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異世界運輸安全委員会  作者: 都津 稜太郎
2.運輸安全委員会
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12.竜影


「うわぁ!!なんだ!?」


 慌てた様子のウェイド機長は周りを見回し始めた。


「ウィンドシア、突風でしょう。慌てないでくだ……え?」


 機長を落ち着かせて、窓の外に視線を向けると、見た事のない大きさの翼。それも鳥のような羽毛がある訳ではなく、地肌の様なものが見えた気がしたのだ。


「今のは……」

「ドラゴン……?」


 ヴァネッサ教授に正体を尋ねようと後ろを振り返ると、全員が右の窓に張り付くようにして外を見つめている。自分を見張る役割の者達でさえ、例外なく小さい窓に張り付いていた。

 一体何が起きているのかと、自分も近くの窓に近寄り外を眺めてみると、そこには雄大な空を優雅に飛行するドラゴンの姿があった。ゆったりと翼をはばたかせて空を飛行するその姿は、空の王者と呼ぶにふさわしい姿だ。我々の存在を気にも留める様子がないドラゴンは、翼を折り畳み、また雲の中へと消えてゆく。


「ヴァネッサ教授!」

「あぁ、間違いない。今のがドラゴン……大陸ドラゴンだ」

「なんでこんな場所にいるんでしょうか?」

「それは分からないが、間違いない!これは大発見だぞ!!」


 ヴァネッサ教授が、これまで見た中で一番喜んでいるのは間違いない。だが、今にもこの機内で小躍りし始めそうなヴァネッサ教授の奥で、リアが少しばかり悩んでいるような表情をしていた。


「ウェストランド伯爵、どうしましたか?」

「……今のドラゴン、怪我をしていた気がするんだ」

「そうなんですか?傷とか?」

「右の翼がボロボロになっていた。それに、雲の中へと消えていく直前、クルリと回った時に右側の体が見えたが、傷跡のようなものがあった」


 となれば……あの大陸ドラゴンと航空機が空中衝突した可能性が増すという事だ。だが、証拠を確保するために、どうやってもあんな巨大生物に航空機で近づいて写真を撮るだとか、スケッチすることが出来るとは思えなかった。


「確かめたいですけど……空中でアイツに会いたくないですね。次に調査されるのが我々になるのだけは勘弁です」

「そうでもない!見ることが出来るはず!!」


 先程からずっと表情を輝かせたヴァネッサ教授が、話に割って入って来た。リアと自分が怪訝そうな顔で見ているのもお構いなしに、彼女は話を続ける。


「大陸ドラゴンだという確証が得られた今!大陸ドラゴンの生態を調べ上げて、寝床に張り込めばいいのだ!」


 どうもヴァネッサ教授は、事故の調査の為に大陸ドラゴンの姿を確認したいというよりは、この大陸で生息が確認されたドラゴンの研究をしたいという欲求がありありと見えた。だが、彼女が言っていることは間違っているわけでも無いので、認めるしかない。


「確かにそうですね。姿だけでも確認できたので、取れる選択肢も広がりましたし。いったん王都まで帰りましょうか」


 IMC状態から脱し調査の参考となるドラゴンを目撃した我々は、王都への帰還を急いだ。だが、夜の飛行は困難という事で、燃料補給をした小規模空港の近くで宿を借り、一夜を明かしてから王都へと帰還した。


 久しぶりに宿でゆっくりと睡眠を取り、体が少し軽くなった我々だったが、王都に帰ってからは更に仕事の連続となる。

 ヴァネッサ教授は早々に自分の研究場所である王都大学へと「沢山調べて来るから、少し待っていてくれ!」と言い残して旅立ち、自分とリアは引き続き事故調査委員会の会議室で、資料をまとめていくこととなった。

 また会議室に缶詰なのかと嫌な気持ちになったが、それでも今回大陸ドラゴンに遭遇したことで、航空機と巨大生物の空中衝突という方針で、報告書を書く事が出来るのはこれまでと違って、大分進歩したと言える。


「それにしても、あんなに大きなドラゴンがいるとは」


 椅子によりかかるように背を伸ばしたリアが、感心したように言っている。


「ウェストランド伯爵は、今まで見たことありました?」

「いや、本とか、寝物語の中だけかな……実際に見たのは今回が初めてだよ、だから少し感動した」

「そうですね。あんなに優雅に飛んでいるとは思いませんでした」


 少し時間が経った今でも鮮明に浮かぶその姿は、自分の中に十分なインパクトを残していたようだ。


「取り敢えず教授が戻って来るまで、出来る限り報告書を纏めておきましょう」

「はい」


 結局次に教授が姿を現したのは、調査から帰って来てから1週間が経った夜中だった。ヴァネッサ教授は、研究員をこき使って大量の資料を運び込み、会議室の中には紙の山が出現した。


「一応、これは王都大学にあった全てのドラゴンの資料に目を通して、関係があると思われるものを抜粋した物だ」

「抜粋して……この量ですか」

「そうだ、だから君たちにも手伝って貰おうと思ってな」

「わ、分かりました」


 正直な気持ちとしてはもっと薄い資料だけが良かったのだが、そうもいかないらしい。いつの間にか会議室の壁を埋め尽くすように積み上げられた大量の資料に囲まれて、この事故に関係のある最後のピースであろう大陸ドラゴンについての調べ物が始まる。

 


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― 新着の感想 ―
淀みいく虚構の中に影を潜み研ぎ澄ました朴◯美声の空の王者(エアマスター)、大陸ドラゴンの延髄突き割る1000tOONの紙の山。解読にエキストラ60人ほど動員したほうがいいんじゃないかい?
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