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蘇生魔術と空間管理者たち  作者: なー
黒羽の視点
7/33

REF戦

空間管理者REFが空間を歪めて、南下たちのいる拠点に転移してくる。


REF「……空間管理を放って何している。

特に南下。

──へえ。そいつについて連合に反逆かよ」


初手から南下の深奥を読み解くREFに対して、

南下には冷や汗が浮かぶ。

南下「読まれたか……!」


焦りの混じった南下の返答に、REFは誇るでもなくただ事実を伝える。

REF「現役空間管理者、かつ呪詛システムエンジニアを見くびるな。

で、そいつを強引に突き出せば、元の業務に戻るかというと。

──予測演算の結果は偽か」


この場に緊張が走る。空間管理者、対準空間管理者以下5人。

それでも、REFを下せる光景が見えない。


沈黙が下りる。REF以外の者が動けない。


REF「当然覚悟はできているな?……白洲を呼ぶまでもない」


誰かの息遣いだけが、響く。


南下「やるぞ!覚悟を決めろ!」


その声を皮切りに5人が動く。

全員が、各自のBMI、拡張脳を起動。

一気に意識が切り替わる。


主観時間を伸長。

10^-3秒を1秒に感じる程度、つまりミリ秒単位の戦闘が始まる。


◇◇


双方の初手は奇しくも一致した。

REFと黒羽の《空間開闢》。


瞬間的に亜空間の拡張が拮抗する。

しかし、表情は対照的だ。REFは無表情。黒羽は冷や汗を垂らす。


当然だ。REFは空間管理者。開闢したのは通常の法則の空間。

一方、黒羽は非正規の空間操作法術師。開闢したのは超光速を許容する空間。

これは黒羽の癖になってしまっている。


──しかし、一瞬で黒羽が押し勝つ。

戦場が無重力・超光速許容空間に切り替わる。


空間管理者に勝った?しかも呆けなく。

黒羽が結果を追認して、その事実に対して違和感を覚えると同時に。


南下「油断するな!」

古俣から小型端末がREFに飛翔する。

拡張脳によるオールレンジ攻撃。並列処理によってその数は50は下らない。


直後、光の雨がREFに殺到する。

搭載武装、プラズマ指向兵器による攻撃だ。


REF「防御層対策に傾倒しすぎだ」

その雨はREFの防御層、高密度結界と力学結界を貫通したように見えた。


が、違った。

REF「ただの荷電粒子だろう?素粒子オーダーベクトル操作」


──自分で解除していたのだ。

REFの径1.5メートル以内の絶対圏に侵入できず、光の雨が漏れなく反射される。

REF一点への集中攻撃が一転して、5人へと降り注ぐ光の流星群のような制圧攻撃に変化する。


糸代「空間開闢の後になんて処理性能だ……!」

黒羽「これが空間管理者の性能か……」


おかしい。ここまでの処理能力を発揮している空間管理者の、

さらに主な権能のはずの空間開闢が自分のそれに負けるのか?

と、黒羽の思考を占める。


しかし、即座に南下が否定する。

南下「違う。あえて空間開闢の出力を抑えてこちらの追撃の対処を優先したんだ」

古俣「それより攻撃が帰ってくるよ!回避行動!」


対する5人が回避軌道に移行。その瞬間に黒羽にREFが空間転移。


認識したころには懐に入っていた。

黒羽の血相が変わる。直後。

──ジジッ


黒羽の座標に頭上から光の柱──否。雷撃が迸る。

古俣「電荷の召喚か!黒羽!」

三淵「大丈夫!欺瞞した!」


黒羽の横をかすめてREFの攻撃は空ぶっていた。


REF「幻影術式か」


直後、黒羽は横方向に吹き飛ばされる。


REF「処理性能は一級法術師相当か」


黒羽の脇腹を見れば金属棒が無数に突き刺さっていた。

電荷の柱に遮られて見えなかった。


黒羽「運動エネルギー攻撃……?いや」


力学結界を貫いた……??

トリックは? いや、何らかの毒かもしれない。

が、思考は後。痛みをこらえて、空間開闢。

南下には、何をしようとしているか分かるはずだ。


南下「ああ。……援護する」

接近するREFの前に出て、光子で成形した杖を叩きつける。

対するREFは電磁フィールドで拮抗していた。


糸代「慌てんなよ。なんのトリックもない。ただ物量で突破しただけさ」

力学結界を剥がされた黒羽に対して、

REFの金属棒についてのタネを示す。


見渡せば黒羽が吹き飛ばされる前にいた座標に金属棒がいくつか漂っている。

が、そればかりに集中していられない。

REFに注意を向ける。


一方、拮抗してREFが止まった隙に。

三淵の光子収束攻撃と古俣の小型端末・プラズマ砲による挟撃。


しかし、これもREFは身を翻し、上方向に飛行術式で逃れる。

反撃に魔力の弾を発射するおまけつきだ。


が、入れ違いに準備が完了した黒羽の空間の渦が迫る。

空間開闢と法則設定・歪曲を駆使した不可視の洗濯機だ。


REFの回避が遅れ、頭部から胸部が圧壊する。


断末魔の魔力弾は各自迎撃。

黒羽・南下・糸代は高密度結界、三淵は光子レーザーで、古俣は小型端末で。


攻撃を凌いだ安心感とREFの頭部欠損で、

それを確認した法術師たちの思考が止まる。前に。


南下「油断するな!相手は空間管理者だ!

自動プログラムで思考を修復してくるぞ!」


4人の思考が再起動する。が。


《第1種致命傷・ニューラルネットワークの消滅を確認》

《自動プログラム発動》

《戦闘継続・パターンA》


──バチバチッ……

胸から上がないREFの体から目に見える雷鳴が迸る。

直後には体の周りに電撃の刃が成形された。

50メートル程度の長さの刃による空間を裂くような4本の斬撃。


《ニューラルネットワークの修復・15秒前のバックアップを複製》

《体組織再構成中》


軌道の演算と回避に手間取ってREFの復活の対処が遅れた。

ただ南下だけは、REFに向かって魔力弾を発射。


直後、判断力を取り戻した、蒼い斬撃が空間を切り裂く。


同時に、斬撃の根本で南下の魔力弾が炸裂。

爆炎が晴れた時、そこにREFの姿はなかった。


南下の背後。そこにREFが転移していたのだ。


最低限の修復ゆえに骨まで露出したREF。

骸骨が不気味に南下の死角から迫る。


背筋を凍らせる暇もなく。

《魔力の弾》の散弾が背後から南下を穿たんと殺到する。

黒羽「南下!」

無意識に叫んでいた。

それを、その前から察知した南下は口角を上げながら横方向に急軌道。


そのまま離脱した南下をはじめとした法術師たちの集中砲火。

プラズマ弾、光子レーザー、重金属弾頭運動エネルギー弾。


黒羽「──今しかない」

これに紛れて黒羽が撃ったのは超光速の粒子。仮想粒子砲。

空間に設定した超光速度の許容。それを活かした仮想の物質だ。


それ以外の攻撃は認識していたのだろう。

しかしそれらを空間転移で回避する前にREFに超光速が直撃する。


◇◇


修復したてのREFの脳を黒羽の仮想粒子砲が横から貫く。

認識するより前に到達する攻撃にはさすがにREFも反応を示せなかった。


衝撃でREFの身体が回転する。

再度、REFの自動プログラムが空間に響く。


《第1種致命傷・ニューラルネットワークの損傷を確認》

《自動プログラム発動》

《戦闘継続・パターンC》


──ゔぅんと音を立て、REFの周囲にプラズマ球が蛍のように収束し、漂う。

直後にはそれらは開放。

誘電率の高い空間をこじ開けて、一見無秩序な軌道で空間を照らす。


迫る荷電粒子に対して、ベクトル干渉でしのぐ。

かつ、黒羽は先ほどREFを穿った空間の洗濯機を準備。

物量で攻めてくるそれに対し、並列処理によって永遠ともいえるような受け流しを経て……。


REFの生体修復が終了する。阻止できなかった。

が。


──「やめだ。……1対5かつ1側が呪詛システムの監視と並行で制圧できると想定したのは

見くびりすぎたな。

時間をかけすぎた。呪詛システムの状況が不明だ。

降伏する」


拡張脳を首筋から引きちぎってREFが宣言する。


沈黙が下りる。拡張脳を自ら切断したとはいえ、すぐには戦闘への意識は解除できない。

しかし、REFは一方的に続ける。


「さて、俺は何も見ていない。ここでは何も起きていない。

お前らの行動は把握せんよ。

──ただこの空間、俺の管轄空間に帰る場所が残ると思うなよ」


そう言い残して空間から姿を消した。

さっき言っていた通り呪詛システムの状況が不安なのだろう。


──終わった。

異空間の戦闘は終息した。


◇◇


おまけ:REFに本気を出させてみよう。

全員が拡張脳を起動したタイミング。


REF「呪詛システムの管理を一時破棄。

こちらに集中する。

──予測演算。制圧所要時間、8724ミリ秒。

──誤差を含めても10秒もかけずに制圧してやる」


──双方の初手はほぼ同時だった。

黒羽は《空間開闢》

これを感知したREFは黒羽の懐へ空間転移。


戦場は黒羽の無重力・超光速許容の亜空間に移る。

しかし。


REF「──いいのか?それで……?」

黒羽の顔から血の気が引く。


直後。黒羽の頭上から電荷の柱が迸る。


古俣「黒羽!」

三淵「欺瞞した!」


が、直後、真横に二つ目の電荷の柱が輝いた。


光がやむ。三淵の幻影が解け、失神した黒羽が電荷の柱から覗く、と同時に。


残り4人の拡張脳に障害。思考加速が乱れる。


南下「EMPか……!」

REF「──正解だ」


空間転移したREFから至近距離で南下がEMPを浴びる。

続けて、南下は自身への衝撃を知覚する。

視界が暗転する。


REFから南下を挟んだ背後から首筋に魔力の弾。

着弾効果は衝撃/ベクトル鈍化。

二段構えで脳への血流が阻害されたのだ。


その牙は残り3人にも飛び掛かる。

回避軌道をとる。

その中でも唯一古俣が小型端末を放ち反撃に転じる。

しかし、REFの連続転移でオールレンジ攻撃が当たらない。


「プラズマ弾か。確かにベクトル干渉にも魔力障壁にも有効だがな?」

不発に終わったプラズマ弾が戦場に帰ってくる。

「管理者級には効かんぞ」


瞬く間に3人の身体をプラズマ弾が穿つ。

脊椎への狙撃と先ほどのベクトル鈍化弾によって瞬時に制圧される。


「状況終了。5人を無力化した。

──結局初手でミスってたんだよ。

空間開闢なぞせずに、

基底世界で俺の攻撃を封じるべきだった。」


戦闘時間は10秒に満たなかった。


──予測演算。制圧所要時間、8724ミリ秒。

REFの演算が全員の脳裏に響く。


◇◇

おまけ2:第1種致命傷ってなんだよ

法術師・空間管理者たちは素粒子のベクトルにすら干渉できる、

というのはここまでで伝わっていると思う。


つまり自身の体を修復することもできる。


となると死亡の概念も変わる。


失血死は回復可能。

内臓損傷も回復可能。

ここまでは法術師にとって致命ですらない。

勿論、基底世界の魔術師にとっては致命傷。


脳の欠損は工夫(自動プログラム・タンパク質修復魔術)で回復可能。

脳全体の消滅も同様(ここまでくると戦闘直前の脳マップのバックアップ復元になるかな)。

ただし、修復までは思考能力は奪われる。

ここまでは第1種致命傷。


ここまでして、かつ自動プログラム用の魔力を無力化する。

ここまですればその法術師は消滅する。

これが第2種致命傷。


ま、神坂辺りは自分の肉体を複製・バックアップとかして復活してくる。こわい。

このバックアップのタイミングで妨害すれば意識の連続性は絶てはする。

EMPやら黒羽の空間渦が有力手段。

ここから広域空間群管理者にのみ適用される概念であり、

これは第3種致命傷。


この時点で対象のバックアップも並行して破壊すると完全に消滅させられる。かな?

管轄する胞構造空間(=並行世界)や果てには個人保有開闢空間に配置したそれを破壊できるならだけど。

第4種致命傷。

逆に自殺するときはこのバックアップを自ら無力化する手順がある。


▶自動プログラムってなんだよ

魔力(ベクトル干渉媒体)に覚えさせた魔術(ベクトル干渉マトリクス)のこと。

BMIではない。というかBMIは第1種致命傷でも損壊する可能性あるし。

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