13.竜巣
自分とリア、ヴァネッサ教授による調べ物は、結果から言ってしまえば存外早く結果を得ることが出来た。
大陸ドラゴンは高い山の中腹にある風の当たりづらい場所に巣を作り、そこで夜に眠る昼行性の生物で、ここら辺では軍が竜騎士の乗騎として利用している以外、野生ではいない。そして樹海の付近にある高い山は少なく、条件に合う山は2つ程度だった。
これが分かった後の我々の行動は素早く、人数を集めて一つ目の山へ翌日に向かい、1週間に渡って捜索をしてみた。こちらの山では特にそれらしい痕跡を見つけることは出来ず、更に3日間の追加捜索も空振りに終わった。
そして2日の休憩の後に次の山に向かった所で、山麓に食事の痕跡を見つけた事で我々は確信を持って捜索を始める。更に2日が経った昼、我々は山の中腹にある風を避けることが出来る窪みに来ていた。
「ヴァネッサ教授……これ」
「あぁ、多分ここだねぇ」
目の前の窪みには、大きな生物が居座っていたことを示すように、跡が付いていた。そこから少し離れた場所には、動物の骨や巨大な糞が落ちている。
「そしてここはトイレというか、ゴミ捨て場と」
「そうだ。この状況を見る限り、間違いなさそうだね」
満足げに頷いているヴァネッサ教授は、完全に事故調査の為というより、新しく生物が発見することが出来た喜びの方が大きそうだ。
「じゃあ、あとは証拠を納めるだけね。隠れて待ちましょう」
ヴァネッサ教授とは対照的にリアは、しっかりと目的を達成しようとしてるようだ。周囲を見回して隠れて待つことが出来そうな場所を探している。
正直に言ってしまえば、そんなに大きいドラゴンとやらと対面したくないのだが、今回の調査に必要な事なので仕方がないと割り切るしかなかった。今は自分達3人以外にも、護衛と見張りを兼ねた二人の騎士がついて来ているのが心強かった。
「……来た」
その言葉に重たい瞼が一気に見開いた。夕日に照らされているヴァネッサ教授の瞳が、遠くから徐々に大きくなり始めたドラゴンを捉えて離さない。そのドラゴンは雄大で優雅な羽ばたきと共に、ゆっくりと近づき我々の頭の上を二回ほど旋回した後、目の前にある寝床に降り立った。寝床の周囲を見回しているそのドラゴンは、岩陰にいる我々の姿を悟ったようで身動きを止める。
「まずいか」
思わず出た言葉に反応して、隣にいた騎士が腰に佩く剣に手を掛けた。その姿を見ても、先程まで感じる事の出来ていた心強さは一つも感じない。だが、ゆっくりと剣を抜こうとする騎士をヴァネッサ教授が止めた。
「待って、こっちを見てるが攻撃してくる気配がない……それに、その剣じゃ無理よ」
ドラゴンはヴァネッサ教授の言葉通りに、こちらをしばらく見つめた後、寝床に座った。その姿を見て、ヴァネッサ教授とリアがゆっくりと刺激しないように、鞄からフィルムカメラを取り出して構える。
2人は大陸ドラゴンが姿勢を変える度に、シャッターを次々と落としてドラゴンの姿を記録していく。最初にカメラの存在を教えられた時には、この世界にもカメラがある事に驚いたが、航空機や車がある世界なのだから当然だともいえるのかも知れない。
二人が熱心にドラゴンの体を撮影している姿を見ながら、自分もドラゴンを肉眼で確認すると、リアの言っていた通り体の右側に大きな傷跡があり、それは比較的新しく見える生々しいものだった。
ドラゴンはその傷を庇うように寝床に横になると、暗くなり始めた周囲に合わせるように目を閉じる。カメラもこれ以上暗くなると使えなくなるという事で、我々はその場から離れて下山を開始した。
「これで……報告書が書けるかも?原因も分かれば対処しようがあるかもしれない!」
今回の成果にリアは納得しているようだった。だが、自分にはもう少し気になる所があった。
「それにしても、何故ここに大陸ドラゴンが居るんでしょう?生息地は他の大陸なんですよね?」
「そうだな」
ヴァネッサ教授の返事の歯切れも悪い所を見ると、思いつかない様だった。
「しかもドラゴンは海を怖がると」
「あぁ、もともと長い時間は飛べないのがドラゴンという種だからな。飛ぶための効率が鳥とかに比べて悪い。もしかしたら隠れていただけで、この大陸にも元々生息していたのかも知れない!それを帰ってから調べようかと思ってな!」
「そうですか……」
だがあんなに大きいドラゴンが今まで見つかっていないのは、些かおかしいと思わざるを得ない。
「自分も少し調べてみます」
この調べ物の先はもう既に決まっている。
いくら温厚なドラゴンといえど、知らない生物が寝床の横にたむろしていたら、寝ないか追い払うとしか思えない。何が言いたいかというと、あのドラゴンは人の手が掛かっていたのではないかという思考に至ったのだ。
導き出された考えでは”大陸ドラゴン”をこのアグスタ大陸で扱っているのは軍のみで、そこに当たってみると何かヒントになる様な事が得られるような気がした。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




