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Love On Ice  作者:
1/4

Daily life

教師に呼び出され、職員室にいた。

呼び出された理由なんて専ら“あの事”。

期待というプレッシャーに未だ私は慣れなかった。

「次も期待してるぞ。桃代。」

「はい。」

はい、と言うしかない。

他に私には選択肢はない。

私は期待されるから滑るのではない。

滑りたいから滑るんだ。


職員室から出るとにこにこした顔で友人の稲田莉子が私を出迎えた。

葉央はお遅いよー!!」

ふと考えた。

職員室で拘束された時間はたったの10分。

遅いと言われる筋合いがちっともない。

「どしたの?そんなに興奮して。もしかして発情期?」

そう。彼女は何故か興奮している。

「ちっがーう!テレビよテ・レ・ビ!!」

「はぁ?やっぱりどっかで頭打ったとか…。」

真剣に心配になってきたぞ、おい。

「だから違うっての!なんかトロロさんの笑ってコタエテが来たの!!」

「…まじで?」

「大まじ。」

「なんでそれを早く言わないんだー!!!!!」

私は莉子にアッパーを食らわす。

グフとか言ってるけど気にしない。

「で、どこよ!どこにいるのよ、カメラマン!」

「はーちゃん、アンマリユラサナイデ…。」

私はガクガクと莉子を揺らしながら尋ねた。


「んなことはどーでもいい!あぁあたしもついにテレビデビュー!?きゃー!一発ネタは例のあれでいいかしら!?」

莉子がダウンしてる中、人の影が私の視界に入った。


見上げると般若がいました…。


「このお馬鹿!!人が遅いからわざわざ迎えに来てやったら莉子はダウンしてるわ葉央はトリップしているわ…。たくこの馬鹿者ども!そこに直れ!!」


ダウンしていた莉子も私もすっと敬礼のポーズをした。


「莉子!あんたは葉央を連れてこいって言ったよね?あ゛ぁ?」

怖いです、紫苑サマ。

あに濁点つけないで…!!

「んで、葉央!あんたはどうして大人しく連れられてこないわけ!?」

ひぇー!

あなおそろしや!あ!な!お!そ!ろ!し!や!

「じゃ、行くわよ!!」


私と莉子の首根っこをつかんで、紫苑こと春田紫苑に引きずられた。

ちなみに初めて名前聞いたとき「おしいねー!田がなければハルジオンなのに!」って言ったら「お前の一族を末代まで祟ってやる。」と言われた。

もう、紫苑ちゃんったらツンデレなんだから☆


んで、教室に入ると、カメラマンがいた。

「すっげー!まじだったの!?きゃー私の顔綺麗に映ってるー☆?」

と言って右手は頭、左手は腰といううっふーんなポーズをとる。

そんなことをかましたら紫苑サマに殴られた。

「いったー!!紫苑ちゃん加減してよー!あたし、そんな趣味にまだ目覚めてないんだからー!」

「カメラマンさん。彼女が有名な子です。」

「ちょ、無視しないでー!」

「(まだ目覚めてない?まだ?)ち、ちょっと変わってる子だね…。」

「はーちゃん、泣いちゃうよ?いいの?」

「ちょっとどころか大分変わってますから。」

相変わらずの無視に答えた私は、

「紫苑ちゃんかくごぉぉぉぉ!!」

と無謀にも紫苑に挑んだ。

「じゃかあしいわぁぁぁぁぁぁぁ!」

堪忍袋の緒がきれた紫苑サマの右ストレート炸裂。

「グフォ…。や、ら、れ、た…。(バタン)」

「(君も十分変わってる)」

そうは思っても言えないカメラマンでした。


「で、なんでこの子が有名なの?」

「葉央!起きろ!」

紫苑の言葉にすくっと立ち上がるとまた敬礼ポーズ。

「イェッサー!隊長!それは私がスケートしてるからだと思われます!!」

「(た、隊長?)あ、あぁそうなんだ…。スピードスケート?」

「違うであります!!莉子軍曹!君に私の相棒を呼んでくるという任務を与えるであります!!」

「了解であります!葉央将校!」

私の言葉で莉子はすぐさま私の“相棒”を呼びに駆け出した。

ちなみに莉子は私たちが話してるときは隣にいると思われる貞夫(享年85歳)との談話に花を咲かせていた。

「(あの子も相当変わってる…。)で、相棒って?」

「紫苑大将!我が軍の軍事機密をしゃべってもよろしいでありましょうか!!」

「許可する。」

「(なんかめんどくせぇ…。)」

「アイスダンスであります!隊長!」

「(まだ俺は隊長なのね…。)アイスダンス?」

「氷上の社交ダンスのことです。日本でフィギュアスケートと言ったら男女のシングルがポピュラーですけど、ペアとアイスダンスと呼ばれるものもあります。彼女はそのアイスダンスの選手なんです。成績は去年の世界ジュニアで優勝してるくらいの実力者です。一応。」

紫苑が軽く説明する。

「(すごいじゃないか!!)へぇ。じゃあ相棒ってアイスダンスのパートナーってこと?」

私たちが話してると廊下からぎゃーぎゃー叫ぶ声が聞こえた。

私たちは声のする方向を見た。


「将校がって何だよ!!お前、きちんと理由を言え!!!」

少年が莉子のでこをバチンと叩く。

多分莉子は本当に「将校が」しか言ってないのだろう。

伝わんねぇよ、普通。

多分貞夫(享年85歳)が「呼んでるのじゃ」とでも言ってるのであろう。

「何でござるか!まさかそち、せい○中なのであるか!?」

「ちげぇええええ!俺は男だろうが!!」

「フムフム。これはまさかのツンデレのツンなのであるな!!デレはいつ来るのであるか?」

「お前まじ、何もしゃべんなああああああ!!!」


「(かなり苦労性の少年が来たな…。つうか今度は彼女忍者?)彼がそう?」

「うん。そうそう。」

「(あれ、こっちも軍隊ごっこおわり?)っていうか名前聞くの忘れたんだけど、聞いていい?」

「え゛ー。」

「駄目?」

「いーよー。」

「(いいんかい!)」

カメラマンは心の中でツッコム。

「香南高校1年桃代葉央。んであっちの少年があたしのパートナーの…。」

「片山狼だ。つうか勝手に紹介すんなよ。あほ。」

狼が私の言葉を遮って私にデコピンをかましながら自分の名前を言う。

「(でこ好きだな、おい。)遅いぞ、だーりん。」

「何がだーりんだ。はにぃ。」

私のほっぺたをつまみながら言う。

「ドメスティックバイオレンスはんたーい。」

「へぇ。いつ俺と夫婦になったんだよ。葉央。」

「んじゃただの暴力はんたーい。はーちゃんパンチ発動5秒前、4,3…。」

狼は慌てて私のほっぺから手を離す。

「ちょ、待て!まじやめろ!」

「(あ、放置なんだ…。お兄さん悲しい…。)」

「にーい、いーち。」

カウントダウンしていると、こぶしを振り上げていた紫苑サマが視界に入る。

「馬鹿共、夫婦漫才はやめろ。」

「「はい。」」


「(は、般若だ…般若がいた…!!)ああああああの、さ、君たち二人の練習風景に密着していい?」

「(あをどんだけ言ってんだこいつ。)いーよー。」

「葉央!お前、何勝手に承諾してんだよ!!」

私は背の高い狼を見上げるのが面倒なので上目遣いで聞いた。

「駄目なの?」

「(うっ。)だ、駄目じゃねぇけど。」

「(この少年はあの容姿は綺麗だけど奇妙な少女にホの字なのか…。)じゃあオッケー?」

「オッケーオッケー。」

私は体でOを表現する。

すると貞夫(享年85歳)と話していた莉子がそれに気付き、Kをした。


こうしてこのカメラマンは彼らの練習風景に密着することになった。

「(無事終わるんだろうか…。)」

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