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5話目

 俺は反射的にビシッと姿勢を整えて身構えた。


「私、引き寄せの法則がー……とかいう狂信者は苦手って言ったよね?嫌いなのよ、何でもかんでも引き寄せの法則に結びつけて、ただの自己中で自己満な考えだと思うの!自分に甘いんじゃないの?私との出会いも引き寄せの法則とか言ってるけど私からすれば勝手に言われて勝手に付き合う流れにしてるじゃない!私の意思は尊重できないの?言ってる意味分かる?」


「ぜんっぜん言ってる意味が分かりません!」


 俺からすれば引き寄せの法則は絶対だ。それを否定されるのは癪に触る


「ふざけてないで聞いて!今日は楽しかった。けどずっと引き寄せの法則を会話の中に入れてくるのは嫌でしょうがなかった!」

「嫌な思いをさせてしまっていたのであれば謝る。ごめん。でもな、この引き寄せには運命を感じている。法則通りに進んでいくこの出会いに気分が浮かれ過ぎて自己中心的に会話していたのかもしれない。」


 エイミーの表情は変わらぬままだ。ただ、確かに俺が気付かない内に振り回していたのは伝わった。エイミーの気持ち。俺の、引き寄せの法則を除いての気持ち。俺は……エイミーの事が……。


 気付けば日は沈み辺り街灯が点きはじめた。それと同時に俺の何かに火が点いた。


「引き寄せの法則で俺が思い描いたのは最終的には付き合うという流れだけだ。だだその終着点に至るまでは俺の意思で動かないといけない。」

「本当のあなたが分からない……」


「エイミーと付き合える為に俺はなんだってする。俺の意思で! 本当の自分自身の行動で!」

「初対面で普通そんなこと言うの!? 変態ね!」


 俺の真面目な瞳にやられたかな?エイミーの強ばった表情が少し緩んだ。


「とりあえず今日はもう暗い。このままじゃ夜が明ける。」

「夜が明けるとどうなるの?」

「知らんのか?」


 あいにく俺は葉巻を持ち合わせていないが吸ったような仕草を見せつけ息を吐きながらゆっくりと


「……日が登る。」


 決まったー!!!


「 「夜道は女の子1人じゃ危険だから」とか言えないの?カッコつけるのはいいから送ってってよね!」

「はい、帰り道はどちらでしょうか」


 圧倒的空振りッッッ!!!まぁ少しでも一緒にいれる時間が延びたのラッキーだ。エイミーの帰り道を指す方向は奇跡的にも俺と同じだった。このまま家の玄関までチェックさせてもらうぜ!


「エイミーさん、夜道は危険でございます。部屋の中にも危険が潜んでいる可能性があるのでそこまでご一緒させて頂きます。」

「途中まで良いですので少し距離を空けてくださる?」

「それは出来ません。そこの電柱の影とか曲がり角とか看板の裏とか、いつどこでお嬢様が襲われるか分かりませんからね。」

「ッッッせい!!!」


ードスッッッー


 あちゃーしつこ過ぎたかな?ミゾオチに正拳喰らっちまったぜ。こりゃ何本か逝っちまったなへへへ……


「それにしてもゴホッ……帰り道ほとんどガハッ……同じ……だネ……。」

「それ本当に言ってるの?家近くとか嫌なんだけど!」

「さて、それはどうかな?俺はあそこの寮に住んでるよ」


 そう言って俺が指差す方向をエイミーが目を向けると


「えぇぇぇ……本当に近くだったらどうしよう……」

「いいじゃないか!俺が近くにいればお高いホームセキュリティに頼らなくて済むぜ?」


 俺は中途半端に鍛え上げた上腕二頭筋をチラ見せしながら言った。この筋肉から湧き出るフェロモンで俺にトキめいてみな!


「脂肪で太いだけじゃないの?」

「んなッッッ!?」

「それよりもここからは大丈夫だから。ボディーガードありがと」

「お安い御用ですお姫様。では私はこれで。」


 引きも肝心なのは分かっているんだよね俺様は!ここでサラッと帰るのがダンディでスマートでクールでスウィートなのさ!


 本当は家まで把握したかったけどストーカー紛いな行動をしてしまったら法則が乱れちゃうからね、ただこの辺俺の家の近くなんだよなぁ……奇跡。奇跡だよこれ! 奇跡通り過ぎてやっぱ運命だよこれ!


「ちょっとどこまで付いてくんの?」

「冗談抜きでこの辺なんだよ俺ん家」


 ここら辺一帯は俺の通う大学が全面バックアップしているテラスハウス街。1人暮らしをしてみたかったからね。


「家の色は何色かしら?」

「クリーム!」

「二階建てかしら?」

「イエス!」

「お洒落な小さなバルコニー付きかしら?」

「そうそう!」

「……ちっ!」


 エイミーは走り出した。全速力で。


「やばいよ!夜道に女の子が1人で全力ダッシュしたら!不審に思われるよ!」

「不審者はあなたよ!本気で逃げさせてもらうわ!」


 俺は負けず嫌いだ。しかも足の速さには自信がある。俺もエイミーを抜かす勢いで走り出した。


「お願いだから着いてこないでッッッ!」

「家に帰るまで君の安全を守る!俺は俺の責務を全うするッッッ!」


 ぬ……なかなかエイミー速いじゃあないか。でも僕も負けてられないよ?


「あなたに家を知られたく……ないッッッ!」

「そんな遅さじゃカメにだって抜かれるぜ?」

「お願いだからッッッ……どっか行ってッッッ!」

「俺の家に近付いたら真っ直ぐその方向へ向かうさぁ!約束するッッッ!」


 ……ちぃ!俺の家がもう目の前に!仕方ないが約束は守ろう。


「じゃーなーエイミー!気を付けて帰りなよ!」

「ハァ……ハァ……」

「(ちぇ!無視ですか)また会おう!」


 去り際はサラッと。振り返らず。漢は背中で語るのさ。俺はサッカー部時代で鍛え上げたハムストロングを存分に発揮して左に急転回した。


 玄関はもうすぐ目の前だ。エイミーの家が……じゃなくてエイミーを見たい。でもここでもしエイミーの姿を見てしまったら法則が乱れそうな気がする。良いことも悪いことも引き寄せしまうからな。このままが最善なんだ。


 俺は全速力で玄関の開け全速力で扉を閉めた。


ードンッッッー

ードンッッッー


(ん?隣人さんも慌てて帰ったのかな?ったく扉は静かに閉めるもんだぜ?一目拝んでやらぁ!)


 俺は興味津々に扉を開けてその音が鳴った方へ目を向けると……






「お向かいさんかよ!?」

「お向かいさんかよ!?」


 参ったなぁ!俺の【玄関までチェックする】の引き寄せの法則が発動しちゃったぜ!

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