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蘇生魔術と空間管理者たち  作者: なー
根鈴たちの視点
3/33

空間戦

作戦会議が終わり、神坂が全員を怪しい奴の座標に追跡転移することになった。

神坂が一歩、空間を踏みしめた。


「対転移膜? 力業でぶち抜けばいいんだよ」

その言葉と同時に、神坂は空間座標間にワームホールを強制展開。

重力場を曲げ、向こう側の空間座標を直線接続する。

彼の膨大な魔力量によって黒羽の対転移膜を破って出力で突破する。


全員の視界が切り替わる。そこは基底世界、王都郊外の平原だった。

一瞬の後、風が思い出したかのように転移してきた法術師たちをなぞる。


目の前にいた者がこちらを見る。

どうやって対転移膜を突破した?とその目は言っていた。


「さて? 様子見かな──《読心術・重力震による結像法》っと」


……知識量からして……やはり黒羽か。

動揺してるな。


「へえ……俺がでしゃばるのは“予定外”か。黒羽蘇芳。

実行犯か?黒幕か?……まあ、ここで仕留める」


──《読心術・重力震による結像法》の種明かしをすると。

空間管理者の使う空間転移。これって空間に波を起こすんだ。

つまり電波と同じなんだよ。

これが相手の脳構造に当たった後の反射波で脳構造を解析する。

転移後に先手で読心する技法だ。


次の時点では互いが同時に《空間開闢》。

1秒以下の世界で練度の差が出る。

空間操作の衝突は当事者が認識する前に決着する。


ミリ秒すら拮抗することはなく、神坂側の亜空間、開闢空間に黒羽はトラップされる。

無重力状態に戦場が遷移。

広域空間群管理者と非正規空間操作法術師の戦いが始まった。


◇◇

~神坂視点~

直後、黒羽が開闢空間内で空間開闢。

黒羽の開闢空間に上書きされる。

ま、当然か。こっちがどんな法則を仕込んでるか分からなくて不安だろうし。

何も設定してないけどね。


これで開闢空間が二重にネスト。

この戦闘専用の異空間って状況になった。


いや、それより。1級法術師がこの術式を使うのにも驚いたが。

空間の感触がおかしい。

空間条件が弄られてる。超光速運動の許容だと?


(開闢空間内に超光速運動を確認)

外部擬脳、拡張脳のアラート。

……早速設定を活かしてきやがった。空間法則を壊す気か?


「……仮想粒子、射出」

仮想の超光速粒子。

その塊の投射か。

視認する前に飛んでくるから撃たれると脅威だ。


つーか向こうの射線に基底世界へのワームホールがまだ開いてるな。

それ以前に、基底世界に仮想粒子が侵入したら空間が崩壊する。

こっちの空間では超光速の許容設定はしてない。


速度超過分の運動エネルギーが拡散して周囲一帯大惨事になる……かな?

これでも希望的観測だ。何が起きるかわっかんね。


そう判断した次の瞬間。

「させないよっと」


超空間転移で即時対応。

黒羽の空間内に侵入し、《魔力の弾》を連続射出。

あえて、やー!、だのほあちゃー!だの叫んで向こうの集中を乱してやる。

《魔力の弾》

ただの魔弾ではない。

・高エネルギー源誘導

・亜光速射出

・瞬間転移による精密追尾

を即興で付与した特別製だ。


空間法則のパラドックスを孕んだ高エネルギー粒子

──仮想粒子を確実に迎撃する。


互いの攻撃に照らされて黒羽が感情的に叫ぶ。

「《魔力の弾》……?なめるなぁっ!」

奇声に感情揺さぶられてやんの。


開闢空間内で空間開闢。無茶するなあ。

うん?空間操作ベクトル場が何やら変だ。


空間の渦、ブラックホールじみた不可視の歪み。

連続で黒羽から飛来してくる。


「えーっと。へえ。空間の渦の射出か。

まあ、空間管理者には特攻ってところか。初見殺しの一発ネタだけど」

黒羽が投射した多重空間開闢による渦を回避。

こっちは空間管理者だ。空間歪曲は肌で感じ取れる。


どうせ連射はできん。不可視の必殺技なのは評価する。

おそらくこれは、ごく短い空間の開闢と空間操作(歪曲)を組み合わせた、

法術師を分解する洗濯機だ。


しかし、空間管理者攻撃用なのにその対象にはベクトル操作軌道で容易に回避される。

コストの問題もある。半端な術式だ。


なんなら洗濯機に巻き込まれても俺たち広域空間管理者には、

肉体・自意識のバックアップがあるし。

いや、それへの記憶の転送は空間歪曲に遮られて絶望的か?まあいいか。


──閃いた。黒羽の渦を利用してやる。

黒羽の座標から渦を挟んだ、かつ渦の危険域外に空間転移。


渦を挟んで、人差し指と中指を黒羽に向ける。

仮にも空間管理者の異様な動作だ。

黒羽が血相を切り替えて回避軌道を始める。

とはいえいつ何が来るかわかるまい。


──無秩序な軌道。疑似乱数を飛行術式に代入してる。

俺の偏差射撃を封じてきた。まあさすがにな。


だが、俺を相手にするには偏差が小さいぞ。

急軌道による負荷を気にする局面じゃないだろうに。

これをかわせるかな?


電荷を召喚。10^12eV。

指に導電体のレールを形成。

射出体を形成。主成分はタングステン。

電荷を接続。


……レールガンだ。

射出体を連続生成。毎秒50発程度で連射。


渦による空間歪曲を加味して弾道計算。空間歪曲補正。

偏差を加えて発射。


超音速の飛翔体によりヴェイパーコーンが発生。

空気の歪みを伴う複雑な軌道を描いて、レールガンの雨が黒羽に殺到する。

そしてその歪みでさらに軌道が無秩序になる。


あっ。黒羽が安堵した顔で回避を緩めた。

まあ蓋を開けたら運動エネルギー攻撃だったもんな。

へえ。防御層で受ける気か。気持ちはわかる。処理性能比べだ。


弾体が黒羽の防御層、力学結界に衝突。

空間が焼けるような衝撃波が連続で叩きつけられ、

防御層の輪郭が一瞬ごとに歪む。


電磁加速体とベクトル干渉場が激突し、結果、ベクトルをそらされる。

……毎秒50発の雷速をどこまで流せるかな?


……15秒程度で貫通する。

当然高密度結界はあっけなく貫通する。

紙のように裂けていく。

広く使われているとはいえ、ただの魔力の壁だ。


内側のそれぞれもう一層も、同じように貫かれる。

合計35秒。これが黒羽の持つ2対の防御層が耐えられた時間だった。


◇◇


~黒羽視点。~

視界が白い閃光で塗りつぶされる。

耳鳴りと共に、結界の破片が空間に散った。


ちっ。やはりか。想定通りだが神坂の権能が圧倒的だ。

つーか、この段階で広域空間管理者は対処できん。


……手段を選んでられない。

神坂と同刻転移してきた法術師を人質にする。


──管理者はこの戦闘の余波が基底世界に及ばないように空間補正に集中している。

──一方それ以外の奴らも、この戦闘、神坂どころか俺のスピードにも追いつけてない。


確実に殺れる低位法術師か。抑止力を期待できる管理者か。

と思いつつ、法力反応に空間転移。


視界の端に見覚えのある姿が。

俺の姿を見て息をのむ少女。

……根鈴?まさか、こんな所で──

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