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19 開け、ディオの会

お読みくださりありがとうございます!


「ディオの会を開こうと思う」


 唐突に言い出したディオに、シドは淡々と招待人数を聞いていく。


 ディオの会は、ディオが家族や日頃のお世話になっている人たちに感謝を伝えるもので、長時間起きていられないディオに合わせ二、三時間でお開きとなるとパーティーだ。

 

 幼い頃はそれだけだったが、今は非公式で秘密裏に人を会わせることにも使われている。


 アルフレッドにカトリーヌ・メル・グレイが本物だと確かめてもらいつつ、ダニエルとカトリーの顔合わせも兼ねてだ。


 ここで互いが好感触なら、婚約の話を進めるということになる。


「この前アル兄から手紙きたでしょ」

「ああ、あの暴走手紙」

「あれはジーク様だ。アルフ様はああいったものは書かない」


 数日前にアルフレッドからディオ宛に届いた手紙は、何十枚と綴られていたのだがそのほとんどがジークベルトからで、オマケみたいな数枚がアルフレッドからの手紙だった。


 グレイ伯爵家を捕まえられるうちに取り押さえておきたいこと、ダニエルの婚約者選びが本格的になってますます部屋からでなくなったことなど、ディオを心配する内容と共に書かれていた。


 見せても問題ないので、ディオはシドたち全員に読んでもらっていた。


「裏で手を回される前にってことか」

「あまり時間もないですね」

「この前のはひどかったものね。まだ、可愛いけど」


 フランはこの前のパーティーでのシーダを思い出して苦笑いする。

 貴族してはあるまじき行為のようなものだが、まだマシだとフランがいってシドとトリスが同意をする。


「まあ、一緒にするもんじゃないけどな」

「まだマシというのも、そうですね」

「あれよりひどいやつがいるの?」


 アルドが尋ねるとフランが頷き、気の遠くなりそうな顔をする。


「いるよ。王族にタメ口だったり、会話の途中に割り込んだり、本当に常識のない家が」

「何その家」

「あの家は学者肌ばかりで結果も出してるから、多めにみられてることろがある」

「多めにみられすぎじゃない」


 さすがにアルドでもどうかと思うが、そういうものなのだろうかと考えているとフランが困ったように笑った。


「でも、結婚すると配偶者、相手の人ね、に貴族の振る舞いを叩き込まれるから少しはマシになる、のかな?」


 ちなみにジークベルトからの手紙は、読んでいると気力が失われると全員一枚目でリタイアした。

 ディオは適当に数枚だけ抜き取って、それだけ目を通していたがなんとも言えない顔をしていた。


「ベル兄が相変わらずポンコツになるのは置いといて、だから、ディオの会を開きたいんだ」

「一応カトリーヌはわかる誰かに確認してもらった方がいいのは確かだしな」

「ダニエル様も参加者が少人数であれば少しは出られるでしょうか」


 ディオの会を開くことには肯定的で、反対意見は出ない。


 日付と会場さえ決めてしまえば伝えておけば、みんな時間は取ってくれるので心配する必要はない。


 問題は今回のゲストとなるダニエルとカトリーだ。


 ダニエルはパーティー嫌いで、どうしても断るわけにいかないもの以外は基本出ない。

 両親もダニエルが社交嫌いになった原因を理解していて、トラウマとして乗り越えられていないと分かっているから強くは言えない。


 社交の場なんて情報交換と、陰口の言い合いだ。

 仕方ないとは言っても、自分にとって大好きな人があれこれ悪いことを言われるのはどうしようもなく辛いのだ。


 今回はほぼ見知った顔ばかりなので、参加してくれるとは思うのでまあ、それほどの心配はないが。


「問題はカトリーヌか」


 外に出さないようにしている人間に連れ出さなければならないのだ。

 まして、使用人にされている人間を一時的に借りるとなるとなかなかに難しい。


 連れ出すにしても事前準備に手がかかるとシドはため息をつくが久々の無理難題に気合いを入れ直すが、ディオによって杞憂に終わる。


「グレイ伯爵がいるときに交渉すれば大丈夫。一度、シルクを連れてこないといけないけど」

「シルク?」


 アルドだけが分からずに首をかしげ、フランが説明をする。


「ディオ様の相棒の妖精かな。普段は城の中で過ごしてる」

「先日、ダニエル様が落ち着かないご様子だったのは……」


 トリスがおそるおそるといった風に言えば、ディオはイタズラが成功した子供みたいに笑った。


「連れてきてたんだ。シルクは特殊だから、他の妖精と見間違えることはないと思うし」

「つまり、脅すってことか」

「言い方!」


 グレイ伯爵には、商人ディオが第三王子のクラウディオだとばらすと言うことらしい。


 世間的に評価の悪いディオでも王子だ。ひとたびディオが王子のカードを切れば、断ることは難しいのは確かだ。

 この前の誕生会でのシーダの無礼と合わせれば、グレイ伯爵は従うしかないだろう。


「持ってるものは使わなきゃね」


 そう言ってディオはニコリと笑う。


「ま、それなら問題はないか」

「そうだね。行動させないようにしておけば、大丈夫かな」


 ディオの提案にシドたちは了承をして、細かいとことは、城に帰ってからアルフレッドたちに相談することに決まった。



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