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蘇生魔術と空間管理者たち  作者: なー
黒羽の視点
10/33

乱入者

南下side


南下は空間転移によって別空間に転移してきていた。

胞構造空間群内の第3広域空間群・第8空間。

基底世界の文明は純科学文明。核融合炉を実用化したレベル。

人工衛星をやっと実用化し、恒星系外にいくつかの探査機を送った程度の宇宙技術だ。


あまりに空間異常がないので、文明を見守るはずの法術師たちは宇宙戦争に明け暮れている。

基底世界の文明に探知されないよう、異空間である開闢空間で。


黒瀬(広域空間群管理者)は認識しているのかというと。

認識はしていて、黙認してる。「公認の娯楽」扱い。


法術師たちは2ないし3陣営に分かれて戦闘。

ここでいう法術師はここの、第2広域空間群・第2空間所属の者だけでもない。

他の空間の暇を持て余した法術師たちの参加も歓迎している。


つまり、ここは仮想戦争専用異空間。


基底世界(基底文明のある空間)では魔術行使は厳禁。


出力制限したレーザー砲のみの戦争や

法術の制限がなく艦載法術師が制空権を左右する戦争もある。


──この時、ここは純科学兵器のみ、のレギュレーションにて仮想戦争を行っていた。

ある程度の情報量により星空を孕んで創生・開闢された仮想戦争用の開闢空間。


そこにて10光秒の距離を隔ててにらみ合う宇宙艦隊。

片方は蒼、もう片方は赤にペイントされた艦隊の内、

蒼の艦隊旗艦、ブリッジに空間管理者・橋明は10秒前の敵艦隊を肉眼で眺めて頬杖をついていた。


「さて、いつも通りの戦術でいいかな?

ECM・ECCM準備。合図に備えろ」


艦体全艦が足並みをそろえ、推進する。

いつも通りの戦術。彼がそういう通り、何度も行われている仮想戦争にたいし、

彼は気怠さを隠さない。


「射程内に入り次第、射撃開始。

全砲門開いておけよ」


右翼から光が伸びる。


「おい、まだ射程外だぞ。誰だ?」

「新任艦長の砲艦です」

「……まあ、よく目立って恥をかいただろう。いい経験だ」


もうそろそろ、互いの射程内に入るな。


「機関減速。シールド艦を前に出せ」



ここで仮想戦争のレギュレーションを紹介する。

仮想戦争とはいえど、撃ち合うのは殺傷力のある兵器だ。

死傷者を抑えるため、法術師が艦体に纏わせる結界を破ったら撃沈判定。


そして旗艦に撃沈判定が下れば終了。敗北。

という形だ。


というわけで。

旗艦の前方に艦隊のシールド艦を配置するのは当然だ。

シールド艦が橋明の眼前で防御陣を形成するや否や。


「敵艦隊、発砲!」

「こちらも攻撃しろ」

「対艦ミサイル検知。この艦に誘導されています」

「迎撃。こんな序盤から弾薬を使いすぎるなよ」


旗艦側面から光の雨。そこに光が逆流するように突入して、

爆発。


「──前が見えねえな。爆炎による電波妨害に警戒しろ」

「──突入艇を検知!接近してきます」

「あちゃー。爆炎の影から突っ込んできたかー」


と同時に。船全体が揺れる。前方を見ればシールド艦の表面で折れた光の軌跡。

敵艦隊の砲撃がシールド艦に当たった。

まあ、この程度では平気だが。


しかし、その隙に突入艇に取りつかれた。

防御銃座が迎撃しようと躍起になって光の雨を降らせる。


「やはり乱戦になったか。

……こちらの突入艇は?」

「敵艦隊の懐に入っています」

「……普段通り、敵艦隊に接近するぞ」


もう少し引き付けて……。


「主砲の有効射程に敵艦隊を捉えました」

「発射。連射速度を見せつけてみろ」

「了解!」


艦隊全体から光が伸びる。

が当然、向こうも撃ち返してくる。

光の筋が交差する。


「艦隊左翼、駆逐艦D-14撃沈判定!」

「艦隊右翼、巡洋艦C-5中破!」


被害が出てきた。仕事を始めるか。


敵側は撃沈した艦には射撃は禁止。撃沈された側は艦内の法術師、

もしくは旗艦の空間管理者に安全圏まで転移してもらう。

こっちでは橋明の仕事だ。


座標定義。目標は左翼駆逐艦D-14。半径200メートル。

空間転移。


と、被害を受けた友軍の退避に集中していると。


「敵艦隊、前後に別れました!

手前側のグループが吶喊してきます!」

「レーダーに影!艦載機です」


おっと?

前衛の艦載機だろう。手数を増やしてきたな。


「本艦に艦載機接近!数5!」

乱戦状態に入った。こうなると戦艦は弱い。

えーと?今は艦載機に取りつかれていて、敵艦隊は前衛と後衛に別れているな。


いつもの戦術、いつもの撃ち合い、いつもの突入艇。

普段通りの流れ。様式化され、半ば飽きかけたそれに、

今日に限っては異常事態が発生した。

退屈なはずの舞台に、突然、筋書きにない幕が降りてきた。


使わないはずのアラート。空間歪曲アラームが艦橋に鳴り響く。


「直上に空間歪曲!

超空間転移です!」

「は?このタイミングで?

それよりそんな予定も予告もなかっただろ。

向こうの新兵器か?」

「不明です。少なくとも敵艦隊は空間歪曲には関わっていません」


「敵艦隊、空間歪曲に発砲!」

「空間歪曲の強度増大中」

「ECM解除。射撃停止しろ。

明らかに異常事態だ。向こうの旗艦に通信」


星空が歪む。何が出てくるのか。どこからなのか。何の情報もない。


「敵艦隊の砲弾、消失!」

「解析しろ」


目前のモニターがズーム。軌道演算が可視化され、

重ねあわされ、正しい事実に収束する。


「解析結果出ました。力学結界です」

「……いや、法術師かよあれ。

通達しろよ、仮想戦争区画だぞここは。

現に撃たれてるし。文句は言わせんぞ」


モニターの中で砲弾の破片が周囲にきらめく。

爆炎に照らされて星空が局所的に濃くなる。


◇◇


「……ところで敵艦隊の応答は?」

「──ああ、悪い悪い。少し手間取った」

敵……いや、敵役の艦隊旗艦艦長、空間管理者LXだ。

相変わらず軽薄な印象だな。


LXは続ける。

「──……悪いついでで言うと、俺らあいつに発砲したんだよな。

砲術長がガチで焦ってたぞ」

「まあ、互いが互いの新兵器と疑っていたからな。

向こうが予告してないのが悪い。

双方ともに予想外だ。フォローしておけ」

「──了解っと」


そこに割り込む第三の声。

──「まあ、そうだな」

空間の、背景の歪みが収まった後には一人の人型が浮いていた。


……驚きはない。法術師である以上生身で電波通信くらいできるだろう。

それより。


「突然出てきて、どこの所属だ?」

──「第2広域空間群・第2空間・準空間管理者・南下だ」


──なぜ、準管理者級がこんなやり方でここに来た。


「参加希望か?悪いがもう締め切ってる」

まあ、無いだろうけど。だったらまず通信をよこすはずだし、礼儀だ。


──「いや。あんたらを本物に招待しに来た」


◇◇


仮想戦争に明け暮れる俺たちにとって“本物”とは仮想ではない戦争のことだ。

日常が変わる希望を心の奥に感じる。ただ、


「それで来たのが準空間管理者?」

俺たち空間管理者二人からしてみれば申し分しかない。


状況から読心せずともわかる。こいつの目的は。

「つまり、戦力不足だから拡充のための勧誘だな」


本当に俺たちを使えるのかという疑問もある。

とはいえ、本物の戦場に関わりたい気持ちもある。

というところまで考え、肝心なことに気付く。

「というか、本物って何するんだ?」


南下は口角を上げる。

「法術師連合への反逆だよ」


法術師連合への反逆。

それは、広域空間群管理者以上も、特に神坂が敵になる。

格上の、さらに上澄みが間違いなく敵になり、上澄みではない格上も十分脅威だ。

──無謀だ。しかし、それゆえに惹かれる自分もいる。


迷っていると背を押しようにLXから声がかかる。

「──乗ろうぜ橋明。退屈な仮想戦争よりよっぽどマシだ。

ただし条件がある」


◇◇


LXと奇しくも同時に空間転移。

この仮想戦争を管理する2人が乱入者と星空の中で向かい合う。


その直後、LXが南下に切り出す。

「俺たち直々にお前の意思を図らせてもらう。

無制限の法術戦で確かめてやる。」

結局2対1。しかも、空間管理者2と準空間管理者1だ。

ということで。


「もちろんハンデをつける。

そっちの勝利条件は二人の魔術のトリックを暴くこと。

自己紹介も兼ねられていいだろう?

敗北条件は……そっち側が気絶するまで。手加減はしてやる」

まああれだ。彼らの“本物”に参加する前にデモンストレーションだ。


「ああ、それでいい。始めよう」

双方にとっての前哨戦、“本物”が幕を開ける。


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