8.王都空港
王都近郊にある空港には、運輸安全委員会の建物から2時間ほどで到着した。
移動には魔動車と呼ばれるものを使っているのだが、明らかに見た目は元の世界であったような昔の車で、違和感は覚えない。この魔動車とやらにも沢山の共通点が有りそうでとても気になるが、魔動車について質問しようにも、車中ではヴァネッサ教授のおしゃべりが止まらなかった。
「それでだな、この鱗というのが1000年前にいたと言われているドラゴンの外皮と酷似していて…「あの、ヴァネッサ教授」」
「ん?なんだここからが良いところだぞ!更にだな、このドラゴンというのが発掘された化石によると、全長「すいません、ヴァネッサ教授」」
「だから何だ???」
「王都空港に到着しました」
「ほう、熱中していて気が付かなかったぞ!早くいってくれたまえ!」
「はぁ~、行きましょう」
意図せずため息が漏れてしまったのも仕方ないと言えた。ヴァネッサ教授は、かれこれ2時間ずっとこの調子だ。あと後部座席にいたのは、ヴァネッサ教授に自分と、自分の見張り兼護衛なのだが、その護衛は教授に話しかけられても、軽く頷くだけでリアクションが薄かった。よって隣の席だった自分に全ての”お話”が降りかかって来た訳だが、これが毎回「これについて、坂井君はどう思う!?」などと聞かれて適当に聞き流すことも出来なかった。
「坂井君はこのドラゴンに興味がありそうだし、この短い間もこの私が説明してあげようじゃないか!それでだな、このドラゴンの全長が……坂井君?」
ヴァネッサ教授のお話に耳を傾けられなかったのは理由がある。
【運輸省・航空局】と書かれた建物の中に入り、がらんどうの格納庫を通り過ぎて外に出ると、自分の目の前には、どこか懐かしさを感じる風景が広がっていた。
吹き渡る風が頬を撫でるだだっ広い世界に、響き渡るタービンエンジン音とプロペラの高速回転による爆音。離着陸する航空機たちと、管制塔と思われる周辺で唯一高い塔が、忙しい航空通信を想起させる。
目の前の航空局の管轄のスポットには、少し小さめの双発の飛行機が駐機している。元の世界の機種で近いのを言えば”ビーチクラフト350キングエア”といった所か。まだエンジンは回っておらず静かに鎮座していて、その周りには人がいた。
何処の世界でも、空港の姿というのは変わらない物なのだろうか?すべてが懐かしい。
「……かい君、坂井君!」
「ん?え?あ、はい」
「いきなりどうしたのだ」
かなりの時間景色を見ていたのかも知れない。周りにいた人たちは、いきなり立ち止まり動かなくなった自分を、不審な目で見つめていた。
「いえ、とても懐かしい気持ちになったもので」
「立ったまま気を失ったのかと思ったぞ」
「それに近いかもしれません。走馬灯も見たような気がします」
「え?どういうことだ」
「冗談です。行きましょう」
そそくさと歩き始めた自分に、慌てて見張りの兵士たちが付いてきたのが視界の隅で見えた。
「初めまして、運輸委員会の委員長をしています。アメリア・アウグスタ・ウェストランドでございます」
「これはこれは、航空局・王都空港支部の支部長のキース・レイクサイドです。こっちは今回のフライトを担当する機長のウェイド・ウィズダムです」
「いきなりすいません!航空局の皆さん!よろしくお願いします」
「偶々機体と機長の体が空いてたので良かったです」
「助かりました」
「少し詳しいことについて、いったん機内で話しましょうか」
航空局の二人に案内され航空機の中で席に着くと、操縦席に座った二人の航空局職員と、最前列に座ったリアとヴァネッサ教授の話し合いが始まった。ドラゴンの生態やら、それによって飛んでほしい高度やらコースやらを事細かく、地図をもって話している。
そんな中でも自分の目に入ってしまうのは、操縦席のから後ろを覗き込んでいる二人の奥に見える、数多くの計器だ。今回事故に遭った”ライオネル330”の飛行規程には、自分のいた世界と大して変わらない計器の種類と数が記されていた。
この”ビーチクラフト350もどき”も機体が小型である分、計器の数は少ないが必要な物は確保されている。姿勢指示器、高度計に速度計、昇降計と燃料計に油圧計。どれもこの異世界の書類と自分の世界、両方で見覚えがあるものだ。
ドラゴンの話をしている四人の間に割って入り、ウェイド機長へアビオニクスについて片っ端から質問していきたい欲求にかられた。
後ろを振り返り二人の見張りを見てみるが、初めての航空機のようで不思議そうに中を見回していた。こちらの視線に気が付き目が合うが、明らかに余計なことはするなよという目線を貰った。
仕方ない。質問攻めはまだ我慢だ、帰ってきたら聞いてみよう。
「じゃあこれで、飛行しますね。予定時間は~……5時間といった所でしょうか」
「よろしくおね「もっと長くならんのかね!?」」
「無理ですよ、この機体は5時間半が限界なんです。もっと飛びたいのであれば途中で給油しなければ」
「それじゃあ1時間も調査できないじゃないか!」
「分かりました。近くの飛行場で一度給油しましょう」
「それで頼む!」
「ウエストランド伯爵、黙っておられますが、燃料代等々請求いたしますからね」
「うぅ~っはい。分かりました、お願いします」
散々ヴァネッサ教授が大騒ぎした後でやっと、飛び立つ段となったのだった。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




