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愛援奇縁  作者: 七賀ごふん


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4/9

#4



人と人の縁を見極める。だが皮肉なことに、自分の運命の相手は見つけられない。

自分の糸を視認したことは一度もない。鏡の前に立って見ても、久宜の糸は写らなかった。


選択肢がない。

いや、そもそもこの力自体がいけないものなのかも。まるで品定めだし、軽い気持ちのアドバイスが人の一生を左右しかねない。他人の人生に責任なんて持てないのに。


翌日の夜、やはり彼は現れた。

「こんばんは」

「や」

青年は昨日と違い黒の帽子が追加されていた。酒も飲まないからマスクも外さないし、中々素顔が見られない。

こうなると意地でも見たくなってくるな。

「あのー、久宜さん」

「あれ。名前教えたっけ」

「有名人だって、さっき向こうでお客さんから教わりました」

不必要な情報開示反対。ウイスキーを飲みながら、頬を膨らました。

「久宜さんって何か可愛いですよね」

「君より年上だと思うけどね。何歳?」

「僕は二十二です」

へぇー。

「幼いなぁ」

見た目通り。飲んでたせいか声に出てしまった。そのやり返しなのか、青年は目を細める。

「久宜さんは隙だらけ。男の人に見られてても気付いてない。さっきホールで腰に手を回されそうになってたの、分かりました?」

「え。マジ?」

「マジです」

マジか。いや、それより。

「君、社会人? 大学生?」

「大学生です」

「そうか。でもな、二十歳過ぎててもここは学生が来るようなとこじゃないぞ。分かってないかもしれないけどゲイとビアンしかいないし……、それとも、ゲイだった?」

この時は反応を見たかった。顔を真っ赤にして否定する彼の。

だけど邪な気持ちを叩き落とすように、彼は即答した。


「ゲイです。貴方もでしょ?」

「は」


図星だ。すぐに顔が火照る。

「あはは、赤くなっちゃって可愛い」

「あのなぁ……」

彼を赤くしたかったのに、俺の方が赤面している。焦りと羞恥心から、追加でウイスキーをオーダーした。

「今付き合ってる人はいるんですか?」

「いないよ」

「いつから?」

「いつって……」

ずっと。

人生で一度も本気の恋をしたことがない。と、会って間もない歳下に言うのはとてつもない屈辱である。結果的に数年、と嘘をついた。

「君は彼氏が欲しいの? そんで俺のところに来て良縁に恵まれようと。金を出してでも」

一々引っかかる言い方をするのは、見栄と自己防衛の為だ。

他人から攻撃されることを恐れている。必ずしもそうとは限らないのに……一体いつからこんな臆病になったのか。


「……想いを伝える為に」


青年は呟いた。やっぱり攻撃的な答えじゃなかった。

「その人と僕は、確かに出会うべきだったんだって確かめる為に。だって今まで誰と過ごしても胸が昂らなかったから」

「ロマンチストだなあ」

少し驚いたものの、若いし良いことだ。たくさんの人と出会って、失敗して。昔の人は皆そうしてきたんだから。

「久宜さんは、今好きな人はいないんですか」

「さっきから質問攻め過ぎる。いないよ。いたらこの時間は恋人と家でイチャついてんだろうな。二人で仲良く飲んだり、」

「二人でベッドの中にいたり?」

「こら」

急に方向が変わった為、青年の頬を指でつついた。彼はおかしそうに笑っている。

あ、そういえば。


「名前訊いてなかった。何ていうの」

「秘密です。名前知らなくても縁は見られるんでしょう? 他の占いみたいに個人情報は必要じゃないし」


彼は手を振りながら階段を降りていく。

く、確かにその通りだけど。

俺の名前は知られてるのに、俺は彼の名前を知らないところが嫌で訊いたんだけど……。

思わず後を追いかけ、袖を掴む。

「飲まないの?」

「僕お酒はあまり好きじゃないので」

じゃあここにいても楽しくなさそう。けど存外、彼はホールの中央で踊っている連中を見るのが好きだという。


「久宜さんも踊ったら」

「俺は行かない。見る専」


二人で壁にもたれながら、眩いライトに目を眇める。

あれだけ光ってちゃ糸も見えないや。可笑しくて、ふと笑った。




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