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6 手紙の宛先と髪飾り

 外に出られないなら手紙をだして、助けを求めようと決めて、カトリーはトムに便箋を買って欲しいと頼む。


 代金としてこの前商人に売った指輪で得たお金を渡そうすると断られた。


 いつも食事まで用意してもらっているのに、なんだか申し訳ないが、トムもディランも全く平気だと笑って返される。


(今度、何かお礼に送ろう。この前商人さんなら、大丈夫)


 この前きた商人なら、たぶん大丈夫だろうと、一体何が大丈夫なのかカトリー自身もわからないが、確信がある。


 それに2人に知られないように用意するためには、家にくる商人から買うしかない。


 自分の部屋で机に便箋とインクを用意して、カトリーはペンを持ったが、その手は動くことがない。


 ――固まること数分。


 重要なことをカトリーは思い出した。


 手紙を出せる人がいないということに。


 静養中の母がいる場所をカトリーは知らない。

 何度教えて欲しいといっても伯爵は教えてくれないのだ。

 もしかしたら、手紙を出されて今の家の状況を知られないためなのかもしれない。


 前伯爵は隠居したら婆さんの故郷で暮らすんじゃと、祖母の故郷がある外国で生活している。


 住所は分かるが、手紙を送るには外国なのでかなり料金がかかるため、今のカトリーの所持金では送ることができない。

 そして、とんでもなく旅行好きで一箇所にじっとしていないのでいつ捕まるのかもわからない。


 ベアトリーチェによって解雇された使用人たちの居場所もわからず、カトリーには貴族の友人がいない。

 というより、友人と呼べるのはおそらくディランだけなのである。


 自分の部屋を見渡すが、お金になりそうなものはシーダとベアトリーチェに奪われて残っていない。


 それなら、お金か換金できそうなものを盗むしかないが、しっかりと管理されているので難しいだろう。


 新しい執事は金にがめつく、ろくに仕事はしない使用人たちも、お金になりそうなものの管理だけはしっかりとしているのだ。


「どうしたらいいのよ、もう」


 解決策が見つからないと机に突っ伏したカトリーは目にわずかな涙をためる。


 すると、目の前を光の粒子が通る。


「何、これ?」


 顔を上げたカトリーは目をこすって、それが気のせいではないことを確かめる。


 光の粒子は消えておらず、どこかへ移動して行くのでカトリーはそれを目で追うと光は商人からもらった髪飾りの上でピタリと止まった。


 不思議に思ったカトリーは髪飾りを持ち上げるが、どこにも変わったところはなく、首をかしげまたあった位置に髪飾りを戻すと、光の粒子が動き始める。


 カトリーの周りをクルクルと回り、部屋に飾られた花の上で止まる。


 近寄ったカトリーの目の前で花は一瞬だけ強烈は光を放ち消えて、硬いものが落ちる音がした。


「え?」


 花のあった場所には花と同じ色の宝石が転がっていた。


「何が起こったの?」


 よくわからないが、見られるとまずい。

 急いで宝石を拾い集めたカトリーは、それをハンカチに包んでポケットに入れると、信じてもらえないと思いつつ、トムとディランのもとに向かうことにした。

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