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蘇生魔術と空間管理者たち  作者: なー
神坂たちの視点
14/33

横槍

◇◇

第1広域空間群-第12空間の基底世界、ADRI。

中世程度の技術レベルとしては発展した王都。その地下。


法術の断片を血眼になって探す彼らにとって、それは青天の霹靂だった。


「……国内に異常魔力反応!」

「未定義魔術です」

「法術か!」

「資料にありません!」

「解析!どんな魔術だ!」


水晶に空間開闢の歪曲が残っている空が映る。


「不明!空を曲げている……?」


先に展開した神坂・黒羽戦闘時の空間開闢の反応が探知された。

理解を超えた魔術に、室内の動きが止まり、全員の視線が水晶に吸い寄せられる。


「現場に近いものに連絡!確認させろ」


叫び声が響く。

部屋が騒然とし始める。


水晶がまばらに光る部屋。

ほの暗い地下、点在する水晶がまばらに輝く中、

中央の大型水晶に記録されていた通信魔術が行使される。


「僕が行くよ」

「分かりました。座標は……」


◇◇

第1広域空間群-第12空間。基底世界にて。


未来から撤退してきた法術師連合総帥。

「根鈴さんの希望を共有した現時点が干渉に適当と判断しました。

あと、訂正します。この戦力だけではなく、未来で組織した連合軍が敗北しました」


われわれが、敗けた──?


衝撃がここの4人、神坂・MIF・矢場・根鈴を貫く。


「最終的に黒羽の開闢空間、そこに建設された要塞に攻撃部隊が決戦を挑む。

ここまではよかったんです。

戦闘中、彼らについたものが多数いたんです。

まずは、その原因の洗い出し、および戦力の再選定をしなければ」


「待った。その前に未来では戦闘が起こったのかよ。」

「さっき逃げ帰った黒羽が、まともな組織的抵抗だと?」

「孤独に戦ってくるものだと思っていたが」

“戦闘”という言葉に反応する管理者たち。

黒羽の行動力、戦力を見くびっていた分衝撃は大きい。


「味方を手に入れたんですか?」

そんな中、根鈴だけは複雑な顔をしている。

元弟子として、同級生として、彼に共感する味方がいる嬉しさが同居している。


根鈴の胸に浮かんでいたのは、裏切りでも敵意でもなかった。

むしろ「彼に味方がいる」という事実が、どこか安堵にも似た温もりをもたらしていた。

師としての黒羽、同級生としての黒羽。

あの時の優しさを知る自分にとって、それは恐れるべきことではなかったのだ。


「xectも対処しかねているのか、なるほど。

この時間軸はまだxectが過去改変による試行を繰り返している段階か。

この時間軸では解決できんとみるべきか?」


つまりこの時間軸でも敗北するかもしれない。

沈黙が下りる。

しかし、それはすぐに破られることになる。


神坂がふと跳ねるように顔を上げる。

「……!基底世界の住人!

なぜここまで探知できなかった!」


他の4人も今気づいたかのように、神坂の視線方向を見る。


「待て、神坂曰く基底世界の住人ってまずくね?まさかADRIか?」


「……xectさん?知らなかったのか?」

「……いえ。黒羽の目標である彼らに認識してもらおうかと。

……むしろ、だからこそこの時点に介入しに来たんです」


そういっている間にも、気配は接近してくる。

「誰だ。……ここには何もないはず。

何を嗅ぎつけた?」

MIFが気配に対して威圧する。


しかし、その気配はそれを気にせずにあっけらかんと旧知と話すように語り掛ける。

「空が曲がっていたという報告を受けてね。

是非見てみたいと思いましてね」


5人の視線を受けて、微笑む一人の男。

「……もしかして、僕ってADRI内で英雄になるんじゃないかな?

見つけたよ、法術師」

基底世界、先進技術解明機構(A.D.R.I:Advanced Development and Research Institute)。

その、諜報員だった。



渦中の男が優雅に一礼する。

「初めまして、法術師諸兄。

ADRI所属諜報員、ルノー・シュワルツェ」


◇◇


この混迷の中、神坂は思考していた。

ルノーが探知を逃れたトリックはなんだ。

まず、前提として、ここにいる法術師たちは胞構造隠蔽派。


胞構造隠蔽派と、胞構造君臨派とは。

基底世界側に胞構造を明かすかの議論の派閥。

ここにいる者は全員隠蔽派だ。


で、当然、広域空間管理者として、基底世界側の住人の接近に対して警戒はしていた。

今事象はルノーがそれを突破してきた形だ。


警戒を具体的に説明すると、魔力場、読心領域を広範囲に展開していた。

魔力場とは。透過性の高い魔力を放散。一定距離で自分に帰還させて回収。

透過の偏差によって周辺環境を解析する。魔力によるレーダーだ。


読心領域とは。広範囲に読心術(2型)を展開。

この媒体は透過魔力。あれ、魔力場と被ったと思うかもしれないが。

これに関しては意識体の検知に特化している。

ニューラルネットワーク取得・解析まで含む術式である。


さて、本題。トリックを考えよう。透過性の高い魔力を弾ければいいか?

違う。この異常を感知するのが魔力場だ。

魔力を相殺して、改めて攪乱用の魔力を発振する?

どうやるのそれ?魔力場の展開している術者の座標もわからないのに。


魔力吸収・散乱性が低いタンパク質による肉体?

うーん。目の前にいても認識が薄いし、これか?


しかし致命的な隙だな。基底世界の住人にここまでの接近を許すとは。

この騒ぎが終わったらこの実例を共有して対策するか。


◇◇

~矢場視点~

第1広域空間群-第12空間。基底世界にて。

ルノーに混迷に叩き落された法術師5人とその犯人。


おいおい、いいのかよこれ。基底世界に情報が洩れるのでは?


MIF「検知できなかったのは仕方ない。

なぜ、は後で考えよう。……どうする?」


神坂「仕方ない。彼の記憶を処理する。

《記憶干渉》

《ニューラルネットワークに干渉》……」

神坂の目が鋭くルノーを突き刺し、術式を立ち上げる。

脳組織、他人の体内の分子操作のために集中をしているのだ。


が、直後に制止される。

xect「待ってください。先ほども言いましたが、

……彼らも巻き込みましょう」


隠蔽派として、この接触にはさすがに神坂ですら危機感と焦りを秘めている。

それは記憶干渉を制止した総帥にすら向かう。


神坂「……。《記憶干渉を停止》

なにか、考えが?」


しかし、法術師連合総帥xectは静かに応じる。


xect「黒羽に狙われている以上、彼らを蚊帳の外にしておくのも考え物です。

後々、基底世界文明が胞構造を認識したときのために、ここで協力しておくのもいいのでは?」


MIF「胞構造隠蔽派としてそれでいいのか?」


xect「私はそもそも中立派ですよ?緊急時です、臨機応変に行きましょう」


神坂「臨機応変ねぇ。ま、後から記憶を弄るっていう最終ラインもあるしいいか?」


MIF「あなたたちはどう思います?」


こっちに振られた。

上位者の方針に投票権あるのか?

どっちにしても神坂の最終手段もあるしいいのでは?と思うけど。


矢場「いいと思う」

根鈴「私もです」


神坂「総帥がそういうのならば、……了解」


ルノー「話はまとまりましたか?」


自分の記憶に干渉されるとか話していたけど。神経図太いなこいつ。

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