第二十二話 過去の幻影と秘術の真実
港町レヴェリアを後にした私たちは、三人の旅人となっていた。私、セレスティーナ、私の忠実な騎士レオン、そして新しく加わった港町の少女リリィ。リリィの瞳は希望に満ち、私たちと共にこの世界の筋書きをより良い方向へ導きたいと願っていた。
「お嬢様、次はどこへ向かうのですか?」
リリィが好奇心に満ちた声で尋ねた。手に持った地図を広げ、南に位置する『時の神殿』を指差す。
「…ここよ。『時の神殿』」
リリィとレオンは驚きを隠せない。
「『時の神殿』…? 伝説にしか存在しないと、言われている場所では…?」
レオンが信じられないという表情で問いかける。
「ええ。でも、この秘術の書に、この神殿の存在が記されていたの」
書には、『時の神殿』の場所と、この世界の真相がすべて記されているという伝説が詳しく書かれていた。私たちはそこを目指して、南へと歩みを進めた。
旅の途中で、様々な街や村を訪れる。どの街にもそれぞれの歴史があった。貴族の横暴に苦しむ貧しい人々、商人の策略に騙される人々。私たちは、『虚無の秘術』で介入し、多くの人々に希望をもたらした。
しかし、その旅の途中、私は一つの異変に気づく。
秘術を使うたびに、脳裏に一つの幻影が蘇るのだ。それは、この世界に転生する前の、私自身の姿だった。パソコンの画面に向かい、小説を執筆している。そして、その小説の主人公は、私と同じ、悪役令嬢セレスティーナだった。
この幻影に戸惑いを覚える。
(…なぜ、こんな幻影が…?)
レオンとリリィに幻影のことを話すと、リリィが穏やかに言った。
「…お嬢様。それは、お嬢様の『秘術』の力が、お嬢様の歩みを呼び起こしているのかもしれませんね」
心の奥が熱くなるのを感じる。
私が書いた小説は、この世界の基盤だった。この世界を、自分で形づくった。そして、それを自分で書き換えようとしている。私はこの舞台の設計者であり、同時に破壊者でもあったのだ。
私たちは、ついに『時の神殿』へとたどり着いた。
神殿は巨大な岩でできており、壁には奇妙な文字が刻まれている。扉に手を触れると、再び幻影が蘇った。
幻影の中の私が、パソコンの画面に向かい、小説を書き進めている。悪役令嬢セレスティーナに一つの『秘術』を授けていた。それは『虚無の秘術』
『虚無の秘術は、相手の存在を無形化する。そして相手の歩んだ証を、自らの力に吸収する』
その幻影に、私は驚きを抑えきれない。
(…私が、この秘術を生み出した…?)
扉に触れていると、刻まれた文字が光り始めた。その文字を読み始める。
「『虚無の力を持つ者よ。我らの願いに応え、この扉を開け』…」
すべての文字を読み終えると、巨大な扉がゆっくりと、音を立てて開かれていく。神殿の内部は巨大な空間で、中心には一つの石板が置かれていた。
石板に触れると、掌から光が放たれ、刻まれた文字が光り始める。
「『我らは、この世界の設立者。我らはこの地に一つの筋立てを施し、その進行が正しくなるように、『運命の糸』を創り出した』」
石板の文字が、この世界の核心を語りかけていた。
「『しかし、我らの試みは失敗した。この世界に、『イレギュラー』が誕生したからだ。その存在は我らの構築を破壊し、やがて滅ぼすだろう』」
胸が締め付けられる思いに襲われた。
(……やはり、私は、この世界を滅ぼす存在……)
「『我らは、この地を救うため、もう一つの筋を編んだ。それは、この世界を正しい方向へと導く、『悪役令嬢』の物語』」
衝撃を受ける。
(……悪役令嬢の筋書き……? まさか、私が……)
「『我らは、この世界の『イレギュラー』を、この修正された舞台に転移させた。それは、我らの構想を完成させるため』」
石板の文字は、この世界の真の目的を語っていた。
私はその中の一部であり、完成のための駒だったのだ。
石板から手を離し、その場に座り込む。
レオンとリリィに内容を話すと、リリィは穏やかに言った。
「…お嬢様。それはお嬢様が、この世界の流れを自分で描いたということですね」
その言葉に、ハッと顔を上げる。
「…そうよ。私が、この世界を生み出したの…!」
私はこの舞台の編み手であり、同時に壊す者。そして、自ら書き換えることもできる。
再び石板に触れると、掌から強大な魔力が放たれ、石板はゆっくりと姿を消していった。
石板が完全に消えると、神殿はまるで最初から何もなかったかのように沈黙に包まれる。
レオンとリリィと共に、神殿を後にした。
神殿の外に出ると、空にはまだ見ぬ星々が瞬いていた。その星の一つ一つが、まるで別の叙事詩のように輝いている。
私たちの旅は、まだ終わらない。
そして、この筋立ては私が想像していたよりも、ずっと複雑で、そして面白いものになるだろう。私たちはこの世界の未来を、自分たちの手で書き換える。
それが私たちの、新たな章の始まりなのだ。
最後まで読んでいただいた方、誠にありがとうございました。
第一章はここまでです。疲れたので少しの間休みます。(第二章もそのうち書きます)
なろうに登録後、長年放置してたので、久々に楽しかったです!
★なお、私は一度書き始めたら100%エタりませんので、今後もよろしくお願いします。★




