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異世界転移したら自称魔王に取り憑かれていたんですけど  作者: にゃる
第4章 王都到着、そしてーー
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第65話 王都到着

いきなりですが今日から新章スタートです。

「つ、ついた……」

「生きて帰ってこれたーーー!!」

「うむ」

「御加護に感謝いたします……」


 三者三様もとい四者四様とでも言うべきか、クリス隊の面々は視界の先に映る光景にそれぞれが歓喜していた。


 魔獣の森を出てかれこれ10日――

 俺たちは王都に到着した。


 到着と言ってもまだ視界の先にうっすら見える程度だが、まぁ1時間も歩けばたどり着くだろう。


「大袈裟じゃないか? 魔獣の森以降危険なんかなかっただろ」


 森を出てからここまで特筆するような危険は皆無だった。

 何度かゴブリンとやらに襲われたが、むしろみんなの丁度いい実践相手になってくれた。

 いい旅だったとすら感じていたのだが――


「「「「…………」」」」


 何故か冷たい視線が集中する。


「そう思っておるのはお主だけじゃろうなぁ」

「流石の我も貴様のイカれ具合には戦慄を禁じ得ん」


 クロと爺さんは呆れた視線を俺に向ける。


 ちゃんと加減したはずなんだが……


 ♦︎


「流石に王都って言うだけの事はあるな」


 ビル4、5階くらいの高さもある外壁を見上げる。

 それが広大な王都全体を取り囲んでいると言うのだから驚きだ。


 王都に入る為の門はいくつかあり、商人用の大きめの門は検閲待ちの商人達で長い列を作っている。

 冒険者や旅人など荷物が少ない者は隣の小さな門を使うそうだ。

 そちらも商人用程ではないがそれなりに列を作っている。


 そして俺たちがやってきたのはそのどちらでも無い。


「お疲れ様です!」


 門番?というべきか軽鎧を纏った男が胸の前に右拳を当てる。

 この国の騎士の敬礼のようなものだろう。

 クリスが事情を説明するとあっさりと王都に入る許可を得ることが出来た。

 王都に向かう途中で聞いていた事だが、セレニア王国にはいくつかの騎士団が存在する。

 王城の守護を担う近衛騎士団、国王の命令で国内の秩序を保つ王国騎士団。

 そして、王都や主要な街の治安維持を担う憲兵的な王国兵士団の3つだそうだ。


 近衛が一番偉く、王国兵士団が一番下っ端、だそうだ。


「まぁ我々は第2師団なので、正直あまり偉そうには出来んがな」


 王国騎士団は元々第1、第2などの区別は無かったそうだ。

 だが、数年前にふたつに分けられた。

 第1が貴族、第2が平民だそうだ。

 理由は貴族が平民と同じなど許されないと騒ぎ立てたからだ。


 俺からしたら下らな過ぎて鼻で笑うレベルである。

 ちなみにその話を聞いた時、ホントに鼻で笑った訳だが、そうしたら――


「ミナト殿、王都では貴族に逆らうのだけは控えて下さい」


 と、クリスに釘を刺された。


 ま、俺としても貴族連中とお近づきになどなりたくない。

 触らぬ神になんとやら、だ。


「無駄だと思いますけどね……」

「うん、無駄。 ミナトは絶対貴族と揉める」


 ボガードとリサが諦めたようなため息が聞こえたので、きっちり拳骨をお見舞いしておいた。


 そんな事を思い出していると、王国兵士団のひとりが俺に声をかけてきた。


「貴殿がミナト殿だろうか?」


 俺が頷くと、兵士は伝言を預かっていると言う。

 伝言はウェインからだった。


 俺は兵士に礼を告げ、銀貨を数枚チップとして渡す。

 受け取った騎士は少し驚いて「こんなにいいのか?」と聞いてきたので「伝言を預かった連中で飯でも食ってくれ」と言っておいた。

 チップを受け取った兵士が戻る時に若干浮き足立っていたので多く渡し過ぎたのかも知れないが、まあいいだろう。


 そんなやり取りがありつつ、遂に俺たちは王都へ足を踏み入れたのだった。


 ♦︎


「んじゃ、取次よろしくな」


「ああ、段取りが付き次第宿に知らせに行く」


 クリス達はそう言って城へ向かった。


「しかし、奴らの師団長が手紙の受取人とはな」


 そう、マーリンに依頼された手紙の受取人であるルークという人物は驚いた事にクリス達が所属する第2師団の師団長だったのだ。

 確かに城の人間と言っていたのでおかしな話ではないのだが、奇妙な縁もあったものだ。

 そもそもマーリンもそうハッキリ言ってくれれば良いものを……

 だが、いきなり城を訪ねてあれこれ聞かれる可能性を考えれば、手間が省けたのでむしろ助かったと言えるだろう。


「さて、どうするかな、とりあえずウェインの伝言通り冒険者ギルドに向かうか」


「ミナト、お腹すいた」


 リサがお腹をさすりながら訴えてくる。

 最近のリサはすっかり遠慮が無くなった。

 呼び方も仲間なのだから呼び捨てで良いと言った。

 最初こそ戸惑っていたが、今ではすっかり慣れたようだ。


「宿まで我慢すれば良かろう、全く貴様は口を開けばご飯ご飯と――」

「うるさい」


 また始まったよ……


「っく、この狐娘が最近少々調子に乗りすぎではないか? 我にそのような口を聞いて良いと思って――」

「ならもう二日酔い治してあげない」


 遠慮が無くなったのは全く問題ない。

 むしろ10歳という年齢を考えれば年相応のわがままなど可愛いものだし、心を開いてくれている証とも取れる。

 だが、問題はこれだ。


「ま、またそれか! それとこれは別の話であろう!」

「全然別じゃない、甲斐性なしは少しは自重する事を覚えるべき」


 クロとちょいちょい衝突するのだ。


「か、甲斐性なしだと!?」

「毎朝二日酔い、昼間はミナトかルリに乗ってるだけ、夜はまたお酒お酒、酔っ払いの甲斐性なし。 明日からは二日酔いで苦しめばいい」


 二日酔いを治せるリサにクロは毎朝お世話になっている。

 なので大抵はリサに軍配が上がるのだが、それで終わらない。


「リサちゃん! 何度言えば分かるんですか! そういう乱暴な言葉を使ったらダメです!」


 ステラが腰に手を当て、いかにも怒ってますといった様子でリサを叱る。


「……今日はバカとか言ってない」

「そういう問題じゃありません! 相手を貶すような言葉は女の子が使ってはダメなんです」


 こんな感じでリサはリサでステラに怒られる。

 すっかりリサのお姉さんといった感じだ。


「アンタ達も懲りないわね、毎日毎日下らない。 ちょっとは学習しなさいよ、バカなの?」

「バカ! 余計な事を――」

「そういうおふたりの言葉遣いを真似してるんです! もう少し自覚を持って――」


 そしてルリと俺がステラに叱られる。


 ここのところ毎日こんな感じなのである。


 ♦︎


 王都はスクルドより遥かに広い。

 だが、人口もスクルドとは比べ物にならない程多い。

 その為、王都は居住区域が大半を占めている。


 王都中央の王城、その周囲に貴族街があり、そちらも壁で囲まれており許可なく立ち入る事はできない。

 そこ以外は殆どが居住区になっている為、行く場所は限られている上に、宿屋やギルドなど商業施設は商業地区と呼ばれるエリアに固まっている。


 そんな訳で俺たちはそのエリアを歩いているのだが、思った以上に規模がでかい。

 行く場所など限られてると言ったが多分ゆっくり見て回ったら1日じゃ足りない。

 なんなら外壁から王城まで歩くだけでも数時間はかかる。


「流石王都ですね……目が回りそうです」

「すごい人の数だね」


 今俺たちが歩いている場所は屋台や露天商が固まっている。

 市場なのだろうが、お祭りと言われても納得しそうだ。


 屋台で歩きながら食べられそうな軽食をつまみつつ、あちこち冷やかしつつギルドに向かう。


 スクルドを出て約3週間振りの街――

 それも全員が王都は初めてだと言うのだから多少の興奮もある。

 結局、寄り道し過ぎて1時間もあれば着いた筈のギルドに3時間かかってしまった。

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