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異世界転移したら自称魔王に取り憑かれていたんですけど  作者: にゃる
第3章 魔獣の森と騎士団、そして神獣登場
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第55話 ただの準備運動

今日は連続で何話か更新予定です!

「この世界でスキルと言えば大きく3つに分かれています」


 クレメンはそう前置いてからそれぞれの特徴を説明してくれた。


【天恵スキル】文字通り天から与えられたかの如く使えるようになるスキルの総称。

 生まれた時から使えるものや、ある日突然使えるようになったりするらしい。


【習得スキル】本人の才能や努力で身につけるスキルの総称。

 要は自力で得た能力の事。


付与(エンチャント)スキル】物に付与されたスキルの総称。

 身につけたり、持っていれば使えるようになるスキル。


「なるほど、俺で言えば武術は習得スキルで、アイテムボックスが天恵スキル、身体強化が付与スキルって事か」


「そ、そうですね。 と、ところであれはあのままで良いのですか?」


「ん? ああ、まだまだだな」


「そ、そうですか? 既に日も傾き始めておりますよ?」


 確かにそれもそうだな。

 暗くなってしまうと色々都合が悪くなる事もあるか。


「おーい、そろそろいいぞ」


「はい」


 俺の合図に返事を返したのはリサだ。

 後の3人は返事がない。


「とりあえずリサは型の反復だ、クリス達は――ってどうした?」


「「…………」」


 3人とも地面に座り込んでいる。

 なんならエドアルドは地面にうつ伏せで突っ伏している。


「おいおい、だらしないぞ? ちょっと走り込みしたくらいでバテるなよ」


「ちょ、ちょっとですか……」


 声を出す事も出来ない3人の代わりにクレメンがそう呟いた。


「ほんの1時間、ちょっと走ったくらいでバテてたら戦場じゃ生きていけないんじゃないか?」


「あの速度で走るのがちょっとと言うの無理があるよ!」


 ボガードが勢いよく起き上がるとそう叫んだ。


「そんな事言ってるからあんな犬っころから逃げられないんだよ。 まぁとりあえずあんたらの体力の無さは理解出来たから次行くぞ」


「え? もう? 少しくらい休憩しても……」

「ダメだ、はいじゃあ3人とも自分の武器を構えろ」


 こんな事でいちいち休憩していたら時間の無駄だ。


 ヨロヨロと立ち上がりクリス達が自分の獲物を手にした。


 未だにクリスとエドアルド無言だが、その目から気力は消えていない。

 やる気があるのはいい事だ。


「じゃあとりあえず全力で素振り開始」


 手を叩き3人に素振りを開始させる。


 クリスはいわゆる長剣、片手でもあつかえるスタンダードな

 武器。


 エドアルドは基本大楯による盾役だが、一応片手斧も使う。


 ボガードはメインが弓による遠距離攻撃だが、近接戦闘時には短剣を使うようだ。


 それぞれの素振りをしっかり観察する。

 そこから俺に改善出来そうなところを探していくのだが――


「うーん……とりあえず素振りは終わっていいぞ」


 王国の騎士団と言うだけあって一応基礎は出来ているのだが、全体的に無駄が多い。


 これならリサと一緒に鍛錬するのが一番良さそうだ。


「よし、じゃあ全員少し休憩だな」


「よ、よかった……」


 そう言ってボガードはその場に倒れ込んだ。

 クリスとエドアルドも武器をしまうとその場に腰を下ろす。

 黙々と型をこなすリサも手を止め、3人の横に座り込んだ。


「……だから逃げてって言ったのに」


 疲れ切った3人を見てリサが独り言のように呟いた。


「ははは……だが、音を上げるつもりはないぞ」


 少し落ち着いたのかようやくクリスが口を開いた。


 が、それを聞いたリサは哀れみのこもった表情を浮かべつつ首を横に振り、迷いつつもクリス達に告げる――


「こんなのわたしも毎日やってるただの準備運動……ここからが本番……」


「……準備、運動?」


 そういう事だ。

 さて、楽しい楽しい鍛錬の始まりだ。


 ♦︎


「隊長……僕らが今までやってきた事ってなんだったんですかね……」


「……無駄ではなかったと思いたいな」


「……」


 完全に日が落ちた頃、俺は一旦鍛錬を終えた。

 今はクマ吉も含め、全員で夕食を食べている。

 クマ吉、完全に餌付けされてんじゃないか?

 まぁ別に大人しくしている分には構わないか……


「おかわり!」


 疲労困憊のクリス達とは対照的にリサはまだまだ余裕があるようだ。

 既に2杯のシチューを平らげているはずなのだが……


「おいリサ、食べすぎるなよ? この後の鍛錬でお腹痛くなるぞ」


「……これで最後にする」


 口ではそう言っているが表情は不満が隠せていない。

 むしろ頬を膨らませて不満を全面に押し出しているまである。


「え、えーっと……ミナトさん? 今この後の鍛錬って言いました? 聞き間違えですよね?!」


「聞き間違えじゃないぞ」


 その言葉にボガードは余命宣告でも受けたかの如き絶望感を漂わせる。


「リサにも言ってる事だが、辛いなら辞めたっていいんだぞ? 強制する理由はないからな」


「や、辞めるとは言ってませんよ……」


 口ではそう言ってるものの、迷ってるなこりゃ。


「ミナト殿、これでも我々とて騎士の端くれだ。 訓練が厳しいくらいで逃げ出すつもりはない」


 クリスの堂々とした宣言に逃げ道を潰されたボガードが何やらゴニョゴニョと呟いているが、まぁ聞こえない事にしておいてやろう。


 ♦︎


 クリス達とリサの鍛錬は極めて単純な内容だ。

 ひたすらに体力と体幹を鍛え上げる。

 その上で体捌きと『力』の使い方を教えていくつもりだ。

 問題はクリス達にはあまり時間を掛けられない事だろう。


 結果、鍛錬の内容が厳しいものになるは仕方ない。


 クリス達が死にそうな表情を浮かべているのも仕方ない事なんだ。


「……ミナト殿、アレは本当に問題無いのですか?」


「ああ、大丈夫だ。 死にはしないから」


 鍛錬を横目に俺はクレメンにこの世界の魔法について学んでいる。


 学ぶと言っても基礎知識だけで魔法そのものを学んでいる訳ではない。

 多分爺さんに聞いても同じ内容が得られるだろうが、爺さんは爺さんでステラに魔法を教える事にしたらしい。


 今もリサ達とは別で魔法を学んでいるようだ。


 なのでクレメンに教わっているという訳だ。


 お陰でこの世界の魔法の基礎知識を得る事ができた。


「――以上がこの世界の魔法の概要ですが、なにか不明な事などありませんか?」


「系統魔法と無系統魔法か、大丈夫だ大体理解出来たな」


 この世界の魔法はまず大まかに2種類――


 俺の光属性やステラの闇属性、リサの聖属性など、いわゆる属性と付く魔法が系統魔法。


 そして適正が無くても魔法の素養さえあれば扱える魔法が無系統魔法と言うそうだ。


「系統魔法は大きく2つ、陽系統と陰系統でどちらにも属さないのが無系統魔法って事だ」


「その通りです。 陽系統は最上位属性の光属性を頂点にその下に陽系統の上位属性である聖属性、更にその下が火属性と土属性ですね」


「逆に陰系統は闇属性から魔属性で水と風だな」


「はい」


「んで、上位属性に適正がある奴はその下位属性にも適正があるのが普通だが、逆に最上位属性は扱えない。 加えて陽系統に適正があると陰系統の魔法は扱えない、逆もまた然りって事だな」


「素晴らしい! ミナト様は魔法のない世界からいらっしゃったと言う話でしたが、よく短時間で理解されましたな!」


 まぁ本物の魔法は無いけど、ゲームや漫画では当たり前に存在するから理解するのは難しくない。


「まぁ知識としては理解出来たが、実際に目にして理解出来るかはまだ未知数だな。 特に系統魔法と無系統魔法の区別には自信ないぞ」


 以前リサが使った『トーチ』と言う魔法は無系統魔法らしい。

 てっきり火属性魔法だと思った。


「そのあたりは経験と時間が必要でしょうな。 魔術を研究

 している私でも分からない魔法の方が多いくらいですよ。 先程タナトス様が使った魔法も闇属性なのか無系統魔法なのか分かりかねましたからね」


「そういうもんか、ところで魔術と魔法って違うのか?」


 なんとなく疑問に思った事を尋ねてみる。


「魔術は魔法を含む多種多様な技術や知識の事ですね。 例えば錬金術や魔導具、スキルの時にお話した『付与』も魔術に当たります」


「なるほど……違いがあるんだな」


 覚えることが多くて参るなホント……


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