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第十五話 策謀の糸と揺れる絆

 私たちの物語は、今、新たな共闘者を得て、加速しようとしていた。


 酒場の奥にある、エリザベートの執務室。そこは、喧騒とはまるで異なる静けさに包まれ、整然と整理された書類や書棚が壁一面に並んでいた。壁には王都の地図や貴族たちの相関図が貼られ、ただの裏社会の女頭領ではないことを示している。


「お前たちに、我々の情報網をすべて見せるわけにはいかない。だが、一つだけ、今、私たちにとって最も重要な情報がある」


 エリザベートは、地図の一点を指差した。そこは王都の貴族街の一角、聖女アメリアの館である。


「聖女アメリアは、この数週間、公爵家の財産をすべて調べ上げ、その情報を王子に流している。そして、その財産の中に、公爵家に伝わる『秘術の書』があることを知った」


 私は驚きを隠せなかった。

 聖女アメリアも、秘術の書のことを……。(もう…なんでもありだな)


「聖女アメリアは、王子に『秘術の書』を渡す代わりに、王子の権力を利用して、自らの影響力をさらに強めようと画策している。彼女の目的は、この国を『聖女の国』として、自らが支配することだ」


 レオンは、エリザベートの言葉に顔色を変えた。


「まさか……。聖女アメリアの目的は、そんなことだったとは……」


「ああ。表向きは、清廉潔白な聖女だが、その本性は、権力欲にまみれた怪物だ」


 エリザベートはそう言って、私に視線を向けた。


「お前たちに、一つ、頼みたいことがある。聖女アメリアの館に潜入し、彼女が公爵家の財産を調べ上げた『証拠』を手に入れてほしい」


「聖女アメリアの館に、潜入……?」


「そうだ。その証拠を手に入れれば、私たちは、王子の権力を揺るがすことができる。そして、その証拠と引き換えに、私たちは、お前たちを、この国から安全に脱出させ、新たな隠れ家を提供する」


 エリザベートはそう言い、私に手を差し伸べた。


「お前たちに、この取引に乗るかどうかは、お前たちが決めることだ。だが、この街から脱出する唯一の方法は、これしかない」


 私は、エリザベートの手をじっと見つめた。そしてフィンに視線を向けた。フィンは、私の顔をじっと見つめている。彼の瞳は、私に「信じていい」と語りかけているかのようだった。


「分かりました。この取引に乗ります」


 エリザベートは、静かに微笑んだ。


「良い決断だ。お前たちが成功すれば、私たちは、お前たちを、王都から安全に脱出させてやる。そして、その『秘術』の力は、私たちが、この国の秩序を立て直すために、使わせていただく」


 私は、この取引に乗るしかない。それが私たちにとって唯一の道なのだから。私は静かに頷いた。


 聖女アメリアの館に潜入する計画は、闇夜に決行されることになった。エリザベートは、私たちに、館の構造が描かれた地図を渡してくれた。それは裏社会の情報網が、いかに張り巡らされているかを物語っていた。地図には衛兵の巡回ルートや隠し通路、そして聖女アメリアの執務室の場所まで、詳細に記されていた。


「この館は、表向きは慈善活動の拠点だが、内部は厳重に警備されている。衛兵は、王子

の私設兵であり、聖女アメリアに絶対の忠誠を誓っている。油断すれば、命はない」


 レオンは地図を指差しながら、私に警告した。


「お嬢様は、秘術の力を使って、衛兵の目を欺き、館の奥へと進んでください。私は、お嬢様が証拠を手に入れた後、脱出ルートを確保します」


 私はレオンの言葉に頷いた。フィンは今回の計画には参加させず、ミナの家に残ってもらうことにした。彼を危険な目に遭わせるわけにはいかない。


「……セレスティーナ、気をつけて」


 フィンは心配そうな顔で、私にそう言った。私は彼の頭を優しく撫でた。


「大丈夫。私は、フィンくんを守るために、この物語を書き換えるんだから。必ず、帰ってくる」


「分かった」


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