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15 妖精たちについて

 憎いグレイ伯爵もベアトリーチェもシーダもいない日々は心が楽だった。

 

 グレイ伯爵は王都で誕生パーティーがあると、ベアトリーチェとシーダを連れて王都の家に行ったので、カトリーは気ままな日々を過ごしていた。


 使用人たちが何かしら言ってくるが、カトリーのことを薄々気づいている彼らは自分たちの仕事をカトリーに押し付けることは出来ても暴力は振るってこない。


 彼らはベアトリーチェと違って小心者なのだ。

 だから、聞こえないふりをしておけば問題はない。


 ベアトリーチェたちも居ないことで、家の使用人たちの人数も減っていて、カトリーはいつもよりも自由に家の中を歩くことが出来た。


 まだ朝早い時間に起きて活動を開始したカトリーは、グレイ伯爵の部屋に忍びこむ。


 母の居場所を探すためだ。

 滅多に入ったことのないこの部屋はどこに何があるのが全くわからないが、時間が限られているので迷っている時間はない。


 カトリーは本棚の資料を取ると、ざっと目を通していくが、関係のないものばかりが書かれている。


 次の資料を手に取ろうとして外の明るさに時計を確認すると、そろそろ使用人たちが動きだす時間で、カトリーはため息をついて部屋を出て、トムとディランの元に向かった。


 カトリーが庭師の小屋に着く頃にはすでに朝食が出来上がっていて机に並べられていて、それぞれ自分たちの席に着く。


「遅かったな」

「うん。探し物があったから」

「そうか、でも無理はするなよ」


 頷いたカトリーに、トムとディランは心配そうな顔をする。

 素直な時ほど何か無理だったり無茶をカトリーはすると知っているからだ。


「でもこれは今しか出来ないことだから」

「お嬢様、十分お気をつけて」


 止めることが出来ないので、気をつけるよう声だけはしっかりかけておく。

 ディランがなにかを思い出したようで、カトリーに伝える。


「そうだ、この前図書館で調べてきた」

「何か分かった?」


 外に出られないカトリーに代わり、ディランは図書館まで行き妖精について調べていたのだ。


 ディランから話を聞いていたトムは、疑うことはせずにすぐに信じた。

 そして、自分の手伝いいいからしばらく調べに行くといいと図書館に行く許可を出した。


「パーチメントって人が書いた二冊しかなかった

「少ないのね」


 ディランは借りてきていた二冊の本をカトリーに渡す。


 どちらもそこまでの厚みのあるものではないが、本を開くとぎっしりと文字が書かれていて、目が痛くなりそうなほどだ。


「あいつらもいないし、ゆっくり読めばいいよ」

「そうするわ」


 朝食を食べ終えたトムとディランが庭に行き、カトリーは家に戻らず庭師の小屋に留まり本をめくる。


 12歳のカトリーには難しい言葉が多く、意味は余り理解できないがそれでも分かるところから意味を考えて読み進めていく。


 妖精とは不思議な力を持っている存在で、その存在を感じ取れる人は稀で、おぼろげに視える者、声だけが聞こえる者、ハッキリと姿まで視える者と妖精の存在がわかる人でも見えかたは様々らしい。


 妖精は気まぐれではあるが、好かれる人間と嫌われる人間は存在していて、人間の性格が途中で変わろうと妖精の好き嫌いは変わらなかったという結果があるため、おそらく魂など生まれ持った変わらないものが基準だと思われる。


 そして、妖精たちは生命力溢れる植物や動物たちを寝床に使うこと。


 カトリーが分かったのはそれくらいだ。


 夕方にトムとディランが戻ってくると、夕飯を食べながら本の内容について会話をする。


「色々とわかると思ったけど難しいわね」

「そうだな。一番知りたいことが分からない」


 ディランとカトリーが同時にため息をついて、2人の会話を聞いていたトムが口を開く。


「お嬢様のいう商人の方が詳しく知っていそうですね。宝石のことも彼らから聞いたのですよね」

「ええ、説明をしたら頂いた髪飾りは妖精にまつわるものだっていいながら」


 カトリーは頷き、その時のことをトムに伝え、ディランが難しい顔をする。


「一度俺たちも会って話ができればいいんだけど」

「それは私も思っているが、旦那様だとそれなりの理由が必要だな」


 カトリーの母リサがいたなら、商人と会って話すことも容易いことで、わざわざ伝えなくてもあなたたちも見せてもらいなさいとリサから言われたことだろう。


 しかし、グレイ伯爵に言えば商人に会うことは可能だったかも知れないが、ベアトリーチェたちがいる今はおそらく、それなりの理由がなければ難しい。


 ただでさえベアトリーチェはカトリーと共にずっとここにいる庭師を毛嫌いしているのだから。


「商人さんは大抵のものなら用意できるって言っていたから――」

「それならどうにかなりそうだな」

「珍しいものを理由に交渉してみましょう」


 カトリーの言葉に方針が決まる。

 手に入りにくく、自分の目で見てから判断した方がいいものならきっと商人と会うことも可能だろうと作戦会議が始まった。





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