2話目
(しかしあの娘……強いな……)
幸い怪我を負うことも無く多少の痛みは感じるがそれよりも嬉しい気持ちが勝っていた。
しかもですよ、同じ学校の制服だったんすよ! 金髪ツインテールと同時に制服まであのボヤけた世界から目に焼き付けていたのですよ!
これも引き寄せの法則。相変わらず恐ろしい力だぜ……。
「学校でバッタリ会う。そして付き合う。」
静かに引き寄せの法則を唱え学校へ向かった。
俺がこれから通う学校は大学といえど一風変わったシステムであり、小中高と同じ授業形式で行われる。大学独自の制服を採用し気分は高校の延長戦。小中高モテ全盛期だった俺からすれば最高の学舎ってなこった!
「グフフ…俺に引き寄せられた子はどこかなぁー?」
口に出さないと引き寄せの効果は発揮されないことを長年の経験から得ていた俺は誰にも聞こえないような場所にわざわざ移動して言った。
とりあえず今日は入学式。一ヶ所に人は集まるからその時に確認すれば良いではないか。そうと決まれば体育館に急ごう!
到着して早々と絶望した。
金髪多っ! そりゃそうか、大学デビューで髪色変える事なんてありえる話。でもな、俺には分かるんだよ。俺にぶつかってきた運命の子が誰かがな! なぜなら引き寄せの法則によって導かれているのだからな!
そして何よりも俺と目が合えばデレるはず。あれだけの衝撃的な出逢い衝突をすれば一瞬でトクゥン……ってなってるはずだぜ
……。
「いない…だと!? 俺の引き寄せの法則が乱れた…だと!?」
金髪ばかりに意識を集中していたせいでツインテールに全く気を取られていなかったのが見つけれなかった理由だと思う。
(まぁ時間はたっぷりある。どこへ行こうが私からは逃れられんぞ!フハハハハ!)
引き寄せの法則に従えば自然に導かれる俺とあの子。ゆっくりと引き寄せられていこうかね! まずは教室だ。
「えーっと俺の机は……。」
「よー久しぶりだな!ヒロ!覚えてるか?」
(こいつ誰だったっけな?それにしても童貞っぽいな)
「俺だよ!万丈!」
「おーバンチョー!久しぶりだな!」
「その昔のあだ名はやめてくれよな! お前だけだぜバンチョーって呼ぶのは」
「いいじゃねぇか俺とお前の仲だぜ?これからもよろしくな!」
そこには小中で同級生だった万丈ことバンチョーがいた。あだ名の由来は身長は低いもののガタイは良く、天然カールアイパーなその髪型を常にオールバックにしているもんだから俺が冗談で付けたあだ名だ。しかし童貞ぽいな……
「高校での延長をここで楽しもうと思ってさ! ヒロが見てない間に俺だって成長したんだぜ?」
「へー……でも童貞っぽいな」
(やばい! つい心の声が……!)
「おい、なんつった?」
「いや、なんでもねーよ! これからもよろしくな童t......バンチョー!」
「あ…あぁ、よろしくな……」
何だか落ち込ませてしまったかな?それにしてもやっぱり童貞だったか……童貞番長……カッケェー……いや、面白すぎるッッッ
俺はバンチョーに教えられた席に着くと同時に担任が入室してき…タタタタタァ! あれぇ! 金髪ツインテールだとお!?
「Hi!!! みなさんグッドモーニング! これからここの担任になるテネシーよ! 専門教科は英語! 卒業する頃にはみんな下着が星条旗になってるはずだわ! よろしくぅ! Fuuu!」
圧倒的だ……圧倒的USA!!! ボディーもアクションもテンションも!!!興奮が収まらないッッッ! 俺のキカンボウがスゴイヤバイ! ただ俺の引き寄せた女の子じゃない! ただの金髪ツインテールを引き寄せてしまっただけに過ぎない!
「お…おおおぉい! ヒロ! ははは鼻の下が伸びてる…ぜっ!」
(おい! バンチョー! 恥ずかしいなら無理してまで言うなよ!)
あいつ、大学デビューで陰キャから陽キャに成り上がろうとしてるな。いいか、遅咲きほどタチが悪いもんは無いんだぜ! だからいつまでたっても童貞バンチョーなんだよ!
[ガタッ]
机が揺れる音がした。バンチョーが勇気を振り絞って俺に放った発言で教室内に笑い声が響いてる中で。ただ隅の方だけには笑い声はしない。何故か静かだったんだ。だから尚更机の音に気付けたのかもしれない。人間誰でも音が鳴る方へ目を向けるものだ。
あいにく俺は笑い声なぞそこまで耳に入ってこなかった。だから気になった。
その音が鳴る方へ視線を向けたその先には……。
―引き寄せの法則発動―
「ばぁ!!!金髪ツインテールだぁ」