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蘇生魔術と空間管理者たち  作者: なー
根鈴たちの視点
2/33

法術師殺し

MIF視点。


2級法術師から連絡。珍しい。

なになに?


「第12空間-管理者MIFに報告。

哨戒中に法術師の少女を発見。

……殺害されていた。

即時蘇生を試みて成功。

現在保護中。


彼女の保護の共有……とともに

殺人犯への対処を求める」


哨戒中(散歩中)だろ。特に役割振ってないし。

ついでに蘇生?まじで?仕事してんのか遊んでんのか分からん。


というか、法術師が殺害?


珍しい事件だな。

犯人は?状況は?規模は?

まあ、第1報だし、情報不足は仕方がない。


……意識を切り替える。

広域空間管理者に連絡。共有する。


久しぶりの事件……だな。

件の法術師に接触するか。

広域空間管理者への報告の材料を集めるがてらに。


◇◇


~矢場視点~

一応管理者には報告したが。


「どう動けばいいんだ?」

隣に座る根鈴に話しかける。


しかし、返事は二つあった。

「そうですね……」

「さて、どうするかね」


MIFが転移でそこに現れたのだ。

「うおい!対応はやっ」

「……お前に適当って言われたからな」

「げっ……それにしても、対応早すぎでは!?」


思わず声を上げる。MIFが現れたのは報告から5分も経たない頃だった。

「緊急性が高いと判断した。神坂にも通告済みだ」

「神坂って、あの神坂!? いや、待て待て待て」

大事になった。心の準備ができていない。


「神坂!来てるんだろ!」

「そう声を上げなくても……いるってば」

その瞬間、全員が“空間のなにかが切り替わった”という錯覚を覚えた。

声がして振り返ると、そこには“既にいた”。

神坂は、ただ“存在”していた。


広域空間管理者が管轄空間から静かな超空間転移によって現れた。


「そろいもそろって、対応早いな」

「まあ、さすがに法術師の同族殺しは看過できないから。

ね、MIF?」

「そーいうことだ」


「さて、まずは被害者に話を聞くか」

根鈴へのインタビューが早速行われる。

とは言っても雰囲気はやや緩い。


「書類とかにはまとめないから、あんまり気張らないで。

最後の状況、覚えてる?」


「……なにか、空間を……開いてました」

呼吸の浅いまま、根鈴は断片的に答える。

「……向こう側が、裂けたような……」


「空間開闢か……」矢場が呟く。

「ってことは……相手は空間管理者クラス」MIFが顔を曇らせる。


「誰に殺されたのかは分かりませんが、

私が最後に見たのは、……黒羽さんです」

「法術師連合・法術師インデックス、検索……。

いた。黒羽蘇芳。一級法術師の?」

「はい」


被害者から容疑者の名前が挙がった。

──しかし、矛盾を抱えているのだ。一級法術師と言えば空間管理者級未満。

空間開闢なんて習得しているはずはないのに。


◇◇


同時刻。黒羽は感覚で空間歪曲を感知していた。

「……神坂か」

空間の膜が震えた。あの歪曲は一度だけ感じたことがある。

殺意でも敵意でもない。ただ、あまりに正確な空間の“管理”の痕跡。

自分がいる場所の座標が、“神坂に捕捉された”感覚。


いや、実際捕捉されているのだろう。

「……来るなよ」黒羽は低く呟いた。


予想外だ。この初期段階でこんなに上位者が来るとは。


……心の奥で、戦闘準備。根鈴を殺した際の空間開闢の感触を思い出す。

独学で学んだ空間開闢。高度条件設定の手法。


広域空間管理者にどれだけ通じるかは分からんが。


手が震える。本当に、管理者と戦えるのか?


しかし、先ほど自己投与した向精神薬による興奮も感じる。

単純な向精神薬による快感なのか、神坂と戦闘する高揚か。


自分で自分の心がわからない。

自分の体が自分の意思で動かない。口角が上がる。

──既に自分は壊れているのだろう。


◇◇


矛盾する状況に対して法術師が取れる手段は多岐にわたる。

ここで神坂が《読心術》で介入する。

「読ませてもらうよ……

《読心術》

《対象は根鈴 和沙の映像記憶》

《記憶の遡及開始》」

神坂は一切根鈴に触れず、根鈴の記憶領域に入る。

空間がわずかに震え、時間が止まったかのように静寂が訪れる。


「……見つけた」

そこには黒羽の姿を見つめたまま崩れ落ちる少女の視界。

──「師匠……どうして」

少女を見下ろすその瞳を最後に、記憶は終わった。


神坂の意識が根鈴の記憶世界から帰ってくる。

事実を追認した根鈴が顔を覆う。

そこにMIFが声をかける。

「無理はするな、すこし時間を取ろう」


沈黙。根鈴のすすり泣きだけが響く。


やがて、神坂がふと呟く。

「……空間開闢。それも、かなり高度な条件構文だね。

……なぜ一級法術師風情が。」

「……認めたくありません。でも、間違いなく……」

「ああ。黒羽は確かに空間開闢なんて術式を習得している。

……少なくとも、彼は重要参考人ってことだね」



「xectの監視は」

「されているはずだ。空間操作教育課程は受講できないはず

……独学か?」

「だとしても、xectが因果操作、過去改変をするはずだ。

もう情報把握してるだろ」

「されてない。少なくとも現時点では。

……つまり未来からはこの戦力で解決可能と見積もられてるな」

「へえ、……まじかよ」

「まあ、俺がいる。この時点でも過剰戦力気味だよ」

「それはそうだが」


法術師連合総帥xect。

彼女は時空間操作能があるため事前にこの事件を阻止することだってできるのに。

逆説的に何ら対策をしないということは現時点で解決可能。もしくは……。


「ところで。矢場から刺創の報告があったよね。

意外と術式は安定していたし、

根鈴の致命傷はこの後に受けていそうだ」

「空間歪曲による空間酔いの間にとどめを刺したってか?」

「刺創のほうが致命傷だった。

ということはそうなんだろうな」

「確実な殺意があったのか?」


黒羽から根鈴への明確な殺意の証拠たる致命傷。

それに衝撃を受けたのはそれを受けた当の本人だった。


「そんな……なんで」

「それも聞かないと……だな」


根鈴の動揺に対し、矢場は寄り添い、

神坂は根鈴の意識をそらすように行動指針を宣言する。


「ともかく、俺が前に出る。

彼の法術は君たちには届かせないよ。

MIF。君は空間歪曲に対して警戒・補正をしてくれ。」

「神坂が前衛か」

「のこりは……関係者として見届けてもいい。

行きたい奴は連れて行く。」


矢場と根鈴は二人とも手を上げる。


「じゃあ、全員で行こうか。

方針はこれでいいかな?

……というか。この空間に怪しい奴いるよね?対転移膜張ってる奴。」

よね?と言われても空間管理者しかその感覚は分からない。


対転移膜。

空間転移阻害領域の通称。

11次元を揺蕩う空間に対して、我々の活動する3次元軸を除いた8軸のベクトルを阻害する術式。

空間管理者の戦闘用術式だ。


空間転移を阻害する理由といえば現時点では候補が限られる。

後ろめたい、隠密行動をしたい、

何より、空間管理者級の襲来を防ぎたい。


「これもこれでなんで1級法術師が……。

明らかに管理者の奇襲を防いでるよな。後ろめたいことがあるらしい」


「諦めるしかないのか?」

「舐めるなよ、こっちは出力で突破する。

まあ、向こうも広域空間管理者の転移を防げるとは思ってないだろ」


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