表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/27

アンドロイドは悔しい場面で笑顔を見せるか?

「ついに感情を持つアンドロイドが完成した」


 ――これは素晴らしいことだ、と博士は喜びの表情を浮かべた。

 そのアンドロイドは何から何まで博士にそっくりに作られていた。喜び方、怒り方、哀しみ方、笑い方……全て寸分の狂いもなく瓜二つで、博士そのものだった。


 しかし、世間の評判はすこぶる悪かった。


「こんなのはただの演技ロボットだ。楽しそうな場面で楽しそうにして、悲しそうな場面で悲しそうにしているだけ。こんなのが感情をもっているとは認められない」


 博士はこの世間の評判に納得がいかなかった。何を言っているのかもわからなかった。

 博士はアンドロイドの表情を眺めながら思う。

 感情ってそういうものじゃないのか?

 ただ、評価されていないことだけはわかったので「ここは悔しそうにする場面だな」と思いながら、博士は悔しそうな顔をした。


「いつまで私は悔しそうな顔をしていればいいのだろうか」と博士が困り始めたころ、「そんな辛気臭い顔してたってしょうがないでしょ。次、頑張ろうよ」と、妻が笑顔で博士を励ました。


 博士は思う。

 妻にも苦労をかけている。このアンドロイドの評価が高かったなら、妻の苦労も報われたはずだ。逆に言うなら、このアンドロイドが評価されなかったことで、妻の苦労も報われなかったと言ってもいい。

 それでも何故、笑顔でいられるのだろう。ここは妻も悔しそうな顔をする場面ではないのだろうか?


 博士は結論として「感情というのはそういうものなのだろう」と理解をしたような気になった。


 博士は客観的に分析する。

「私はもともと感情表現が豊かな方ではない。そのためアンドロイドもあまり感情表現が豊かとは言えなかった。きっとそれが受け入れられなかった原因なのだろう」


 それなら、と反省を活かして妻にそっくりなアンドロイドを作った。喜び方、怒り方、哀しみ方、笑い方……全て寸分の狂いもなく瓜二つで、博士の妻そのものだった。


 今度こそと思い世間に発表したが、世間の評価は「こんなのはただの演技ロボットだ。楽しそうな場面で楽しそうにして、悲しそうな場面で悲しそうにしているだけ。こんなのが感情をもっているとは認められない」と変わらなかった。


 結局、世間の人たちも感情が何かなんてわかってなかったんだ。

 人間が笑ったら感情。アンドロイドが笑ったら演技。それ以上でもそれ以下でもなかったんだ。


 博士は「ここは悔しそうにする場面だな」と思いながらも、何故か可笑しくなって笑ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ