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20 恨まれてるよ

お読みくださりありがとうございます!

 ディオの相棒らしい妖精シルクを、旅に同行させるためにまた城に戻ってきたディオたちは、ジークベルトに見つからないうちにディオの部屋に素早く移動する。


 国王夫妻とアルフレッドだけを呼び出す。


 国王は髭面の威厳のある男で、アルフレッドとジークベルトとよく似ている。

 王妃は白銀の髪をしたたおやか女性で、初対面でも警戒心を抱かせない感じはディオによく似ていた。


 帰ってきたことへの挨拶はそこそこに、ディオの会を開く旨を伝える。


 事情をアルフレッドから聞いていて知っていた国王夫妻は、すぐに対応をしてくれる。


「グレイ伯爵の交友関係を全て洗い出して、何としてもリサの場所を見つけなさい」


 ディオの母である王妃は、冷静に指示を飛ばしているように見えてかなり怒っている。


 カトリーの母リサのことは妹のように可愛がっていて友人のような間柄で、グレイ伯爵がずっと体調が悪いと面会謝絶して嘘をつき続けていたと知り、不機嫌とか怒っているを通り越した怒りを抱いている。


「可愛いリサをよくも、どう落とし前つけてもらおうかしら」

「エルザ、落ち着きなさい」


 今からでもグレイ伯爵の家に殴り込みに行きそうな王妃エルザに陛下は声をかけるが、大した効果はなく言い方を変える。


「泳がせてから、最適なタイミングで捕まえた方がダメージは大きい。しばらく待ちなさい」

「そうね。簡単に終わらせてしまっては行き場のない思いがどうしようもないものね」


 エルザは息を吐いて落ち着きを取り戻すと、話し合いはスムーズに進みお開きとなった。


 ダニエルの家に行くのは明日になり、それぞれ午後の時間があき、トリスとフランは一度家族に顔を見せに行き、シドは体を動かしてくると城の演習場に向かった。


 ディオは一時間ほど寝た後でシルクを探すと言うので、やることのないアルドはシドから渡された貴族のマナーについてまとめられたものを読んでディオを待つことをする。


 妖精を探すといっても、視えるのはディオだけなのでアルドはついて行くだけだ。

 広い城の中を探すのはそれなりに骨が折れそうなのだがディオはすぐに見つかると豪語する。


「なんとなく、どこにいるってわかるからね。それに、まあ……」


 なんとも言えない困ったような表情をしたディオは、王族専用のティールームに足を運びシルクと呼んだ。


 すると、長さ15センチほどの植物の茎がフラフラと宙に浮いていてディオを叩き始め、ディオはそれを容赦なく掴む。


 このままじゃ見えないからと、ディオは小さな紙に羽の生えた何かの絵を描き、それを宙で紐に結ぶ。


 紙が宙に浮いているので、そこに妖精がいるのはなんとなく分かったが、ディオの描いた絵のおそらく妖精は羽が欠けているように見える。


 フラフラと飛んでいるのはそのせいだろう。


「そんなことして怒られないの」


 アルドが疑問を口に出すとディオは寄ってくる妖精を手で制しながら答えてくれる。


「怒ってるよ、シルクはオレのこと恨んでるからね。不可抗力って言ってるんだけど聞き入れてくれないんだよ」

「でも、フランは相棒だって言ってたけど」


 恨まれてるのに相棒とは、おかしな関係ではある。


「あながち間違いじゃないけどって――痛いよ、シルク」


 妖精に何かをされたらしいディオが痛みに顔をしかめ、また妖精を掴むと同時に誰かが走って近づいてくる音が聞こえる。


「ベル兄だ」


 姿が見えなくても分かるとディオはアルドから少しだけ離れる。

 あの勢いに巻き込んでしまうと万が一怪我でもしかねない。


 扉を開けると同時にジークベルトはディオを呼ぶ声をあげ、すぐに女性の焦った声が聞こえる。


「ディオ〜!」

「――急に止まったら」


 勢いのついた反動でジークベルトの後ろにいた女性は思い切りジークベルトに体当たりをする形になり、二人は前のめりに倒れる。


 女性の心配もせずディオの元に向かおうとするジークベルトの背中に女性は腰を下ろす。

 こうすれば下手に動けないと知っているからだ。


 女性はドレスを着ていることから、貴族なのだろう。スミレ色の髪に金の瞳の活発そうな女性だ。


「座ったままでごめんなさいね、ディオ」

「ううん。助かったよ、ロザ姉」

「止めるつもりが引きずられるなんて」


 情けないとため息をつく女性にディオは女性とアルドに互いの紹介をする。


「ロザ姉、新しくオレの専属になったアルド。アルド、この人はベル兄の奥さんでロザリアさん」

「小さいのに専属なんてすごいわね。アルド、ジーク様が止められないときは遠慮なく呼んでちょうだい。すぐに回収しに行くわ」

「え、っと、はい」


 気持ちマシンガントークなロザリアは、アルドにとって珍しい人種だったらしく上手く対応が出来ない。


「そろそろ立たせてくれ、ロザリア」

「そうね、落ち着いたようだし」


 ロザリアが立ち上がり、ゆっくりとジークベルトも立ち上がる。

 視線はディオに固定されているジークベルトは、ディオが妖精を掴んでいることに気づく。


「あぁ、そうか。シルクを連れて行くってアル兄さんが言ってたな」


 ジークベルトはディオの手の先、妖精の頭のあたりに人差し指を突きつける。


「シルク、ディオに迷惑はかけるなよ。そんで、お前の羽が欠けたのはお前の自業自得だ」


 こっちはこっちで、ディオに仇なす者とディオを溺愛する者で仲が悪いらしい。


「ベル兄、それ首のあたりだよ」

「あー、もっとハッキリ見えてればな」


 悔しがるジークベルトをよそにロザリアは時間を確認して、ジークベルトの首根っこを捕まえる。


「ジーク様、そろそろ戻りますわよ。無理をいって抜け出してきたのだから」

「誰がやっても同じ仕事だろ。放っとけばいい」

「そういうわけにも参りません」


 ロザリアはジークベルトをズルズルと引きずって帰っていく。


 後はゆっくりと部屋で過ごし、翌朝、シドとアルドだけを連れてダニエルに会いに行く。


 相変わらず公爵夫婦は大歓迎で、ディオの会の開催を伝えるととても喜び、詳細を話すと前々から話があったらしくやっと実現出来るのかと嬉しがっていた。


 ディオの会への参加は、ディオから誘った方がダニエルも動くだろうとすぐにダニエルの部屋に通された。


「来月、ディオの会開くからダニーを誘いにきた」

「今度は誰を呼ぶんですか」


 最近はゲストが呼ばれるので、ゲストによって参加するかどうか決めるつもりらしい。

 まさか自分がゲストにされているとは思っていない。


「カトリーヌ・メル・グレイ」

「行きませんよ」


 その名前は聞きたくないとでもいう風に即答でダニエルは断るが、ディオはそのまま続けて喋る。


「本物のカトリーヌ・メル・グレイ。まあ、確かめてもらうのが今回の趣旨なんだけど」

「まだ何かあるんですか」


 ダニエルが続きを促す。


「彼女、妖精に好かれてるからさ、妖精の声を聞くのはオレよりダニーの方が得意でしょ」

「妖精の声を聞くのならディオ兄さんだけで事足りる気がしますけど」


 どれくらいの違いがあるのか分からないが、ディオはハッキリと妖精の声が聞こえるらしいので別にダニエルが行く必要もないように思える。


「そうでもないよ」

「え?でも、昔――」


 ダニエルが何かを言いかけて、ディオは昔からそうだとダニエルの言葉を遮る。


「だから、お願い。限られた人しかこないから、ダニーの負担も少ないでしょ」

「まあ、そうですね」

「頼んだ、ダニー」


 トドメのもう一押しをダニエルにディオは言って、頼りにしていると笑って訴えた。


「ディオ兄さんはズルいです」


 結局いつも、嫌だと駄々をこねてもディオの話を断れないのだ。

 何故か気づくとディオの思惑通りになっていて、それが妙に悔しい。


 ディオは一瞬キョトンとした後、それを褒め言葉と認識したのかお礼を言って、シドが呆れた顔をする。


「それで、どうやって連れて……もしかして、シルクですか」

「当たり」


 そう言って、ディオは上着のポケットからシルクを取り出すと、ダニエルは頰を引きつらせる。


「ちょっと、妖精をポケットに押し込まないで下さい。精霊の使いですよ⁈」

「シルクとは一心同体?特別だから、大丈夫」


 大きなため息をつかれ、ダニエルに説教をされるディオはシドとアルドに助けを求めるが、救いの手は差し伸べられなかった。

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