6.調査結果
「どうなんでしょう?参考になったと言われれば、なりましたけど…。確かな証拠というわけではないですからね。断定はできません」
結局、美人エルフ2人の話は伝承や記憶だった。事故の原因を特定する要因になる様な物ではない。ただ、ドラゴンの話を聞いたことで可能性が増えたのも、事実だった。
「ドラゴンというのは、この世界ではそこらにいるものなんでしょうか」
「今この大陸にいるのは、大体2m位のものが主流だ。他の大陸に行けば、それなりの大きさのドラゴンもいるらしいのだが、この大陸の5m以上のドラゴンは絶滅したと言われている」
「なるほど…ちなみに機体の調査結果はいつ頃わかりますか?」
「あと2日~3日といった所だと聞いている」
「では、その結果が出るまで,
出来る事はないと思われます」
「分かった。では結果を待とう」
資料を読み込んで分かったが、この世界の航空はまだまだ発展途上で、事故原因を特定する手段やそもそもの安全確保が難しいのだ。 そもそも現代の航空は、先人たちの血と汗と涙で出来ている物で、まだ発展し始めたばかりのこの世界の航空業界に、当てはめるのは中々難しい。だが、自分がこの世界に来た以上、同じ歴史を辿って行くのをただ見ているというのも違う気がした。
これから先に出るであろう事故の犠牲者を、少しでも減らすこと。それが自分の使命なのかもしれない。
「調査結果だ」
2日後、その短い言葉と共に大量の資料が持ち込まれ、目の前の机はいつも通り書類の山となった。
「えっーと。この山はなんでしょうか」
「機体の調査結果だ」
手に取りパラパラとめくってみるが、内容も細かく中々重厚な量だった。ページを進めていった先にお目当ての調査結果があった。”機体の付着物”の項目だ。
「NO.1エンジンとNO.2エンジンに衝突痕…異様に硬い物が衝突したと思われる…又、生物の血も同様に検出されたことから、エンジンが作動中に衝突の可能性あり…ですか」
「あぁ、君の予想通りかもしれない」
「ですが流石にドラゴンといえど、回転しているプロペラに衝突したら、無事では済まないですよね?」
「そうだな、小型であればあるほど、他の動物と同じく弱くなるからな」
「だとしたら、その生物の破片とか死体とかが落ちてたり、付着してないとおかしいのでは?」
「それはそうだ。だが、現に見つかってない」
考えられる可能性としては、墜落した時に下にいた生物に衝突したという可能性だが、資料はこの考察には否定的だった。そもそも上空で両ENGが損傷したと考えているらしい。その証明についても書いてあり、特に矛盾なく納得できる内容だった。
そういう調査については詳しくないが、損傷の度合いとか焼き付き方とかで分かると書いてある。科学的に分析したのか、それとも経験則なのかまでは分からない。自分にとってここは完全に専門外だ。機会があれば聞いてみるが、今はこの資料を信じて分析していこう。
他に参考になる物としては、頼んでいた天気の資料だ。事故当時の時刻では、タンスーラからフルドラの森の反対側の都市まで、全体を厚い雲が空が覆っており、雨も降って視界が悪かったそうだ。という事は視界不良状態での計器飛行をしていた事になる。
飛行高度の変更があったのはその為だろう。そして、空を飛んでいた何かの生物と衝突していると分かった以上、雨などで直前まで姿が見えなかったと考えるのが妥当か。
「この資料とルルさんの話を合わせて考えると、上空はかなり視界が悪かったでしょうね」
「やはりきついのか?天気の悪い状態で飛ぶのは」
「計器を頼りにして飛行するしかなくなりますからね。私のいた世界では、その気象条件を飛行するのに免許が必要でした」
「そこまでか…」
「そこまでの物なんです」
ここまで会話を終えて、ひとつの考えに思い至った。
「今考えられるのは、視界が悪い状況で飛行していたKA132便が見えなかった為に、飛行中に何らかの生物と避けられずに衝突したという所でしょうか」
「そうだな。ここまでの話だと、君の説の可能性が高そうだな」
「でも、空中で航空機に衝突して無事に済む生物が何か分からないと…」
「私も生まれてこの方、この大陸でそんな生物の話は聞いてないしな」
「一応自分のいた世界でも3000ftを飛ぶ鳥は普通にいましたが、航空機と衝突して無傷な鳥は聞いたことないです」
「それは私も聞いたことが無いぞ」
「結局、生物学者の方に話を聞くまで分からないのでしょうか」
「そうだな、聞いてみるしかないか」
「そういえば生物学者さんの方は、いつ頃お話しできるんでしょうか」
リアはチラリとカレンダーと時計が掛けてある壁を見て、表情が明らかに変わった。
「あぁ、忘れてた!今日の午後だ」
「午後って…もう午後じゃないですか!」
慌てて準備を始めると、資料だらけになっている机の片付けが丁度終わったところで、一人の女性が案内されて入ってきた。個人的な偏見だが、髭面のおじさんお爺さんを想像していたので、少し驚いた。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




