要塞中枢へ
結界で包んだ根鈴のところに気化肉体をまとめる。
細胞レベルのベクトル干渉は今更お手の物。
滑らかに肉体を圧縮して人型に戻る。
ドン引きしてる根鈴。
視線が心なしか、いや、明らかに冷たい。
自分の意思で戻れる以上まったく気にしないが。
まあドン引きするか、仕方ない。
現状恒星近くの宙域。
単体で飛んでくるマスドライバーは脅威ではない。
無視して要塞の構造体に接近する。
恒星フレアが要塞を回析して襲い掛かる。
……だからこそ人型に戻ったが。どっちのほうが良かったんだろうな。
まあいい。マスドライバーを回避しつつ恒星フレア、すなわち荷電粒子を防御。
そうして要塞に侵入する。
◇◇
近代的な内部装飾だな。
といいつつ恒星光をフィルタリングして自然光を確保。
開放的でまあまあ快適な生活空間じゃないか。
魔力反応。足音。誰かが来る。
先ほど登場しなかった糸代だろうか。ここで来たか。
が反応するより早く両手をあげて無抵抗をアピールしてくる。
「あー。主力構成員の糸代だ。戦う気はない」
無条件降伏だ。
根鈴も怪しいと思ったのか。
「なんか企んでます?」
「いや?」
(うーん。何を言っても無駄だなこの状況)
単純に戦闘が嫌なのかもしれん。
いや、反逆している以上何を言っているんだという話ではあるが。
しかし彼の得意領域はマインドコントロール。
戦闘向きではない。
ならありえなくはない。
《読心術》!
……普通に企んでるじゃん。
──根鈴への期待を。
「怪しいが、黒羽のところへ急ぐぞ」
そしてわずかな声量で、おそらく本人に伝えるつもりはなさそうに
「……うまくやれよ?黒羽の愛しの一番弟子」
と呟いた。
……この激励を根鈴本人に伝える気はない。
表情を見れば十分だ。
事ここに至っては誰の言葉もいらない。
◇◇
恒星を取り囲む3軸のリング、宇宙要塞中枢。
その内側、恒星表層付近に黒羽は待ち構えていた。
根鈴の姿を認めたであろう彼は一瞬視線をそらし、その直後にはその感情の残滓は消え失せていた。
違和感を覚える。それは根鈴も例外ではない。
思い至ったのは、
「糸代か」
その感傷を吹き消すように声が耳朶を貫く。
「来たか!待っていたぞ」
「よりによって最終決戦の舞台がここかよ」
「雰囲気出ているだろう?」
「自信を取り戻したようだな。反乱軍の結成で人の温もりに触れて癒されたと。
……案外かわいいところあるな?」
「……見ろよ、恒星のプロミネンスが立ち上り、磁気嵐が吹き荒れる。
超越者の決戦にふさわしい」
あ。話題を逸らした。
「……がこの場にそぐわない奴もいる」
おもむろに指先を根鈴に向ける。
だが二人は見逃さなかった。根鈴をこき下ろす瞬間、わずかに表情をゆがめたことを。
「《空間開闢》!」
「《思考加速》!この子を安全圏に追放するにしてもやり方があるだろ!」
特に言い方!
2人の空間干渉が拮抗する。
最終決戦は優しさの裏返しを否定できない、黒羽の弟子への手向けから始まった。




