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6年制高校の超能力者  作者: ZIP
前半
13/20

PK指数測定Ⅱ


「パスポートに着替え一式、充電器、カメラ、電子マネーカード……

こんなもんかな?」

「充電器って、滞在は1週間程度なんでしょ?

普通に使ったら無くならないと思うけど」

「普通に使ったら、な」

「いっそ、スティックホン置いていったら? 使いすぎは健康によくないわよ」

「き、緊急連絡用に必要だろ?」

電子マネーカード、日本で使われる円、主にアメリカで使用されるドル。

国ごとに通貨が異なるように、宇宙空間で使用される独自の電子通貨が

存在する、それがマネーだ。1マネーはおよそ100円と同じ価値を持ち、

現在では主にスペースターミナル内や月の都市、惑星旅行の支払いに

使用されている。100円程度と同じ価値を持つマネーだが、

宇宙の物価は地球とは異なる。例えば水だ。宇宙で液体の真水は

月内部の氷から主に生産されている。火星から採取して輸送する計画も

存在するが、輸送コスト面から実現はしていない。

「それで、説明会の会場はどこなの?」

「えーと、しおりによると……二分試験飛行場? どこだそれ」

「試験飛行場? 空港じゃなくて?」

「うん、確かに試験飛行場になってる」

「そこは空港の開港に先駆けて設置された超音速航空機の工場があるところよ。ここからだと歩いて軽く数十分はかかるかしら。集合場所は?」

「各寮のエントランスだとよ、さすがに送迎付きか。おっと、

そろそろ出た方がよさそうだな」

「そうね」

外出するには廊下に通じる香織の部屋に移動する必要があり、

それはその都度部屋へのドアを開けることで解決する。

ところが、着替えてるだなんだで鍵を閉められ、さらに持ち前の

天然さで解錠を忘れられては外に出ることが出来なくなる。

故に、施錠されることを未然に防ぐためにも外出準備のように施錠の

必要がないときは、香織の部屋で用を済ませることにしている。

「はうっ」

オートロック式の玄関ドアを開けようとドアノブを回して力を入れると、

水風船のような、それよりかは手に馴染むような弾力のある

柔らかい何かに当たった。

「界斗、今の声なに?」

頭一つ分の隙間から廊下に目をやると……

「ご、ごめん天日さん」

「ドアスコープくらい見てくださいよぉ」

ほのかに目を赤くした天日さんと、説明会に参加する

高橋雄二先輩がそこにいた。

「マイハニーは残念ながらお留守番さ。盗さ……

記念写真が撮れなくて残念だぁぁぁ」

「この変態っ!!」

S気のある奥さん(高橋奈々先輩)に踏まれ、悦を浮かべる変態を

降下するエレベーターの窓から眺め、俺たち3人は一足先に

エントランスへ向かった。

「全員集まったね、ライト」

ダブルクリックをする勢いで石田先生が両手を小さく叩く。

「それでは、連絡した通り試験飛行場へ向かいます、が」

なんだ?

「落石が発生したため、アクセス道路が通行止めになりました。

政府で何とかするみたいなのでこのまま政府庁舎まで歩いてください。

以上、オーライ?」

何とかすると言っても、落石を除去する以外に対処法が

思い付かないのだが。

「ああ、言い忘れてた」

エントランスの自動ドアから外にでようとするときだ。

「今日の最高気温は季節外れの41度だ。熱中症に気を付けろよ」

無慈悲に開く自動ドアから熱風が流れ込んできた。


「暑い、溶ける……」

「通学路の2倍の距離をお疲れ、生徒諸君」

距離にしたらさほど大した事はない政府庁舎、長方形に台形、

その上に長方形そして正方形の積み木を積み上げた様な幾何学的なビル

までの道のり。それが季節外れの高温を記録した今はとても長く感じた。

「生徒諸君、これから地下鉄で試験飛行場まで行きます。何か質問は?」

地下鉄だと!? ならなぜ俺達は校舎にある出入口をスルーして

ここまで歩かされたんだ……

「おや、どうして校舎の出入口を使わなかったのかという顔をしている

生徒がいるね。その答えはこれからわかります。では、

9人ずつエレベータに乗ってください」

第一と第二寮の住人は既に試験飛行場にいるようだ。

落石が起きる前に運良くバで到着したのだろう。まさか二分丘の住人が

地下鉄を全くと言っていい程使わず、ほとんどが丘と麓を結ぶバスを

利用していたとは意外だ。もっとも、試験飛行場は丘の上にあるが。

『セキュリティシステム解除を確認しました』

エレベータの扉が閉まると同時に、自動案内がエレベータ内に流れた。

「これから行くのは地下鉄の政府庁舎駅ではありません。試験飛行場まで

直通する政府所有の専用線のホームに向かいます」

まあ試験飛行場も政府が建てたのだから、専用線くらいあってもさほど

不思議でもないか。現に驚いている生徒は見当たらない。

『地下8階、管理区域です』

「一列に前へ進んで、扉の前でとまって」

俺たちを案内してきた政府の人がICカードのようなものを何も無い壁へかざす。

『認証、二分政府宇宙庁職員。ロックを解除します』

すると、ドアノブが付いているので押すタイプと思われた扉は

横にスライドし、上下左右あたり一面の壁天井が病院の通路のような

無機質で白い色をする通路が現れた。

「それでは私に続いて出来るだけ早めに進んで下さい。

あと30秒ほどで自動施錠され、壁から出てくる機関銃によって

私共々ハチの巣にされてしまいます」

そういいながら指差す方向には怪しげなハッチがあった。

このあと、悲鳴を上げながら全力疾走する生徒で、

狭い通路はちょっとしたパニックになった。


それにしてもなんて物騒な……

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