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53 クラウディオ様の秘密

お読みくださりありがとうございます。

 シルクに騒がれたディオたちはグレイ伯爵家に向かっていた。


 城に帰ったディオにシルクは髪飾りに入った妖精に会いたいと言われたのだが、その髪飾りはカトリーにあげてしまっていると事情をシルクに話すとシルクが大喚きをしたためだ。


 グレイ伯爵家に事前に連絡をして、リサに来訪の許可をもらい、カトリーに事情を伝えてからシルクを連れて向かう。


 なんでもあの髪飾りの中にいる妖精とシルクは親友で、久々に会いたくなったらしい。

 久々といっても、人間感覚ではなく妖精感覚なので、前に会ったのはディオたちが生まれるずっと昔のことのようだが。


 髪飾りの妖精についてシルクは十数年前から知っていたはずなのだが、妖精の気まぐれにも困ったものがある。


 事前に連絡をしていたとは言え、急な来訪だというのにリサたちは快く歓迎してくれた。


 今回は第三王子クラウディオとしてなので、グレイ伯爵家の使用人たちの態度はディオからすれば随分と堅苦しいものに映ってしまうが、本来王子に対してはこういうものだ。


 ディオとカトリーは応接間に移動をして、妖精たちを会わせる。


 その間、シドたちが退屈になることはなかった。


 まずフランは、以前カトリーのため用意した服がフランの手によってリメイクされたものだと知ったメイドたちからの相談を受け離脱。


 シドは執事のヘンリーに領地の今後について大まかな話し合いに呼ばれ、トリスもそれに参加するためについて行った。


 残されたアルドはというとリサに捕まり、リサの話し相手になっていて、極力表情を出さないようにして逃げ場を探していた。

 未だ貴族相手は疲れるのだ。


 妖精の見えないカトリーには妖精たちが何をしているのか分からないが、なんとなくそこに妖精たちがいるような、そんな気はした。

 机上に置いた髪飾りをカトリーが眺めているとディオが声をかける。


「助かったよ、カトリー」

「いえ、クラウディオ様のお力になれたのであれば嬉しいです」


 家のことを救ってくれたディオには感謝してもしきれないほどで、彼の力になれるのなら精一杯の協力はするつもりだ。


「おかげでオレも無事に過ごせる。どうしてもシルクの影響を受けちゃうから」

「妖精の影響……」


 妖精の力でもディオは借りているのだろうかとつい出てしまったカトリーの問いにディオは頷く。


「うん。オレは赤ん坊の頃にシルクを口に入れちゃったみたいで、シルクとは切っても切れない縁なんだ」


 ディオはこともなげに言って、カトリーは驚きが隠せない。


 そんなことをして無事だったなんて話は物語のどこにもなく、力を借りただけだとしても長くは借り続けることは出来ていない。

 もしディオのような人が他にもいたとしても相当珍しいものなのだろう。


 驚きと同時にカトリーには納得もできた。

 妖精石をディオに見せたとき、ディオは真面目顔をして注意を促し、カトリーにどうなるかを考えさせた。

 それは自身のことあってということなのだろう。


「そのせいですぐに寝ちゃうから、ほとんどの行事に出席できないんだ。出られても途中で抜けないといけないから」

「そうだったんですね」


 すぐに寝てしまうのは妖精のエネルギーで体がすぐに疲れてしまうためだとディオは言う。


 本来、人間が抱えきれるようなエネルギーではないらしいがディオには妖精に対しての耐性があったのではないかというのがパーチメントの見立てだ。


「うん。だから、城から出てこうして自由に動くのも反対された。家族とオレの事情を知ってる使用人たちにはね、特に」


 カトリーだってディオのことを聞いた今、ディオが自由に国を歩いているのを止めたいと思ってしまう。


「でもそうだったら、わたしはまだきっとシーダたちに使用人扱いされたままだったと思います」


 ディオのおかげでカトリーは、元の暮らしに戻ることが出来た。

 全てが元通りではないけれど、幸せに笑っていられるほうへ。


「ありがと。オレも人の役に立てるんだっておかげでわかった」


 ディオは笑う。

 わずかに混じった憂いはディオにとっての劣等感なのだろう。

 妖精の力が入った身体との付き合いを上手く出来るようになっても、人並みの生活と呼ぶには遠いのだ。長く起きてはいられないから。


 使用人がお茶のお代わりを運んできてディオはそれを断り、眠そうに目をこすった。

 カトリーは察して、椅子に座ったままでは危ないとソファを勧め、ディオはソファに横たわり、そして言った。


「カトリーはそのうち見えるようになるんだろうね。この家は当主になると妖精が見えるようになるから」

「それ、は……」


 つまり父であるフラヴィオにも妖精が見えていたということなのだろう。

 妖精がいる家は繁栄するがいなくなるとその家は落ちぶれるというのは、昔から言われているものだ。

 精霊の加護がなくなるからという理由があるそうだが。


 それなら、フラヴィオが自分(カトリー)を追い出さなかったのはとカトリーが答えに行きつこうして、部屋がノックされてトリスが毛布を持ってやってくる。


 寝息を立て始めたディオに毛布をかけたトリスに、ちょうど今寝たところだとカトリーは伝え、トリスはベストタイミングだった返す。


「ディオ様は寝てしまいましたし、僭越ながら私がお相手します。カトリーさん」

「え、えっと、ありがとうございます」


 トリスは少し可哀想になってきたアルドと楽しそうにしているリサも一緒にといい、カトリーはもちろんだと答える。


 フラヴィオたちからカトリーを家から追い出さなかった理由を考えることを忘れてしまうほどにカトリーはトリスたちとの即席お茶会を楽しんでいた。

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