ラッピングペーパー
「お誕生日おめでとう」
誕生日の夜、お父さんから真っ赤な包み紙でラッピングされた小さな箱を手渡された。
「開けてもいい?」
「もちろん。開けて開けて。この一年間、ちゃんと頑張ってたならプレゼントが手に入るよ」
お父さんはなにやらニヤニヤしている。
プレゼントが手に入る? これがプレゼントなんじゃなくて? 謎解きでも入ってて、解いたらプレゼントが手に入る的な?
ちょっとイラッとする。お父さん、そういうところがあるからなあ。変な趣向をこらさなくていいよ。誕生日プレゼントくらいすっと渡してよ。
そう言えば、去年もそうだった。家のあちこちに隠された算数の問題を解かされたうえ、最後に『今年の目標』を書かされて、ようやくプレゼントにたどりつけたっけ。
はあ、めんどくさあ。
イライラはするが、楽しませてくれようとしてるんだろうし、付き合ってやるか。お父さんの考える謎なんてすぐに解けるだろう。しばらく悩んだふりをして、焦れて答えを教えてくれそうになったところで「謎が解けた! やった!」って大喜びのフリをしてやろう。
それにしてもラッピングが過剰だな。最初は丁寧に開けようとしていたけど、わざとなんじゃないかってほどやたら頑丈に包装されている。そこにお父さんのにやにや顔も相まって、イライラが極まる。
はああ、なんだこれは。全然、開かない。
もういい。ビリビリに破いていく。ストレスのあまり小箱を壁に投げつけそうになる。すんでのところで、箱が開けられるところまで包装紙をはがせた。真っ赤な紙吹雪で、床に赤い雪景色ができあがっている。
箱を開けると、はがきサイズのカードが一枚入っていた。
やっぱりね。これに謎が書いてあるってわけだ。
表には『短気を直す』と書いてあった。これは私の字。去年の誕生日に『今年の目標』として書かされたものだ。
裏返すとお父さんの大人っぽい丁寧な字で『包装紙の裏。短気は損気。短気を起こすとあとで余計面倒なことになるんだよ』と書かれていた。
もしかして、包装紙の裏に問題が書いてあったのかな? 慌てて床に散らばった紙吹雪を拾い集め、裏を一枚ずつ確認していく。でも、白地に黒い点がいくつも連なってあるばかりで文字が書かれた紙片は一枚もない。
どういうこと……?
この点々に何か意味が? 紙吹雪を全部裏にして、破れ目を合わせて並べていく。まず、枠があって、それ以外の部分はほとんど点々ばっかりだとわかる。どことなく見覚えがある。他には小さい四角が3つあって……。
わかった。これ、QRコードだ! 全部、繋げないと読み込めないじゃん!




