トラップ 5 理由
バタン!
俺は刈谷がヤクザに追いかれてる姿を見た瞬間に思いっきりドアを閉めた。刈谷のお母さんに見せないためだ。
しかし、刈谷は明らかにこっちに着ている。
「竜也ー彩ー逃げろ!早く!」
くそっ。もう逃げるしかない。俺は彩の手を引き走り出した。刈谷は直ぐに追いついてきた。
「このまま真っ直ぐ行け。」
刈谷が息を切らしながら言った。俺と彩は言われるままに走る。
「そのまま左に行け。」
左に行くといろんな建物がせわしなく建っていた。
「刈谷ーこのまま行ってもいつかは捕まるぞ!早くなんとかしないと。」
隣にいる刈谷に向かって言った。はずだった・・・・
あれ?
刈谷がいない。それどころか彩もいなかった。
嘘だろ。
後ろからはヤクザがまだ追ってきていた。俺は刈谷と一緒に逃げていたのでもう仲間と思われている。ヤクザは俺の方に向かって走ってくる。
くそーなんで俺がこんな目に合わないといけないんだ。
また俺は左に曲がる。ダメだ。このままだと捕まる。捕まったら一体何をされるのだろう。嫌な考えが浮かんでくる。
その時俺は腕を掴まれ知らない建物の中に入っていった・・・
「はぁはぁ。竜也危なかったな。」
そこには刈谷と彩の姿があった。ヤクザたちの姿はもう見えなかった。
ここはどこだ?中はもう大分汚れていて使われていないビルのようだ。所々にスプレーで落書きがしてあった。
「刈谷。一体どういうことだよ。ちゃんと説明しろよ。」
刈谷はまだ「はぁはぁ」と言っていたがしっかり俺の目を見ていた。
「本当に悪い。変なことに巻き込んで。でも、今はまだ言いたくないんだ。許してくれ。」
俺は思わず立ち上がった。
「ふざけんなよ!いきなりヤクザに追われてすげえ危なかったんだぞ。幸い捕まんなかったけど捕まったらどんなことされてたか分かんないんだぞ!ただでさえ今分け分かんないことが起きてるのにさらに謎を増やそうとしてんだぞ。お前ふざけんなよ。」
俺はあまりの怒りで顔が赤くなっていた。
「彩はどう思うんだよ。」
俺は彩の方を見た。彩は困った顔していたが
「私は刈谷君は話したくないんだったら無理やり話す必要はないと思うよ。」
俺は思わずため息が出た。彩にそう言われると何もいえなくなってしまった。
「絶対話せよ。」
俺は刈谷に言った。
あんなに困った表情をしている刈谷を初めて見た。
「あら、今日は帰るのが遅かったのね。」
母が玄関まで出てきた。俺はただ「ただいま」と言って自分の部屋に行った。
結局あの後はすぐに解散ということになった。
「はぁーーー」
大きなため息を付きながらベットに横になった。最近はいつもこんな感じだ。
時計に目をやる。
6時58分
後2分で母が「ご飯だよ。」と言いにくるはずだ。
7時
俺の部屋のドアが開き母が
「ご飯だよ」
と言った。
ここのところ最近ずっととんかつだ。まあ、ずっと19日の火曜日を過ごしているのだから仕方ないが・・・
もう、何回目だ?
だが、俺は最近そう考えるのをやめていた。そんなこと考えてもなにも変わらないし。気が滅入るだけだ。
「いただきます。」
とんかつを食べる。うまい。
同じ味だ。
部屋に戻るとメールが来ていた。
そうだ。
そうだった・・・