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異世界転移したら自称魔王に取り憑かれていたんですけど  作者: にゃる
第4章 王都到着、そしてーー
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第71話 どうしてこうなった?

一日一回更新は続けたい!


 第2師団の厚意で銀嶺荘まで来た時と同様に馬車で送ってもらう事ができた。

 騎士に礼を言うと、明日も同じ騎士が迎えに来てくれるとの事だった。


「さて、戻って来たはいいが、まだ結構明るいな。 せっかくだし観光にでも行くか?」


 今後どうするかはまだ未定だが、食料などの補充も済ませておいた方がいいしな。


「今日は鍛錬おやすみ?」


 リサは不思議そうな顔で訪ねてくる。


「あー……まぁそうだな、鍛錬場所も探さないとだし今日は部屋で出来るものにしておこう」

「ッ!!」


 リサが小さくガッツポーズをしたのを見逃さない。

 おい、なに喜んでんだ。


 まぁいいさ、精々今のうちに喜んでおけばいい。


「私はパス、先に部屋で休ませてもらうわ」


 ルリはそう言うと返事も聞かずにそそくさと戻っていく。

 ホント自由な奴だ。


 そんな訳でルリを除くメンバーで遅めの昼食と買い出しに繰り出すのだった。


 ♦︎


 あれ? どうしてこうなった?


「ブヒヒ、昨日は世話になったんだな。 今日は逃がさないんだな」


 薄汚い笑みを浮かべる豚――

 ん? オーク? ポークだっけ?

 どっちでもいいけど、細い路地裏で挟まれているこの状況はちょっと面倒くさい……


「ミナトが迷子になるから……」


「えっと……多分、迷子になったのはリサちゃんですよ?」


「ちょっと目を離したらみんなが迷子になってた」


 人聞きが悪い、わたしが迷子になった訳じゃない。


「おい!! なにを訳わかんねぇこと喋ってんだ! 状況分かってんのか! あ!?」


「…………」


 豚の仲間が怒鳴っているけど構ってる場合じゃない。

 出来れば逃げたいけど、それも難しそうだし……


「へへへ、ビビって声も出ねぇか? そうだよな、今日は助けてくれる男もいねぇからなぁ」


「別にお前達にビビってなんかない。 ミナトの方が100倍怖い」


 そう、状況的には囲いを突破して逃げるしか無さそうだけど、ミナトに実戦は禁止されている。

 なので勝手に戦ったら多分後でミナトに怒られる。

 折角今日の鍛錬は厳しくなさそうなのに、怒ったミナトに鍛錬メニューを増やされるのだけは避けたい。

 今のわたしにそれ以外怖い事などない。


「て、テメぇ……舐めてんのか!!」


 先程から怒鳴っていた男が突然飛び掛かってくる。


「あ」


 咄嗟に杖で鳩尾を突いてしまう。


 まずい……やってしまった……


 飛び掛かってきた男は息が出来ないのか地面でのたうち回っている。

 その様子を見てミナトの言葉が反芻される。


『頭の悪い集団に手を出したら、その後はお決まりコースだ』


「あー……」


 ミナトの言う通りだった。


 仲間をやられたら、残った仲間が一斉に襲いかかってくる。

 そしてこういう時は――


「徹底抗戦、降りかかるキノコは払う! だったはず」

「なんでちょっと嬉しそうなんですか! あとキノコじゃなくて火の粉です!」


 正面から襲いかかってくる男2人に先程の男と同じく鳩尾へのカウンター突きで沈める。


「シャドウステッチ!」


 ステラが背後の敵を魔法で足止めしてくれる。


 よし、いまだ。


 素早く正面の集団に飛び込む。

 狙うは集団のボス。


 幸い豚は前に出ている。

 細い路地にあの体格の所為で後ろに控えている仲間は身動きが取りづらい。


「ブヒッ!?」


 狙いはあの分厚い脂肪に守られていない頭――

 でも殺さない様に加減もしなきゃ行けない。


「ふっ!!」


 威力の高い突きではなく、側頭部へ飛び上がると同時に薙ぎ払いを打ち込む。


「ブヒャッ!!」


 お似合いの悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。


「い、いだいぃぃ!!」

「ポークさぁぁん!」


 あれ? 気絶しない?

 結構強めにやったんだけどな。


「よ、よくもやっだんだなぁ!!」


 え? しかも立ち上がった。


「お前ら手を出すな! このチビは俺様がやるんだな!!」


「むぅ……タフ……」


「リサちゃん! こっちは任せてください!」


 背後の敵はステラに任せる。


 なら後はこの豚を倒すだけ。


 ♦︎


「やれやれ、やっぱりまだ状況判断が甘いなぁ」


 屋根の上から路地裏を見下ろし、そう小さな声で呟いた。


 相手の突進に合わせて鳩尾を突いた動きはまぁまぁだったが、あの側頭部への払いはいただけない。


「身長差があるからな、飛び上がっては力が乗り切らんのだろう?」


 クロの指摘通りだ。

 あの場合なら身長差を生かして懐に入り膝辺りを狙うべきだ。

 あれだけの巨体を支える足元への痛撃は即戦闘不能に出来る。

 致命傷を与えないように頭部へ攻撃するより余程簡単だ。


 とは言え、ポーク自らタイマンを宣言したのだ。

 今のリサなら苦戦はしないだろう。

 対人実践のいい訓練になりそうだ。


「はー……リサって強かったんすね……」

「みっちり鍛えたからな、しかも超天才だし」


 普通一ヶ月程度ではどれだけ努力してもああはならない。


 ホントすごい子なのだ。


「ウェインといい勝負ではないか?」


「え? 自分っすか?」


「うーん、まぁまだウェインには敵わないだろうな」


 一度戦ったから分かる。

 ウェインには悪いがポテンシャルではリサに軍配が上がるものの、やはり経験の差は大きい。

 巧さと経験いう点ではウェインが圧倒的に上だ。


「照れるッス」


「ま、ぼさっとしてたらあっという間に抜かされるぞ」


 それほどまでにリサの成長は著しいのだ。

 今後の事はまだハッキリしないが、そうだな……この縁が続くならウェインも鍛えてみるか。


「アニキの笑顔が何故か怖いっす」


「ウェイン、貴様死んだな……」


クロがウェインに向かって手を合わせる。


「え?! なんすか! なんでそんな怖い事言うんすか!?」


「死ぬ訳ないだろ」


 そんなアホなやり取りをしている間に眼下の戦いも終わりが見えてきた。


「ブヒィ……ブヒィ……」


 もはやポークの体力は限界に近い。

 だが気になるのはあれだけボコボコにされて未だに下卑た笑みを浮かべているところだな。


「しつこい」


「ブヒヒ……もっと――」


 ん??


「もっと強く! さぁ! ブヒヒひ!!」


 んん??


「ッ!! キモい!!」


 リサが身震いすると同時に痛烈な突きがポークの下顎に突き刺さった。

 無理もない……アレはキツい……


「あ、アニキ……助けなくていいんすか? いろんな意味で……」


 うん、分かるよ。

 分かるけどもうちょっと様子を見よう。


 これもリサの成長の為だ。

 心を鬼にする。

 断じて俺があの変態に関わりたくない訳じゃない。


 ないったらない。


 ♦︎


「ぎ、ぎもぢいぃんだなぁ!!」


「あぁ……ポークさんの病気が始まっちまった……」


 豚の仲間が口々にそんなような事を言って肩を落とした。

 意味が分からない……


 暴力に対する恐怖はないけど、あの理解できない様子に恐怖が押し寄せてくる。


 どうしたらいいか分からずステラを見る。


「…………」


 ステラが青い顔で固まっていた。


 あ、ダメなやつだコレ――


 仕方ない。

 こうなったらキモくて怖いから、なんとかしてここから逃げ出すしかない。


 そう決心した瞬間――


「おい、俺の仲間になにしてんだお前ら」

「!!」

「ミナトさん!!」


 ヤバい……

 ミナトに見つかった。

 いや、この場合助かったのかな?


「て、テメェは……」


「リサの教育に悪い、全員今すぐ消えるかぶっ飛ばされるか1秒で決めろ」


「「え??」」


 1秒って……ミナトぶっ飛ばす気満々……


 その後はあっという間だった。


 最初こそ威勢のいい事を叫んでいた豚の仲間たちだったが、気がつけば気絶してるか、その場に土下座で降参していた。


「ったく……どこの世界でもこういう連中はワンパターンだな」


「すみませんミナトさん」


 ステラがミナトに駆け寄りペコペコと申し訳なさそうに謝る。


「別にステラが悪いわけじゃないだろ」


 そうだ、悪いのはこのブタたちだ。


「さて……」


 その言葉と同時に振り返り、笑顔を浮かべるミナト――


「ッッッ!!」


 あれ? 変だな?

 なんで身体が震えるんだろう??

 この場合、安心するはず?


 あれ??

 なんかあんなに動いても汗かかなかったのに汗が出てきたよ?


「リサは後でゆっくり話をしようか」


 …………おわった。


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