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37 パーチメント家の日常は

お読みくださりありがとうございます。

 今回の主役であり、研究成果の発表を残すジゼルとヘレンは会場に残し、デイジーはカトリーを応接間に通した。


 アレックスは研究対象としてのカトリーにめげず何度もアタックするのが目に見えているので、来客用の使用人たちの手です巻きにされているため身動きがとれなくされている。


「ごめんなさいね。私の配慮が足らなかったわ」

「怖かったよね。ごめんね、カトリーちゃん」


 デイジーとフランが父親と妹の行動に対してカトリーに謝罪をする。

 そして、トリスも被害を未然に防ぐことが出来なかったとカトリーに謝る。


「びっくりはしましたけど、皆さんのおかげで怖くありませんでしたから。わたしの方そこ守っていただきありがとうございます」


 パーチメント伯爵家は代々変わり者ばかりの家だとは噂で耳にしたことはあったが、カトリーもここまでとは思っていなかったこともある。


 知っていたら心構えも出来ていたのだろうが、何しろディオがトリスとフランをカトリーの元に置いていったことを随分と過保護だと思っていたのだ。

 まさか理由がパーティーを主催している当主たちから守るためとは考えていなかった。


「あら、あなた。どうしてこんなところで寝ているの。まあ、いいわね」


 明朗な声が廊下に響き、応接間の扉が開かれると簡素なパーティー用ドレスに身を包んだ女性が入ってくる。


 女性は貴族の女性にしては珍しく日に焼けているようで白い肌はしておらず、動作は優雅ではあるが放つ雰囲気は貴族とはかけ離れていた。

 高貴さや優雅さではなく、カトリーからして一番近い雰囲気を持つのは庭師のトムだろうか。


 部屋に入って来た女性はデイジー、フラン、トリスを順番にみて、それからカトリーに視線を向けてカトリーに目線を合わせるためにカトリーのそばにかがんだ。


「あなたがカトリーヌちゃんね。夫が迷惑をかけたわ、ごめんなさいね」

「い、いえ」


 女性はパーチメント伯爵夫人でフランたちの母でブレアと名乗った。


「今後、同じようなことが起きるとも分からないし、あなたがあの人たちに狙われている理由を説明するわ」


 ブレアはカトリーの対面、フランとデイジーの座る三人がけのソファに一緒に腰掛ける。


「まずうちは妖精について調べている人と、薬学――薬について調べている人に分かれているのよ。それであの人は妖精側なんだけど、とにかく妖精とつけばなんでも細かに調べたがる研究バカなの」


 妖精について調べるためならマナーや常識は記憶の片隅にも残さないアレックスは、度々非常識な行動を起こし時には国際問題になりかけることもあるらしい。

 本来、主人の行き過ぎた行動を諌めるべき使用人たちも研究者気質が勝っているためにほぼ止められる人間がいないのだとブレアは言う。


「それで、カトリーヌちゃんは妖精に好かれる人だから、その理由を知りたいがためにうちの人たちは近寄ってくるの」

「妖精に好かれる人は滅多にいないものだから」

「妖精が見える王家には最近、騎士たちが警戒態勢で城にすら入れてもらえないみたいで嘆いてるから余計に」


 王家の血が入っても、誰一人として妖精が見える人間が産まれてこない、妖精に好かれる人間もまた然りらしく、原因と理由を知りたいようだ。

 ディオたち王家から言わせると、妖精に嫌われているわけではないが避けられているらしい。本人たちは頑なにそれだけは認めないが。


 カトリーが反応に困っていると、ドタドタと廊下を走る音がしてジゼルとヘレンが父親のアレックスを一瞥だけして入ってくる。

 よくあることなのか、興味がないのか、一声もかけず飛び越えていった。


 ブレアは平気で廊下を走って来た双子をその場で叱るが意に介していない双子は面倒そうに聞き流していた。


「わかってるってば、それよりカトリーヌに話があってきたのよ」

「そうだったの」

「そうよ。研究素材って言っちゃったから謝りに」


 ブレアに言ったあと、素直にカトリーに謝った双子はお詫びと称してカトリーを食事に誘いたいと申し出る。

 年齢も近いので仲良くなりたいと理由もつけて。


 そして、カトリーが戸惑いながら了承すると、デイジーとフランは目を合わせて不安を語っていた。


「問題はなさそうね。それじゃあ、母さんは父さんがサボった分の挨拶回りしてくるわね」

「分かったわ」


 ブレアが部屋を出たあと、デイジーは紅茶を一口飲んでカップを静かにテーブルに置くと口を開いた。


「先ほどの話だけど、私かフランを同席させてちょうだい。不安があるもの」

「そうだね。せめて、カトリーちゃんがうちの人間になれるまではね」


 姉たちの言葉にジゼルとヘレンは納得がいかない様子だが渋々了承をする。

 ここで下手な手を打ってカトリーに逃げられてしまうわけにはいかないのだ。それなら多少の小言があっても一緒にいてもらった方がいい。


 そして、使用人がディオが帰るという連絡をフランとトリスに伝え、フランたちはディオの元に向かう。


 トリスは部屋を出る前にカトリーにそっと耳打ちをする。


「フランさんはさておき、デイジーさんが常識人なのは保証致します」


 トリスやシドからみて、フランもまともになってきたと言っても、パーチメント家の色が濃い。

 その点、デイジーはパーチメント家の人間と疑ってしまうほどの常識人なのだ。

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