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26 これからのこと

 愛する我が子カトリーの現状を聞いて、静かな怒りを持ったリサだが、明るい笑顔をディオたちに見せる。


「今だけはこの再会を喜ばせてちょうだい」


 体調はここに来てから調子が良かったが、カトリーのことはずっと心配だったとリサは言う。

 ずっと家にいる使用人たちがいるならその心配も杞憂だと言い切ることも出来たのだが、手紙を送っても返事が一切返ってこないこともあり、心配は募るばかりで不安な日々を過ごしていたらしい。


 リサはあの家の中で静養と言う名の軟禁をされていたと笑った。


「本当にありがとうございます。クラウディオ様」

「無事で良かった。カトリーも母様もずっと心配してたはずだから」

「ええ、そうね」


 それにしてもとリサはディオたちをみて呟いた。


「みなさん、大きくなられて」

「そう?」

「えぇ、クラウディオ様は大人っぽくなられて」


 ディオは嬉しそうに跳ねた声を出す。

 まだまだ子供だと言われることが多いので、そう言われることは素直に嬉しいらしい。


「本当?シドたちも」

「はい。シド君はとてもしっかり者になったのね。みんなのまとめ役かしら」

「今はリーダーをさせてもらってます」


 元々しっかり者のシドだが、リサは静養していた二年間の間にシドの顔つきが変わったように思えた。


「トリスちゃんはますます美人さんになって、フラン君は可愛くなったわ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます――って、喜んでいいのかな」


 トリスとフランは褒め言葉に礼を言うが、フランは褒め言葉を素直に受け取ってもいいのかと迷っていたが、本人的には問題はないようだ。


「問題はないよね、うん、ありがとうございます」


 むしろ格好いいと言われる方が違和感があるようだ。


 リサはアルドに視線を向けると子供に向ける笑みを浮かべる。

 もしかするとカトリーと重ねて見ているのかもしれない。


「クラウディオ様に目をつけられるなんて、アルド君は将来有望なのね」

「これでも正式なメンバーなんだ」

「まあ、そうだったの」


 褒められ慣れていないアルドは戸惑うが、ディオはリサの言葉に自慢げな表情をしている。


 それを見てリサはクスクスとおかしそうに笑った。

 

「それで、これからのことなんだけど」

「これはエルザ様からのご提案なのですが、伯爵家に帰らず城に滞在して頂きたいとのことです」


 ディオの言葉を引き継ぎシドが説明を始める。

 カトリーにすぐに会えないことも付け足しておく。


「理由を聞いてもいいかしら」

「はい、ご説明します」


 シドは僅かにだけ言いにくそうにして、すぐに意を決して口にする。


「エルザ様が簡単に終わらせるわけにはいかないと、ダメージを与えるのならしっかりと与えたいと言われまして」

「そう、ね。すぐにでもあの子の元へ行きたいけれど、私が帰ったところで何も変わらないものね」


 リサは城に行くことを了承する。

 カトリーのことだけは心配だが、使用人が総代わりしているなら現状グレイ伯爵家はベアトリーチェに乗っ取られているようなものだ。


 家に帰ってもカトリーを安心させるどころかカトリーの心配ごとを増やしてしまうだけで足手まといになってしまう。

 庭師のトムと息子のディランがいるのなら、カトリーは大丈夫だとリサは確信しているが、せめて自分は無事だと知らせておきたい。


「あの子に手紙を送ることは可能かしら」

「庭師宛に送るのなら確実に届く思いますが、返信は難しいかも知れません」

「それでもいいわ。あの子たちに声が届くのなら」


 今後のことについて話し合ったディオたちは、行きよりもスピードを上げて帰路に着くと、無事にリサを連れて戻ったことをエルザに報告する。


 エルザは大層上機嫌で、元気そうなリサを見てホッと安心したのもつかの間、いい笑顔でグレイ伯爵をどうしてやろうかなどとのたまっている。


 落ち着かせるのに少々時間がかかってしまったが、話ができる状態になったので陛下たちを入れて話を進めていく。

 今回はダニエルの両親である公爵夫妻も呼んである。


「ダニエル様とカトリーを?」

「そうですわ」


 グレイ伯爵家の現在の様子は道中ディオたちが説明しているので簡潔にまとめて流し、話はカトリーの婚約についてとなった。


「えぇ。兄やアルからの話を聞き、ダニエルもカトリーヌお嬢さんとなら上手くいくのではと思っておりまして」

「先日、ディオ主催のパーティーで引き合わせたところ大丈夫そうでしたから、そちらがよろしければぜひ」


 話は分かりましたとリサは言う。

 リサとしてはカトリーの嫁ぎ先としていい話だとは思うが、カトリーの意思が気になるところだ。


 ダニエルの人柄についてはあまり心配はいらないだろうとリサは感じる。

 人を映す鏡はその人の周りにいる人たちで、彼らを見ればなんとなくわかるものだ。


「私は賛成です。あとはカトリーが望むのであればですが」


 リサが自分の意見を伝えると、エルザが言い忘れていたと両手を揃えて胸の前で手を鳴らした。


「そうそう、これはカトリーヌを嫁がせるのではなくて、ダニエルを婿に行かせるつもりなのよ」

「ダニエル様を婿に、ですか」


 カトリーが嫁ぐ前提でしか考えていなかったリサは、突然のエルザの言葉に驚きを隠せない。


 そこに公爵夫妻はダニエルは当主の座を望んでいないことや、その理由をリサに告げて、カトリーが女当主としてもらえると助かると言う。


 婚約の話は大体決まり、エルザが公爵夫妻とともに伯爵家に挨拶に行くということになり、その時にエルザからカトリーにリサの手紙を直接渡すということになった。


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