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31 ダニエルのお仕事

お読みくださりありがとうございます!

 突然大勢で押しかけたにも関わらず、カトリーはディオたちを快く歓迎してくれる。


 まさか、トリスが言っていた領地経営をする子供がダニエルだとは思わずかなり驚いてはいたが、それ以外は問題なかった。


 カトリーにしてもダニエルにしても、今回のことをすぐに受け入れられているのは間にディオがいるのが大きい。


「トリス、ありがとね。監視者のみんなも、処遇は決まったからもう暫くお願いするね」

「ディオ様のお役に立てたのなら光栄です」

「身に余るお言葉感謝いたします」


 ディオはニコリと笑ってそれを受け止め、話は時間のあるときにと言ってカトリーの方を優先する。

 トリスが中心となって動いていたので心配していない。陛下や兄たちからも状況は聞いているのでグレイ伯爵たちについては置いておく。


「カトリー、もうすぐお母さん帰ってこれるよ。グレイ伯爵とは入れ違いになっちゃうけどさ」


 ディオは辛い雰囲気を持たず、努めて明るい口調でカトリーに伝える。

 リサが帰ってくることに嬉しそうな顔をしたカトリーはグレイ伯爵については無反応だった。


 愛してくれてすらいない父親にいい感情を抱けてるわけもない。つないでいたのは母リサがいない間の父親と子供という関係性だけだったのだから。


「お母様が――」

「うん。体調の方も落ち着いてるからね」


 もし必要なら医者も滞在させるとディオが言って、フランがすぐに手配は出来ると付け足し、カトリーがお礼だけ伝える。


 カトリーの世話のメインをフランが引き継ぎ、トリスは全体のサポートをする役目になる。


 シドとダニエルはここ数年の収支をみてため息をつき、赤字スレスレの経済を立て直すことを決める。


 ディオはこの場に置いて最高責任者という立場になるのだが、ほとんどやることもないのでアルドを連れてグレイ伯爵家の使用人と交流を深めていた。


 全員、ディオたちが商人として来ていたことに気がついていない。

 ディオ曰くは多少の変装と妖精の認識阻害だそうだ。


 毎日夜にカトリーを護衛に任せてディオたちは集まる。

 わざわざやらずととも良いのだが習慣としてつい集まってしまうらしい。


「横領もありましたが、グレイ伯爵には経営の才能はなさそうです」

「酷いのはこの二年だが、どのみち数年後には完全に傾いてたな」


 ダニエルとシドはディオに報告をして、ディオが難しい顔をする。

 治めるのが難しい領地ではなく、むしろこの辺りは赤字を出すのが難しいほど安定して治められる領地だ。

 ダニエルの言葉は辛辣だが否定のしようがない。


「そうなると早急な立て直しが必要ですね」

「そうだね」


 ダニエルは対応策を、シドにも話を聞いてもらって許可は得ていると発言をする。


「なので、パーチメント家の商会を誘致しようかと思います。問題のないここの使用人はそこで働いて貰えますし、安定した金額は確保できるはずですから」


 どうでしょうかとダニエルはフランの方を見る。一応フランの実家なので、聞いてみて大丈夫そうなら交渉するつもりのようだ。


「事後報告で大丈夫だよ。マイナスになったら公爵家に請求書が送られるだけだから」

「……請求、ですか」

 

 パーチメント家は国からの研究費だけでは足らないと、研究中に人の役に立ちそうなものが出来るとそれを商品として量産して売って研究費に当てている。


もともと、貴族になる前から研究費のために開いた商会でわずかでも研究費が増えるなら何の問題ないらしいが、減るのは問題があるらしい。


 従業員は身寄りのない人間から家柄の良い人間まで老若男女問わず雇っているので、ある程度真面目に働けるなら誰でも構わないのだ。


 フランはのほほんととんでもないことを口走るが、パーチメントの人間だったと思い出すと誰も何も言わず納得する。

 あの家は研究中なら陛下の呼び出しも平気で蹴るような家で、代々常識のなさと研究に向ける熱量は受け継がれている。


「そうならないようにする予定です」

「大丈夫そうだね。他に連絡はある?」


 ダニエルの方は大丈夫そうだと、ディオは他に話のある人がいないか尋ねると、フランが挙手をする。


「どうしたのフラン」

「大したことじゃないんだけど、一度清掃業者を入れた方がいいかなって」


 ところどころ汚れが目立つとフランが言うとトリスもそれに同意する。

 二年間の間、掃除の行き届いていない場所や、あまりしっかり手入れされていないところは、素人の手でやるには限界がある。


「リサさんが帰ってくるのでしたら、なおさら清潔な家にしておいた方がいいかと」

「シド、手配しておいて」

「わかった」


 シドが朝イチで手配しておくといった後、トリスがカトリーを連れて一度買い物に出かけたいと言う。


 服の大体をシーダに取られてしまっているカトリーに必要なものを買い揃えたいとのことだ。


「おめかししてお出迎もいいかもね。費用は両方ともこっちの負担にしちゃって構わないからね」

「わかりました」


 了承するシドとトリス。

 ディオはカトリーの買い物にフランも付いていくようにと伝える。

 フランも一緒に行けばおかしな組み合わせになることはないだろう。


「他には……なさそうだね」


 ディオは全員を見回して他に意見がなさそうなのでお開きにして、今日もグレイ伯爵家での仕事が終わる。

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