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17.5 シーダのお眼鏡

シーダサイドの話です。


 邪魔な家族のいない、家族水入らずはどれほど幸せなことだろうか。


 義務だけで一緒に過ごしてきた相手も、半分血の繋がった子供も、グレイ伯爵には要らないなかった。


 ただ、自分が落ちぶれたくないから置いているが本当は邪魔で仕方がない。

 かといって、下手に追い出せば妖精が何をするかわからないので捨てることも出来ないのだ。


 ほぼ誰にも見えない妖精が腹立たしいが、見えるからこそこうして落ちぶれずにいられるのだから、なんとも言えないものだ。


 愛した女と、愛した女との間にできた娘はとにかく愛おしく、二人とだけ過ごせる時間はフラヴィオにとってどれほど幸せな時間だろう。


 けれど、最近困ったこともある。


「それでね、ママ。すっごくカッコよかったのダニエルって、また会いたいくらい素敵だったのよ」

「そう、家柄は?」


 恋する乙女のように母であるベアトリーチェにシーダは語る。


 スパーク侯爵家の誕生会へ行ってから、シーダはずっとこんな感じで公爵家の令息であるダニエルのことをずっと話している。


 シーダのお眼鏡に叶う令息は珍しく、それだけで婚約を決めてしまいたいとフラヴィオは思うほどだ。

 幸いにも古くから続く伯爵家は、王家との結びつきが強いため不可能な話ではない。


 が、問題があった。

 シーダは貴族の血が流れた子供だと認められておらず、おそらく認められることもないだろうし、貴族としての常識はないに等しいのだ。


 例えシーダをカトリーヌと偽ったとしても、この常識知らずの娘では十中八九断られるのは目に見えているし、家の品位を疑われかねない。


 もっとも、グレイ伯爵にとって不要な娘カトリーヌであれば、この話も現実可能、すぐにでもまとまった話かもしれないが。


「えっと、パパは公爵家っていってわ」

「いいじゃない。結婚できれば今よりももっと贅沢な暮らしができるわよ」

「そうなの、パパ」


 シーダが嬉しそうな顔をしてグレイ伯爵に同意を求めると、グレイ伯爵は難しい顔をして口を開いた。


「パパはやめなさい。お父さまと呼びなさい」

「パパ?」


 予想外の言葉に戸惑うシーダは涙に涙を浮かべてグレイ伯爵をみる。

 強い口調ではないが、これほどの拒絶は初めてだ。


「お前の願いは叶えたいが、貴族らしく振舞わねば誰も近寄ってはこなくなる」

「あら、シーダの魅力があれば必要ないでしょう。ここまで愛らしいのだから」


 ベアトリーチェが自慢げな笑みをこぼすが、グレイ伯爵は首を横に振る。


「この子はクラウディオ王子とダニエル様に無礼な振る舞いをしたんだ。貴族としての正しいマナーを教えていかなければ」

「でも、何も言われなかったじゃない」


 何も言われなかったのだから平気だとシーダは言うが、ダニエルはおそらく引いていたのは確かだ。感情をしっかり隠しきれるほどまだ大人ではないようだ。


 いっそ、あの場で何かを言われた方が楽だった。

 クラウディオ王子はシーダに合わせるように話をしていたが、終始ニコニコとしていて感情が読めなかったからこそ恐ろしい。


「見定められていたんだ。この家と付き合いたくないと思われてしまえばシーダ、ダニエル様にお会いすることもできなくなるぞ」

「いやよ!ダニエルと結婚するって決めたんだから」


 大声をだすシーダはそんなの認められないわと目つきを鋭くする。


「それならまず、ダニエル様と呼びなさい」

「どうしてよ。同じ歳くらいでしょ」

「自分よりも格上の家だからだ」


 疲れた顔をしたグレイ伯爵は、教育係を雇うからしっかりと学びなさいとシーダに言う。


 シーダは納得がいかない顔をしていたが、ベアトリーチェが爪の先を見つめながら言葉を発する。


「あら、あのカトリーヌに出来ることよ。シーダが出来ないわけないじゃない」

「そうよね。あれに出来るのだから簡単なことのはずだわ」


 やる気を出したシーダに安堵をしたグレイ伯爵は大きく息を吐いた。

 一度もシーダを甘やかしたつもりはないが、どうしてシーダは横暴と呼ばれる貴族のようなのだと。

フラヴィオも貴族としてのマナーはあるんですよね。

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