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異世界運輸安全委員会  作者: 都津 稜太郎
2.運輸安全委員会
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4.事故記録その3


 飛行規程をサラッと読み、元の場所に積み上げ直した。

 通し読みしただけでも、そこそこの時間が経過しているように思えるが、室内の明かりと残って忙しなく仕事をしている職員の人数が、それを感じさせない。


 次の山に移動して手に取ったのは、この周辺の地図だ。だが元の世界でチャートと呼ばれていたような、航空に特化した地図というわけではなく、ただ町の場所や道を書いた地上の地図だった。

 他の物も見てみるが、普通の地図しかない。しかも正確に測量したわけではなく、RPGとかにあるような丁寧な手書きの地図だ。


「ウェストランド伯爵を呼んでいただいてもいいですか?」


 見張りは無言で頷き、呼ばれたリアがこちらの部屋に、眠そうな目をしながら入ってきた。


「どうした」

「随分と眠そうですね」

「あぁ、今は…夜の11時か、昨日から寝ていないものでね。正直なところ眠い」

「寝ないと倒れますよ!?」

「そうだな。でも呼び出したのは君だろう?」


 冗談めかして言う彼女は、表情筋が疲れているのか、うまく笑えていなかった。その姿に、パイロットの仕事をしながら試験勉強をしていた、自分が重なった。


「確かに。では、パパっと終わらせましょう」

「そうしてくれ」

「この地図なんですが、パイロットもこの地図を使っているんですか?」

「あぁ、そうだな。それぞれの町の一番目立つ建物が書いてあるだろう?それと方位磁針を使っているんだ」


 とういうことは”地文航法”を使っている。元の世界では電波施設やGPSの発達によって、パイロットの免許を取る時に使うくらいだ。なかなか古い基礎技術を使っている。


「じゃあ、今回の事故が起きた、この”フロドラの森”ってのはこれですよね」

「そうだな。大体ここら辺、森の中央部で機体の残骸を見つけたんだ」

「うーん、この森には何かあったりします?」

「”何か”とはなんだ?」

「例えば、大きな動物とか」

「そうだな、うーむ。正直私はここら辺に詳しくないのだ。ずっと王都で暮らしてきたしな」

「じゃあ、知っている人とかここにいませんか?」

「”フルドラの森”に詳しい者か、委員会の中にいないか探してみよう」

「よろしくお願いします。あと、機体から他の生物の残骸があったとかの話はありませんか?」

「それはまだ調査中だな、分かったら教えよう。君も休んだ方がいい」

「そうですね、もう少ししたら寝ます」

「じゃあ、また明日」


 就寝の挨拶を残してリアは出て行った。睡眠を取ることを勧められたが、今のところ特に眠気が無く、その後もひたすら資料を読み込み続けた。こちらの世界で発展し始めた、航空の世界が面白かったのも、ひとつの理由だ。

 時々眠気が襲ってきたところで、長椅子で横になった。ふと視線をドアの方向に移すと、いつの間にか見張り役の二人は交代していた。



「おはよう」

「うぅー、お、おはようございます」


 寝ぼけ眼をこすると、ゆがんだ視界に眼鏡の美人が映った。ウエストランド伯爵だ。

 窓から陽の光が差し込んでいて、室内を明るく照らしていた。光の具合からいうと早朝といった所だろう。


「ご注文の詳しい人を見つけたぞ」

「え?あぁ、昨日のですか。ありがとうございます」

「シャワーと朝食に行ってこい。君の準備ができ次第呼び出す」

「わかりました」


 見張りにしっかりと”見張られ”ながら身支度を終え、委員長室に戻ると二人の女性の後ろ姿があった。


「戻ったか。紹介しよう、フロドラの森周辺の村や町出身の二人だ。総務課、オウルポリ村の”ユスティーナ”と、航空課、タンスーラ出身の”ルル”だ」


 紹介されて振り返った二人は息をのむような美しさを持っていた。ユスティーナは金髪碧眼の美女、ルルは褐色白髪のこれもまた美女だ。この世界に来たことを、誰にかは分からないが、初めて感謝できる気がする。


「見とれているところ悪いな、説明を続けていいか?」

「あっ、すいません!お願いします」

「二人はエルフだ。元々先祖はフルドラの森に棲んでいたので、我々よりは詳しいはずだ」

「エルフですか?」


 エルフといえば、ファンタジーに出て来るあのエルフだろうか?


「ん?君の世界にはエルフはいなかったのか?」

「いませんでした。物語の中に出て来て、容姿端麗で長命ということしか」

「ほう、容姿端麗は間違いないかもな。だが長命なのは違うかもしれんな、人間と変わらん」

「なるほど、そうなんですね」

「説明はこれくらいでいいだろう。質問はなんだったかな?」

「えーっと、フロドラの森になんか大きな生物とか、鳥の群れがいるとかの話はありませんか?」


 二人が記憶を探るように、明後日の方向を見て考え始めた。先に口を開いたのは、ルルだ。


「もちろん、森なので沢山の鳥が住んでいます。なので鳥の群れというのであれば沢山飛んでますね。大きな生物というのは、分からないです」


 ルルには心当たりがないようだ。ユスティーナに視線を送るとゆっくりと喋りだした。


「まずは”フロドラ”の森の由来からお話いたします。何個か説がありますが、フロドラというのは、群れた龍という意味の"Flock of Dragons"から来ているという説があります」



  

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
先生、横文字は日本語に入りますか?使用言語は日本語でも普通に横文字も使うし人名は英語なんだ。田中ユスティーナや山田ルル53世なんていないんだ
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