トラップ 4 謎
「どうなってんだ。」
刈谷が呟いた。壁に大きく書かれた「4」という数字。一体これは・・・
「おい!もしかして「死」ってことじゃねえのか?」
刈谷が不吉なことを言った。
「そんなこと言うなよ。彩だっているんだから。」
彩の方を見てみる。彩の顔は青ざめていた。
「おい!お前らなにやってんだ?」
ヤバい・・・先生が来た。
「これはなんだ。なんでこんなことやったんだ?」
どうやら。この壁に書いてある数字が俺らの仕業だと思ってるらしい。
「とりあえず職員室に来い。」
「俺らがやった訳じゃねえよ。変な言い掛かりつけんなよな。」
「じゃあ、誰がやったんだ。お前ら以外いないだろう。」
「ああ?てめえふざけんなよ。」
刈谷が手を握った。やばい。殴る気だ。
俺は刈谷の右手を押さえた。刈谷がこっちを向く。俺は必死に目で「こらえろ」と言った。刈谷は分かったらしいのか手をゆっくりと開いた。
「先生すいません。一応職員室には行きます。けど、俺らがやった訳じゃないんです。」
俺は必死に言った。
先生はゆっくりと職員室の所へ歩いていき「来い」と言った。
職員室の隅の方にある机に俺らは座らされていた。先生は教頭先生のところへ行き何かを話している。
「ねえ、竜也。」
彩が話しかけてきた。
「なに?」
「私思いきって先生に今私達に起きていることを話そうと思うの。」
俺と刈谷は驚いた。俺は必死に冷静さを保ち
「彩。それはダメだ。彩が辛いのは分かるけど先生に言っても信じてもらえないだろうし。余計ややこしくなるだけだ。だから、今はなんとか耐えるんだ。」
「もう、私無理だよ。やっぱり私達だけじゃ解けないんだよ。だったらもう大人の人に相談した方がいいよ。」
彩の表情はもう完全に決心した顔だった。最悪なことに先生がこっちへむかってくる。
「今、教頭先生に言って手の空いている先生であの落書きを消してもらっている。さあて、事情を」
「先生!!!」
彩が先生の胸に飛びついた。言うつもりだ。
「先生。私達前からずっと19日の火曜日を過ごし続けてるの。毎日みんな同じことするし。違うのは私達だけなの。もうこのままだと頭がおかしくなっちゃうよ。お願い。助けて。」
止められなかった。彩は言ってしまった。俺はどうせ馬鹿にされるだろうと思った。だが・・・・
「そうか。彩。そうなのか。実は先生もここ数日お前がおかしいとおもってたんだ。今まで気づいてあげられなくてごめんな。」
?どういうことだ?こんなにあっさり信じるのか。どうなってる・・・
「彩。そこにいる2人も同じ体験をしているんだろう。可哀想に。」
なんでこいつはそんなことまで知ってるんだ?俺らしか知らないはずなのに・・・なにかがおかしい。
「でもな彩。この問題はこの3人で解かないといけないだろ。彩は悪い子だなぁー」
突然声が変わった。この声。聞いたことある。
「彩!そいつから離れろ!!!」
俺は咄嗟に彩をそいつから引き離す。
「嫌あぁぁぁぁ」
彩の絶叫がする。
間違いないあの紳士服姿の男だ。
「刈谷!!」
「ああ!分かってる。」
刈谷はその紳士服姿の男の元へ向かっていく。
「残念だ。お前ら。不正解だ。」
「うるせー寝てろ。」
刈谷の鋭いパンチが男の顔に当たる。男はうずくまる。刈谷がすかさず馬乗りになった。もう1発殴ろうとしたその時。刈谷の腕が止まった。
どうしたんだ?
「刈谷!お前先生にこんなことしてどうなるか分かってるんだろうな?」
この声あの紳士服の男の声じゃない。先生に戻ってる。なんでだ?じゃあ、俺らが見たものはなんなんだ?
一体・・・・・
その後刈谷はひとまず自宅謹慎をさせられた。。処分は後で決まるらしい。だが、恐らく重い処分となるだろう。
帰りは俺と彩で刈谷の家を寄っていくことにした。
俺と彩が一緒に帰っていると付き合ってると思われるので1回家に帰りその後でまた逢う約束をした。俺は10分前に集合場所に着いた。
「なに張り切ってんだ俺は。」
俺は小さく呟いた。彩とプライベートで会うなんて夢のようだ。〔楽しいことをするわけではないが〕自然と彩のことを考えていた。
彩は顔もスタイルも良くかなりモテる。俺も小学校の頃は席も隣同士ということでかなり話していた。そして好きになった。中学校に入るとクラスが変わってしまい全然喋らなくなってしまった。彩は今違う中学の男と付き合っているらしい。初めて聞いたときは信じたくなかったが下校途中に2人で手を繋いでる姿を見てしまい信じざる得なくなった。今となっては彩は俺のことなんてなんとも思っていないだろう・・・もう、彩のことを諦めようとした瞬間にこの今俺らで起こってる出来事が起きた。運命は絶対俺をもてあそんでいるのだ。
そう考えている内に彩が来た。ピンクのワンピース姿だ。俺は思わず見とれてしまった。
2人で歩いていると彩はあまり話す気になれないのかまったく沈黙の状態が続いた。俺は気まずかったので今日の出来事について話すことにした。
「彩はさ。今日あの紳士服姿の男の顔は見たの?」
彩の顔が一瞬青ざめた気がした。
「実は見てないの・・・声が変わった瞬間あの人だって分かったから怖くなって動けなくなっちゃったの。だから、竜也があの人から離してくれたときはホントに助かった。ありがとうね。」
「ううん。いいよ。俺ら仲間なんだし。」
こういう言葉は柄に合わない。ぎこちなくなってしまった。
目の前に刈谷の家が見えてきた。見た目はボロボロで木がどれもこれも剥がれていた。
「確か1階の102号だったような・・・」
前刈谷から聞いたのだがあまり記憶が確かではなかった。どこも表札が出ていないので確認の仕様が無かった。
「チャイム押してみようよ。」
彩が言った。俺は小さく頷きチャイムが鳴るボタンを押した。中から音がした。すると、ドアが開いた。
「どなたですか?」
出てきた人を見た瞬間ここが刈谷の家だと分かった。年は40後半くらいで髪はパーマがかかっておりボサボサだった。目を獲物を狙うようなキリッとした目だ。間違いない。刈谷のお母さんだろう。
「あのー刈谷くんいますか?実は僕達刈谷君と同じクラスの人で時間割とかを届けに来たんですけど。」
もちろん嘘だ。だが、こうでも言わないと怪しまれてしまう。
「あいつはうーん。今ここにはいないよ。どっか出かけて・・・」
バシン!!!
俺は思わず後ずさる。いきなり床をスリッパで叩いたのだ。
「ごめんね。ゴキブリが居たものでね。」
スリッパをどかすと確かにそこからゴキブリの死骸が出てきた。
「えーとだから、そうそう。どっかに出かけわよ。」
自宅謹慎なのに外出か。刈谷らしい。
「分かりました。ありがとうござ」
「オラぁー待てーこのクソガキがぁー」
俺は咄嗟に声のした方を振り返った。
そこのは黒いスーツを身にまとった柄の悪い人は6人こっちに向かって走ってきていた。間違いない。あのドスの聞いた声、あの服装
ヤクザだ・・・・
そして、そのヤクザが追っている人物・・・・
間違いない。
あのだらしない服装、ワックスでセットした頭、そして、なによりあの顔
刈谷だ・・・