小さくなるのだ……」

そろそろだ、後もう少し超質量の物質を生成し続ければ、

崩壊が起きるはずだ。

『こちら観測モニター、今すぐ退避してください! 

繰り返します。こちら観測……』

「ん、電波障害か? それともまた磁気嵐か?」

突如として通信が途絶えたようだ。なぜまた磁気嵐が

発生したのかは見当もつかないが、小惑星破壊の見当はついていた。

あとは自然に任せて小惑星が崩壊するのを見守るだけだ。

月面に隕石的なものが降り注ぐだろうけど、観測基地は

頑丈だ。それに、遠隔操作。ほかは無人の月の裏側だ。問題ないだろう。

「おいおいなんだこれは、通信機器の次は推進エンジンが

どうかしちまったのか? いや、計器故障の可能性もあるな。

全く、どうなってやがる」

俺の前に測定を終えたみんなはもう寝ていた。

今度はエンジンか計器に不具合が出たらしい。心なしか、

小惑星のほうへ機体が動いているようにも感じられる。

『警告、気体温度が上昇しています。熱源体から安全な

距離まで自動退避します』

機体のAIが自己判断で機体を退避させる、そこまでの熱を

発するものなのかは分からないが、そのときは訪れた。

そしてそれは、俺の想定とは全く異なるもの、

当の俺自身も困惑し、信じられない事が起きた。

「お、おいおい」

「な、なんだよこれ……」

『こちら観測モニター、測定を中断して今すぐ帰還しなさい! 

正体不明の熱源体が発生した、今すぐ発進場所へ帰還せよ!』


小ぶりの小惑星があった場所には、直視できないほどの光と、

遮蔽された船内が程なくしてサウナになるほどの熱を発する

何かがあった。直視できない以上、その正体は分からなかった。

しかし、通信機からの怒号でそれを知った。

『こちらスペースターミナル、何を言っているのか

わからないと思うが聞け。貴船の付近で非常に小さな恒星が

発生した。わけが分からないが現に月に向けて航行中の定期船が、

わずかながら温度上昇を記録している。月面の観測基地からは

応答がない、至急、月の表側に帰還せよ』

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