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23ドキドキ、初対面

 ――ディオの会当日。


 フランが古着をリメイクしたなんちゃって給仕服に身を包んだシドたちと、今日は身分相応でありながらラフな格好をしたディオは朝から準備をしていた。


 ディオがアルドの手伝いをしていると、その後ろで大きな荷物を抱えたシドが声が飛んでくる。


「ディオ、お前は何もしなくていいから寝てろ」


 シドの声を聞いてフランとトリスはディオの方に振り向き、二人もディオに声をかける。


「手伝ってくれるのは嬉しいけど、体力は温存しておいて」

「ディオ様は休んでいてください」


 大丈夫だと張り切るディオはむぅと小さくうなり、アルドに自分も準備を手伝った方がいいよねと同意を求めるが冷めた目で見られる。


「主催者が途中で寝てもいいわけ?」

「ヨクナイデス」


 アルドの言葉に目をそらしたディオは片言で返す。

 自分でも一度休憩を挟まなければディオの会の途中で眠ってしまうのは理解しているらしい。

 準備の段階からフルで起きていられるわけではないのだ。


 鼻を鳴らしたディオは、渋々といった風にディオのために用意された簡易ベッドの上に座り込む。


 連れてきていたシルクを構いながら、シドたちを眺めて張り切りすぎた代償かすぐにディオは眠ってしまった。


 ディオが寝ている方が準備が捗るとばかりにテキパキと準備を終わらせたシドたちは、開場時間少し前にディオを起こし、素早くディオの髪や服装を整える。


 一番にやってきたのはジークベルトだ。完全にロザリアを置いてディオのところまでかけてくる。


 ディオの近くで両腕を広げたジークベルトの前にシドは立ちはだかり淡々と告げる。


「本日はゲストの方の参加がございます」


 緩みきった顔が瞬時に真面目な顔つきになったジークベルトはすぐにロザリアを迎えに行くと、普段のパーティーのようにロザリアのエスコートを始める。

 ディオに怒られるのもいいのだが、やはり溺愛する(ディオ)には笑顔でいてもらいたいのがジークベルトだ。


 それから着替えを済ませたカトリーが会場に着き、続々と参加者がやって来る。


 ディオはやって来たアルフレッドとエルザにカトリーを引き合わせ、二人はカトリーを見て面影があると言った。


 挨拶を済ませたエルザはカトリーのその手を取るとそっと包み込む。


「逢いたかったわ、カトリー」

「王妃、さま?」


 カトリーが小さく確かめるように呟くと、エルザは目尻にほんのり涙を溜めて大きく頷いて小さく笑った。


「辛い思いをさせたわね」


 慈愛に満ちたエルザの柔らかな表情はまるで我が子を愛おしく思う母親のようだ。

 抱きしめたいと思うが、その役目はきっと母親であるリサのものだと堪えて、ただただ元気そうなカトリーに様子に安堵をする。


 そして、カトリーに必ずリサを見つけるとエルザは約束をして、カトリーはありがとうございますと泣きそうになりながらそう答えた。


 招いた客人の相手をしていたディオは、エルザとカトリーの様子を見て話が一区切りついたらしいところで、ダニエルを連れてカトリーの元に行く。


「カトリー、紹介するね。彼はいとこのダニエル。この前のパーティーで偽物と会ってるから会わせたかったんだ」

「そう、でしたか。わたしはカトリーヌ・メル・グレイです。お会いできて光栄です、ダニエル様」


 ディオの言葉にダニエルが公爵家だと瞬時に理解したカトリーはスカートの裾を掴んで礼をする。


 その仕草は偽カトリーことシーダとは似ても似つかぬほどに洗練されて美しく、ダニエルは思わず感心して見惚れる。


 その様子をダニエルの視界には入らないがしっかりとダニエルの様子が見える位置を確保した両親が観察している。


 もちろん、カトリーの様子も窺っているがこちらはエルザが激推しをする上、妖精から好かれているらしいのであまり心配はしていないようだ。


「ダニー。彼女が本物のカトリーヌ・メル・グレイ。正真正銘、グレイ伯爵家の一人娘」

「初めまして、カトリーヌさん。僕はダニエル・ノア・オーキッドです」


 ダニエルも年相応は言い難いほど立派な立ち振る舞いする。

 公爵家の人間として恥ずかしくないようにと叩き込まれた成果だ。


 ダニエルの視線はカトリーの右肩に移る。

 ぼんやりと視える淡い光は小さな声を発していたが、力のない妖精なのか聞き取りづらく、何を言っているかハッキリとは分からないが、カトリーが妖精に好かれているのはよく分かった。


 ディオはダニエルの肩をポンと叩くと他の人の相手をしなければならないのでカトリーの相手を頼むと言って、役目は果たしたとばかりにどこかに行ってしまう。


「ディオ兄さんは……」


 全くと怒るように吐き出したダニエルの口元は笑っている。

 人付き合いはあまり得意ではないが、ディオに頼りされるのは嬉しいのだ。


 ディオに任された以上、カトリーを放置するわけにはいかないとすぐにカトリーと向き合って、ディオの非礼をダニエルが詫びるとディオを目で追ったカトリーは小さく笑った。


「クラウディオ様は誰に対してもお変わりないのですね」


 独り言のようなそれにダニエルは困ったような顔をして頷いた。


「世間で言われてるような人じゃないんです」

「わたしもそう思います。数日間ですが一緒に過ごして思いました」


 アルフレッドやジークベルトと比べると、落ち着きはなく明るさが全面に出過ぎているディオではあるが、仕えているシドたちは誰よりも楽しそうにディオの為に働いている。


「それに家のことを対処すると約束してくださいました」

「ディオ兄さんが……。それなら、これから先もし困ったことがあれば僕に言ってください。一番連絡がつくはずですから」


 ディオの力になりたい。それと同時に公爵家として王族の一員としての責務でもある。


「ありがとうございます。ダニエル様」


 微笑んだカトリーに、一瞬目を見開いたダニエルはカトリーから目をそらす。

 何か失礼があったのかと心配するにカトリーに、ダニエルは妖精が飛んでいてと言い訳をする。


 その様子を見ていた公爵夫妻とアルフレッドにディオが声をかける。


「上手くいきそう?」

「うんざりする様子ないし、相性は良さそうかな」

「あの感じなら進めて問題ないだろう」


 ダニエルとカトリーの婚約は問題なく決まりそうだ。

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