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17 気ままな日

お読みくださりありがとうございます。


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 ベアトリーチェたちが王都に行ってからの日課も今日で終わり、母への手がかりは一切見つからなかった。


 落胆しながらカトリーは朝食を食べるために庭師の小屋に向かった。


「どこにもなかったわけか」

「本棚も机の引き出しも、全部できる限り探してみたけどなかったわ」


 そう言ってカトリーはフォークで刺した野菜を口に運ぶ。


「どこにいるんだろうな」

「うん」


 新聞を読んでいるトムは、何も言わずカトリーとディランの会話を聞いているが悩ましい表情をしていた。


 この二年間、トムも何もしなかったわけではないが、カトリーの母リサへの手がかりどころか解雇されて散り散りになった他の使用人たちの居場所すらつかめていない。


 流石に一人くらい居場所が分かってもいいのだが、どうにもおかしい。

 カトリーのことを心から慕っている彼らが、カトリーやリサの安否を気にしない訳がなく手紙が届いてもいいはずなのだ。


 言っても不安にさせるだけなので、トムはカトリーにもディランにも教えていない。


 トムは今はできる手を探しながら、唯一解雇されなかった使用人としてカトリーの逃げ場として尽力している。


 新聞を畳んだトムはカトリーたちに安心を与えるような表情をして決して不安を与えない。


「社交シーズンが始まればこういった機会はまたあるでしょう。ちょっとずつ探していきましょう、お嬢様」

「そうね。ありがとう、トム」


 それでも自由な日な今日までだと、今日は使用人の仕事はせずカトリーは羽を伸ばすことにする。


 庭を時間をかけてゆっくりと見て回り、この庭にどんな花が似合いか考える。


 今度、商人が来たら花の種を持ってきてくれるはずだ。

 二人への贈り物としては、イマイチかも知れないがカトリーが思いつけたのはそれくらいだった。


 仕事道具になってしまうが、ディランはともかくとして、トムの場合はそれ以外だと恐縮というか大変なことになりそうなので、改めてそれでいいとカトリーは思う。


 それにしても、ベアトリーチェとシーダに変えられずに済んでいるこの庭は居心地が良い。

 昔からここは空気が澄んでいて、ここに足を運ぶと不思議と元気になれる気がするのだ。


 昼はディランが用意してくれたサンドイッチを東屋で食べて、午後はトムとディランの仕事ぶりを見ながら、庭の植物についての説明を聞く。


 トムの説明は一つ一つが長くなってしまうので、ディランが途中で止めに入るの繰り返しで話を聞いていく。


 同じ植物でも性格?が違うようでトムはそれを見極めて世話をしているらしく、それだけでトムがいかにこの庭を大切にしてくれているかがわかる。


 今までカトリーは気づかなかったのだが庭の一部ではひっそりと野菜が育てられていて、ベアトリーチェたちが来る前まではよく屋敷の料理人がそれを使って、カトリーたちの食事に出していたようだ。


「これは奥様の発案で、旦那様は否定的でしたがお嬢様のお祖父様たちには好評でしたよ」

「ここのは特別に美味いって、よく褒めてくれるんだよ」


 伯爵家のこの庭は、他の土地と比べると植物の発育が良いらしく、ここで育ったものは花にしても野菜にしても出来が良いとトムが言う。


「すごいことね」

「そんな場所を使えるのは庭師冥利に尽きるよな。相応の実力も必要だけどさ」


 葉の様子を確かめながらディランが言う。

 その姿はトムと同じで楽しそうだ。


 カトリーは少しだけ野菜の収穫を手伝い、一度家に戻って図書室から本を持って、庭師の小屋に戻り、夕飯ができるまでの時間を本を読んで過ごす。


 読んでいるのは貴族の立ち居振る舞いが書かれたもので、ベアトリーチェが来てから誰にも教わることがなくなったので復習ということらしい。


 同じ部屋では収穫したばかりの野菜をディランが夕飯用に調理をしている。トムは細い作業を片付けているのでまだ戻ってきていない。


 料理が全て完成した頃、トムが小屋に戻ってきて夕飯となり、カトリーは就寝時間までトムとディランと過ごす。


 短い距離で同じ敷地内とはいえ外は暗いので、トムがカトリーを屋敷まで送り、カトリーは自分の部屋まで帰る。


 明日にはフラヴィオたちが家に帰ってくるとカトリーは深呼吸をすると気合を入れ直した。

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