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第3話 あなたのお名前は?

連日投稿している俺って…クリスマスなんて俺にとってはあってないようなものだ!

 猫の捕獲に成功してから数日が経ち、リヒトは毎日Gランクの依頼をこなし、毎日1銀貨稼いではそれを使う生活を送っていた。そして今日も今日とて、彼はギルドに依頼を受けに赴いていた。

 

 

 

 第3話 あなたのお名前は?

 

 

 

「んー……?」

 リヒトは毎回のように掲示板とにらめっこをする。しかし、今日はいつもと違いその横にも一人にらめっこをしている人物がいる。

 

「ん?」

 リヒトの人間関係は希薄である。知り合いと言うと、ラーガスと受付嬢くらいしかいないだろう。その理由はリヒトの来る時間帯である。

 

 冒険者とは、割と自堕落な者が多い。大抵の者は昼過ぎくらいにギルドにやってきて依頼を受けたり、酒を飲んだりする。悪いと朝から酒を飲んでいたりする。リヒトの来る時間帯は朝。即ち、人が少ないのである。元々、リヒトのような年齢で冒険者になる若者は少ない。冒険者になるくらいならもっと他の職に就いたほうが両親も喜ぶし、きっと自分の財布も喜ぶだろう。

 

 しかし、リヒトの横にいる人物は明らかリヒトより若い。そして、少女である。その横には一匹の銀狼が立っている。

 

(銀の狼……毛並み…モフモフ!)

 そしてリヒトは思い出した、数日前抱きついたあの感触を。

 

「おぉ!お前は!あの時のモフモフ!」

 そうして、また狼は嫌々することになったのだった。

 

「おぉ!この感触!間違いない!」

 もう周りなどガン無視である。既に自分の世界に入り込んでしまい、狼はそれに巻き込まれていく。

 

「あ、あのぉー……」

 少女はとてつもなく困ったことだろう。否、困っていた。

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

「おっほん……本当にすみませんでした!」

 額を床にこすりつける勢いでリヒトは土下座している。その相手は……先ほどの少女である。

 

「あ、あの。私は別に気にしてないんで」

 そう、彼女は気にしていないだろうが、狼のほうはどうだろうか。

 

「だから、あの、ギンに謝ってください」

 そう言って、自分の相棒である狼に前に出てくるように指示を出す。

 

「おぉ。お前なかなか利口だな、ご褒美に撫でて……すいません!しませんから噛まないでー!」

 手を差し伸べようとした手に噛み付こうと口を開き牙を向く狼ことギン。それから、神速と言わんばかりの速度で後ずさるリヒト。通常時の何倍の速さだろうか。

 

「もう!ギン、だめだよ!」

 そして、それを叱る少女。くぅん、と項垂れる狼はリヒトを恨んでいるに違いない。しかし、どう考えてもリヒトの自業自得である。

 

 気がつくとリヒトはすでに再び掲示板に向かい唸っていた。

 

「あの。今日はどの依頼を受けるんですか?」

 そして少女も再びリヒトの隣に立ち、一緒に掲示板を眺める。

 

「そうだなー……今日は、これでいいか」

 そうして取ったのは『店の整理整頓のお手伝い』であった。

 

「お店の手伝い……ですか」

 

「あぁ、手伝いだ。楽そうでいいだろ」

 そう、リヒトは大変怠け者である。楽な方法で必要な分だけ手に入れる。そこらにいる大志を抱き、栄光を狙うような輩とは大部違う部分がある。

 

 そして、今日の依頼をなぜか毎回同じ受付嬢の所に報告しにいこうとすると、少女も付いてくるではないか。あら、これ不思議と思いリヒトは尋ねる。

「どうしたんだ?自分の依頼とかないんか?」

 

 少女はその一言に反応し肩がびくりの跳ねる。そしておずおずと体の前で指を弄りながら。

「あ、あの。よ、よろしければなんですけど…そ、その依頼一緒にやってもいいでしょうか?」

 しかし、最後にはちゃんとリヒトの顔を少し見上げ、別にふざけている訳ではないということが読み取れる。

 

 確かに、この依頼。人数制限がされていない。されていない限り、一人だろうと二人だろうと十人だろうと受けることができる。しかし、その場合のデメリットは報酬の山分けである。

 

(んー…報酬が減るのは少し嫌だ。でも、相手は少女、しかも『美』…更にモフモフが付いてくる。あぁ、悩むな、迷うなー…)

 しかし、最後には「いいよ」と了承した。少女は彼の内なる葛藤を知ることはなかった。

 

「あ、報酬はいりませんよ。この前、助けてもらったお礼です」

 笑顔が眩しいと言わん限りの笑みでリヒトを見上げながら言った言葉は、彼の葛藤は水泡と帰した。

 

 

 

 そんなこともあり、二人でカウンターに向かうと、やはりいつも通りの受付嬢が出てくる。

 

「ご要件はなんでしょうか?」

 

 

「Gの107番、二人でお願いします」

 依頼を受けるときにサインする用紙、実は二種類ある。個人用と、パーティー用である。文字通り、個人用は一人で依頼を受ける場合、パーティーとは多人数で受ける場合の用紙だ。ということで、今回は初めてパーティー用の用紙を記入することになる。

 

「リヒトさんって言うんですか」

 そこで初めてお互いの名前を知ったことを知る二人であった。

 

「ユカナ・キサラギ……変わった名前だな」

 率直な意見である。しかし、そんなことにもユカナは律儀に答えてくれた。

 

「あ、私の住んでいた村特有の名前らしいですよ?だから、あんまり聞いたことないんだと思います」

 この世界まだ村社会などの閉鎖的社会が存在する。いや、いつの時代も存在するが。

 

「へぇ…」

(帰ったらどこの村か爺に聞いてみよう。爺なだけに無駄に知識があるからあの爺)

 

「じゃあ、行ってきますねアリアさん」

 そう言い、ユカナは受付嬢、基アリアさんにお辞儀をすると「いってらっしゃいませ」とお辞儀を仕返してくる。当然、リヒトは知らないことだが。

 

 その後、目的の店にたどり着くのに数十分かかり、やっとの思い出たどり着いたら真っ先にこき使われ、さんざんな一日であった。余談であるが、ユカナは接待、リヒトは力仕事と、扱いの差があったのはしょうがないことだろう。

 

 

 そして、その帰りのこと。

 

「大丈夫ですかリヒトさん?」

 もう、腕を上げることも億劫であるという感じに疲れ果てたリヒトを心配するユカナ。ラーガスなら今のリヒトを見たら大爆笑することだろう。

 

「あ、あぁ…大丈夫。でも、モフモフさせてくれたら…すいません。何もしないからもう勘弁してください」

 懲りない彼であった。そんな穏やかな雰囲気でギルドに歩いている時のことである。

 

 

「おい、ごらぁ!何人様にぶつかってんだこの野郎!」

 と、まぁ数日前に聞いたことのある声が通りに響く。その声が発せられた場所に全員の視線が集まる。またしても、3人の男たちである。

 

「す、すみません!」

 しかも、今回も相手が女性。しかし、前回と違い、それは獣人であった。

 

 この世界。いろいろな人種がいる。人間、獣人、竜人、エルフなどが代表的だが、獣人のなかでまた多くの種族がある。これらの人種の関係としては、エルフは竜人とは友好的。竜人は人間と獣人に無関心。エルフは人間に無干渉の者が多く、獣人には少しマシな対応だ。最後に獣人だが、獣人は人間に虐げられている。人間とは排他的な種族である。自分たちと似ている、しかし少し違うからこそその反応は凄まじい。竜人にか関しては、強すぎる力故、敬われることが多い。

 

「あぁ?誰の許可とって、この道歩いてるんですかぁ?はっきし言って邪魔なんだよ!この家畜が!」

 流石にここまでするのは過激派というか、少数であることは確かである。

 

 しかし、少数なだけで他の大多数もそこまで獣人を好む者はいない。故に、観客は干渉することはない。仮に間に入ったとしても自分に矛のさきが向けられるのがオチなのでやる馬鹿は少ないだろう。

 

 

「やめてください!」

 確かめてみると、あらびっくり。声の発生源はリヒトのすぐ横からだ。ユカナである。

 

 ユカナに視線が行き、その横にいるリヒトにも行く。

 

(もう……なんでこうなるかねー)

 内心、嫌々なリヒトであった。

 

 男たちもユカナを見て、そしてリヒトを見る。リヒトは男達にを睨むように一瞥する。結果、情けなく逃げる男達。

 

 獣人に駆け寄ろうとするユカナの腕を掴み止める。そして、強引に引っ張りその場から離れる。訳が分からない、と言った風な表情を浮かべるユカナはされるがまま、移動させられるのであった。

 

「な、なんですか?」

 彼女の顔は困惑で満ちていた。ユカナからしてみれば、助けようとしたのを邪魔されただけだ。

 

「あぁ言うことはやめたほうがいいぞ」

 

「なっ!」

 冷淡とリヒトが放つ言葉は、ユカナを驚愕、失望させるさせるのには十分であった。

 

「では、リヒトさんはあのままでよかったと、そう言っているんですか!」

 ユカナの思考では理解できない。助けるのは当然。人間も獣人も同じ生物であり、命とは比べることの出来ないもの。

 

「別にそういう訳じゃない…が、やめたほうがいい」

 リヒトは彼女が理解しないことを分かっている。

 

「なんで!なんで、あんなことするんですか……なんで…仲良くできないんですか」

 最後の方は俯いて、少し声が震えてしまっている。

 

 少しの間沈黙が空間を満たす。その沈黙を破ったのはリヒトであった。しかし、いつもの彼と違い、纏う空気はどこか冷たい。顔から笑みが消えていた。

 

「弱いからだ」

 たったの一言。

 

「弱いから虐げられる」

 冷たく、どこまでも残虐な言葉。

 

「力がないから虐げられる」

 しかし、それが現実。それは誰よりもリヒトが知っていた。

 

「神様って言うのは不公平なんだよ」

 全員が平等であることなどない。平等を唱っている人々はただ理想を抱いているだけ。

 

「でも……でも」

 あんまりです、と彼女は小さくこぼす。

 

「ユカナは優しすぎるんだ」

 そういってリヒトはユカナを優しく撫でる。

 

「私は…納得できません。リヒトさんが合っていたとしても、私は認めません!」

 リヒトの手を払い退き、その碧眼でリヒトの青い目を射抜く。そして、また沈黙。

 

「世界の全員がお前みたいだったら平和になるんだろうな」

 少しだけ、寂しさを目に浮かべリヒトは視線を外す。

 

「まあ、いいんじゃないか?その行為によって、お前に敵ができるぞ?」

 

「覚悟の上です」

 しっかりと、その言葉には力が篭っていた。

 

「なら、言うことはないな」

 そう言って、表情に笑みが戻る。

 

 それで終わりかと思いきや、もじもじしているユカナは最後に言った。

「で、でも。リヒトさんも私の味方でいてくれますよね…」

 所謂上目遣いで頼まれたリヒトは一瞬固まった後、「さぁ、ギルドに戻ろう。アリアが待ってるぞ」と言い、踵を返し歩き始める。

 

「え、えぇ!リヒトさん!どっちなんですか!」

 その後を急いで追いかけるユカナ。

 

(断れるはずないだろうが、馬鹿が…!)

 心のなかで叫んでいたリヒトであった。

説明を忘れていました。

サンチは普通にセンチです。

太陽の節とは夏のことです。

春、実りの節

夏、太陽の節

秋、枯れの節

冬、木枝の節という感じです。

読んでいただきありがとうございます。

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