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慣れ

 昔、小説を書き始めたころは、書いても書いても満足のいくものができなかった。

 がむしゃらに書いて書いて書きまくっても、「このクオリティなら発表しても良いだろう」と思える作品は、五作書いてどうにか一作あるかないかだった。


 今となっては懐かしい話だ。


 今では書くことにすっかり慣れ、二作に一作は「発表しても良いだろう」と思えるようになった。

 ただ、求められて書くことが多くなり、締め切りに苦しめられることは増えている。


 そんな折、発表に足る新作ができず、頭を切り替えようと昔の作品を読み返したときのことだ。発表した作品やボツにした作品を読み進めていくうちに気がついた。


 私は書くことに慣れたんじゃない。質の低い作品だと思いながらも発表することに慣れてしまったんだ。

 昔の私は意識が高かった。そして同時に傲慢だった。


 どれだけ自分に才能があると思っていたら、この作品をボツにできるのだろうか。

 確かに粗はあるが、それもまた味だ。


 お前はまだ若いからわかっていないだろうが、これだけ書けていれば上々だ。いくら時を重ねてもそれら以上のものが書けるようにはならない。


 過去の自分をそうやって叱りつけ、かつてボツにした作品群を適度な間隔を空けつつ新作として発表することにして、長期休暇を満喫するため、ウキウキで温泉宿に予約の電話を入れた。

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