幼馴染と魔王王弟殿下
ギリギリで抵触するか分からなかったので一応R15指定です。
僕の名前はエリック・エル・ラウ・ヴァレンティア。魔王の弟だ。
今日は一番上の兄上の結婚式。3年掛って落とした義姉上とやっと結婚するのだ。正直、良く理性がもったと思う。僕は父上のように飢えた狼として兄上が義姉上に襲いかかると思ってたんだけど。
だって―――15の時、食事以外で久々に母上以外の家族がその場に揃った日、下の弟妹が父上に聞いた時の事だ。
「父上はどうやって母上と結ばれたのですか?」
正直知りたいような知りたくないような爆弾発言だった。
「なんだリシェイラ知りたいのか?ふむ。お前たちもそろそろ年頃か………」
そう勝手に納得した父上だが、リシェイラはまだ5つです。年頃と言うにはまだ程遠い。
「あれはお前の母が侍女をしていた時だった。子供と思っていたら意外と成長している事に気付いてな。取りあえず、俺の女にする事にした。しかし、何か理由があった方が面白かろう。そこでお前たちも知っていると思うが………シェルが良くわからんモノをつくる時があるだろう?アレを利用する事にしたんだが………その時は結構持ったなぁ………いい加減イライラしてきたんでもういいかと思った時にあいつが部屋中スライムだらけにしたんで、仕置きとして喰った。美味かったぞ?後は結婚してやろうとした時、一回シェルが逃げようとしたから3カ月幽閉してその時に出来たのがジークだな」
一応、弟妹たちの手前控えた表現をしてくれた事にを初めて感謝する。が上の兄妹達はもちろん意味がわかったようで、一番上の兄がフムと納得して頷く中、他の4人は遠い目で母上の受難を思った。
しかし―――
「母上食べちゃったの?!」
幼い弟妹たちはピルピル震えて涙を浮かべ父上を見上げる。
「喰ったと言うのは比喩だ。安心しろ、お前たちの母は何処も欠けてないだろうが。………もう少し大きくなったら兄姉達にでも聞くがいい」
呆れたような物言いで父上が丸投げしやがった。面倒になったのだろうが説明する側の僕達にもなって欲しい。チビ共はキラキラした目で僕達を見上げる。一番上の兄だけが、父と変わらぬ冷徹なまなざしで弟妹たちに事細かに説明しそうだったが、それは阻止せねばならなかった。わざわざトラウマを植え付ける必要はない。そんな中、不幸体質な母上が何も知らずに部屋に入ってきた。
「あら、皆揃ってどうしたの?珍しいですね??」
「子供らに、お前とどうやって結ばれたのかと聞かれたのでな。話していた」
「なっ?!」
真っ赤になって硬直する母上。父上、絶対今のはわざとですね。案の定母上は何処まで話されたのかも分からずパクパクと口をあけたり閉じたりしている。
「父上が母上を食べたとおっしゃいました」
「美味しかったそうです」
無邪気な弟妹達が次々に報告する。その報告に母上が青くなったり赤くなったり。
「へ、へーか!!!子供に何て事言ってるんです?!」
「聞かれたから答えただけだ。………どうした?シェル。顔色が悪い」
わざとやっているくせに飄々とそんな事を嘯きながら母上の頬を触る父上。軽く舌舐めずりしているのは気の所為か?いや気の所為じゃない。父上が上の5人にガンを飛ばす。コレはとっとと出て行けだ。横目で母上が押し倒されるのを確認。母上の「ちょっ、何?!」「だめです」「あっ………」の声が遠く響く。意志を理解した兄妹と僕は下の5人をそれぞれ脇に抱えるとその場を後にした。母上に合掌。
その時の一番上の兄の言葉が忘れられない。
「うん。好きな娘が出来たら俺もそうしようかな」
それは、監禁宣言か?!実際、兄上は、義姉上が「うん」と言うまで監禁したんだから父上の血を引いているとしか思えない。そんな兄上の結婚式の日、終わった後で僕は幼馴染のエティルナと喧嘩をした。切っ掛けは、僕が結婚するなら義姉上みたいなカワイイ人と言った事。僕の後ろで妹のルルティアと弟のジューダスが「エリック兄様!!!」「あ、兄貴のバカ」と言った瞬間後頭部を思いっきり蹴られた。鬼の形相のエティルナが更に僕に張り手を喰らわす。
「おま!!!なにすんだ馬鹿!!!」
「馬鹿はあんたよ!!!!大っきらい!!!!」
走り去って逃げてくエティルナ。後ろからは非難の溜息。え?今のエティルナが悪いよな??僕が悪いのか???妹からは早く追いかけろと言われ、しょうがなく後を追う。気の強いエティルナだから、追いかけて行ってもどうせまた喧嘩になるだけだと思ったら、なんとエティルナは魔界樹の下で泣いていた。
この流れでどうやったら泣く事になるのか僕には全くさっぱりだ。少々気まずい思いをしながら声をかける。
「おい。蹴りいれた奴が何で泣いてるんだよ」
「煩い!!!あっちに行って!!!」
「………お前本当に可愛くないな」
「………っそんな事っ知ってるわよ馬鹿ぁ!!!」
余計大泣きだ!!!なんだって言うんだ。産まれてこのかた19年こいつがこんなに泣く所は見た事が無い。
「………なんで泣いてるんだよエティルナ」
「か………関係ない………でしょ」
しおしおと言う様が、いつもの勝気なエティルナと違って可愛らしい。いつもこれ位しおらしければいいのに。
「良くわかんないけど………僕が馬鹿だから泣いてるんだろ?」
優しく聞いてやってるのは最大限の譲歩だ。
「って、だって………お嫁さんにするなら………リシュお姉様みたいな人がいいって………言うんだもの………」
そう言ってまたグスグスと泣き始める。これは………。
「エティルナ、エティ。君、僕の事が好きなの?」
「ち、違う!!!そんなことない!!!」
真っ赤になって否定するエティルナ。なんだ十分可愛い所あるじゃないか。
「嘘つき」
そう言ってわざと指でエティルナの唇に触れる。真っ赤になって黙ってしまった。
「可愛くないなぁ。素直に言えばいいのに」
「ひうっ」
触れた手をそのままに唇をなぞればエティルナが可笑しな声を出す。
あぁなんか初めて父上が母上をいじめるのも兄上が義姉上に相当甘いセリフを吐くのも理解できた気がした。僕はエティルナをもっといじめて泣かせたい。そう考えるとゾクゾクする。
「可愛いねエティ」
そう言って僕はエティルナの淡いピンクの髪に口付を落とす。
「僕がもっといじめてあげる」
そう言うと驚いた顔をするエティルナの金色の目に頬に唇にキスを落とす。
君は後悔するかもね?寝てた僕を起こしたことを。
※ ※ ※
自分が可愛くない事は分かっている。好きな相手に何時もつっかかってばかり。でもしょうがないの。だって口が勝手に応戦しちゃうんだもの。小さい頃から好きで好きで好きでしょうがなかった相手。優しいエリック。おばさまに良く似た容貌、亜麻色の髪に紅の魔眼。私がどんな我儘を言っても最後は許してくれる。そんなエリック。でも流石にさっきのは堪えた。リシュお姉様は素敵な方だ。お嫁さんにするならリシュお姉様がいいって言うなら私は確実に圏外だ。だって会えば何時も私のせいで喧嘩ばかりだし、見た目もあんなにふんわりしてない。どちらかと言うと私はツリ目で性格だってキツイもの!!!この世の終わりが来た気がした。哀しくて哀しくて思わずエリックを蹴って叩いて逃げて来た。バカバカ。どうして私はいつも素直になれないの?
※ ※ ※
唇をなぞるように舐めて歯列を割る。真っ赤な顔がとても可愛い。今すぐ押し倒してもいい位だ。
慣れない事に息もできない可愛いエティルナ。思いもしない所に僕好みの子がいたもんだ。いつもの勝気さは今はない。ただ僕のなすがままになっている。くたりと身体の力が抜けた所を木の幹に押し付けて支えてやると僕は心行くまでその唇を堪能した。
おかしいなぁ。この子魔王ファミリーの男性陣の中で割と常識人な子だったはずなのに………書いてくうちにSっ気炸裂。尻に敷かれるはずが逆の立場に。恐るべし魔王様のDNA。