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静かな夜に

 蝋燭だけが、この部屋で唯一の明かりだった。

 ぼんやりとした光が彼女の影を揺らす。

 そして、とても静かだった。

 話す彼女の息づかいまでもが聞こえるほどだ。

 闇に浮かぶ彼女の儚げな表情、静寂に響く彼女の切ない声。ここは幽世かと錯覚する。

 彼女は話し終えると、口をすぼめて強く息を吐き、蝋燭の火をかき消した。


「次はあなたの話を聞かせて」


 良い雰囲気だ。ふと視線を窓に移すと、街の灯が遠くまで続いているのが見えた。


 ――この夜景さえなければ最高なのに。


「なんで、タワマン高層階なの? 確かに最初は暗くて静かでさ、『百物語をするのに良い雰囲気だなあ』とか思ったけど、夜景がおしゃれすぎるんだよ」

「そんなこと言ったって、大人五人が輪になって話せるような広い部屋がここしかなかったんだから、しょうがないでしょ。」

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